ここ何年か、園芸店や植物イベント、SNSなどで「アロエ」をよくみるようになったと思いませんか? しかも、よく知る「アロエ」とはちょっと様子が違う。赤やオレンジ、ピンクやブラック?! といった多彩な色。どこに葉っぱがあるのかわからないくらいイボイボゴツゴツのフォルム。
いったいアロエの世界で何が起きているのでしょうか。
今回はそんな「イマドキのアロエ」がわかるお勉強会。アロエをマスターしてぜひお気に入りの1株に出会っていただければ幸いです。
イマドキのアロエと言えば「ハイブリッド」。なんといっても「アロエハイブリッド」なんて商品名で流通しているくらいです。そもそもアロエのハイブリッドとは何か? 実は遡ると1980年頃から始まっていて、その間に大きく3つの「ウェーブ」があったようです。
近年のアロエブームを牽引しているのは間違いなく「第3ウェーブ」での「多様性の爆発」です。
それまでのアロエのハイブリッドと言うとフォルムはシュッとしてて優等生のようなイメージ。それが一転、葉っぱ全体が刺のようなもので覆われたモンスターのようなビジュアルで一気にダークサイドに落ちたのが「第3ウェーブ」。なにが彼らアロエを闇落ちさせたのか。
そんな「悪魔の血」のひとつが、マダガスカル原産の「アロエ・カスティロニアエ(Aloe castilloniae)」。
葉の縁だけでなく葉面にも大きな結節を持ち、それらが鮮烈な赤色に染まるといういままでのアロエにはなかった特徴を持つ、個性的な小型アロエです。
こうした新しい特徴が、他のアロエに「葉面いっぱいに結節」や「赤黒く染まった鋸歯」、「コンパクトなまま複雑にうねりながら積み上がる」といった新しい特徴を発生させたのはまさに「闇落ち」そのもの。 小さな世界に異様なほどの情報量が詰め込まれたアロエがでてくるようになりました。
もちろん、現在のハイブリッドの多様性はカスティロニアエひとつで説明することはできませんが、「原種が持つ個性を組み合わせると、アロエはこんな姿にもなる」というハイブリッドの面白さを象徴する存在です。
#育種家さんがよく言うのは「あるものを組み合わせて作れるものは限られている。新しい表現には新しい材料が要る。けどそれは自然(長大な時間による進化)でしか創れない」と……。
この多様なアロエを日本で見かけるようになったのって結構最近な記憶じゃないですか? 実はその感覚はあっていて、日本に本格的に紹介されたのは2023年。「THE CORE」さんがイベントやYouTubeで海外の優れたハイブリッドや新しいタイプのアロエを積極的に紹介したことで、それまで一部の愛好家が追いかけていた世界が、より広い多肉植物ファンの目にも触れるようになりました。
そして2026年現在、当時は入手困難で高かった人気ナーセリーのハイブリッドやネームド品種も比較的お手ごろ価格で入手できるほどにこなれてきました。あこがれ、遠くから見ているしかなかった世界が、手に届くところに。乗っかるなら今しかありません!
そもそも小型のアロエがベースになっていることが多く、ほとんどのハイブリッドアロエは大きくても10~15cmに収まります。何十株になっても棚にすっぽり収まるコンパクトさ。
カラーの多様性が圧倒的。よく引き合いに出される「流行の男前植物たち」は基本的に緑一色だったのに対し、アロエハイブリッドはその色数の違いで目を楽しませてくれます。
究極的な楽しみとしては「自分だけのハイブリッド」が作れること。作りやすいこと。コンパクトでたくさんの株を保有でき、毎年同じ時期に花を咲かせるので交配しやすく、実生もカンタン。実際にヤフオクやメルカリでも、個人の方が作った多くの「オリジナルハイブリッド」がリリースされています。
誤解を恐れずに言うと、実は市場で見かける「アロエハイブリッド」の多くはここタイのTCT Nursery(Tepchai Tippayachit さんの農園)がリリースしています。テンプラ、ラヴァ、グロリアスドラゴンといったネームドは、その膨大なハイブリッドの中から育種家自身が選抜したコという位置づけ。
日本でもアロエのハイブリッドをリリースしている生産者さん、趣味家さんは多くいらっしゃいますがまっさきに名が上がるのがロウルサンコさん。実はその活動の歴史は近年のブームよりもずっと古く、インスタを遡ると2020年ごろから「アロエが面白い!」と新品種を紹介したりハイブリッドを発表したりしています。オリジナルっぽい品種もざっくり数えても20種以上発表されているのですが、いまだにそのほとんどは市場流通しておらず、私めのような素人にはインスタを見てため息を付くことしか許されていない世界のようです……。
アメリカも熱い。ハンティントン植物園のカレン ジマーマン Karen Zimmerman さんが発表しているアロエも市場で高い評価を得ています。アメリカ産だからなのか植物園としてのこだわりなのかはわかりませんが、色やビジュアルのインパクトよりもフォルムの個性やバラエティを追求している雰囲気で、どちらかというと第2ウェーブの正統な後継者たちといった印象。
新しいトレンドが生まれると、それに呼応するようにヴィンテージの魅力が再発見される。アロエの世界も同じです。先輩たちが愛したクラシックなハイブリッドには、今の時代にこそ新しく映る、洗練された造形美。当時はあまり注目を集められていなかった品種も掘り起こされてきているのが新鮮で面白いところでもあります。
これまでに紹介した「ネームド」は、育種家さんがセレクトしたいわば“道しるべ”。本当に面白いのは「ノーネーム」の世界です。育種家さんがつくった膨大な交配株や趣味家さんがつくるオリジナルハイブリッドのすべてに名前をつけるのが不可能なだけで、ノーネームの中にも驚くほどカッコいい個体が潜んでいます。しかも世界に2つとないオンリーワン。名前に縛られず、目の前の姿と直感で選ぶ「一期一会」の出会いこそ、ノーネームハイブリッドの醍醐味です。
道しるべを頼りに似たコを探すのも良し、イベントで並んでいるものから自分の好きな色やカタチで選ぶも良し、あらゆるネームドを超える次世代の弩級アロエを探すも良し、といったところです。
新しいアロエに挑戦しよう!とショップやイベントに足を運ぶ前に2つだけ覚えておいてください。
写真は特に、だけでなく実物でも、その発色は一時的なものとお考えください。ほとんどのアロエは育成機には明るいグリーンに、寒さや日照、肥料などのストレスで強く色づきます。タイ産のハイブリッドは年中温かいタイでも色が出やすいものが選抜される傾向にありますが、逆に言えば寒い日本では育種家でさえ知らない色になる可能性を秘めているってことかも。
ハイブリッドはそもそもハイブリッドなので同じ兄弟でも顔が違うのは見ていただいた通り。注意したいのは「テンプラハイブリッド」など親に品種名があるもので、これは「テンプラを交配に使っているけどテンプラではない」ということなので誤解のないようにしてください。
ショップやイベントで見かけるようになった「アロエハイブリッド」。ただこの一見だけだと「同じ名前なのにたくさんの顔があるコイツらなんなの?」と難しそうに感じるかもしれません(値段もまちまちだし……)。この特集でその大枠を掴んでいただけましたら、ぜひ今年は遅の中から1つお気に入りを見つけてお迎えしてみてください。その世界の奥深さに気づくきっかけになるはずです。
特典广告减少,显示更清爽♪