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PUKUBOOK Succulent picture book

2026.9.20 いま、アロエが面白い――ハイブリッドから始まる、新しいアロエの世界

ここ何年か、園芸店や植物イベント、SNSなどで「アロエ」をよくみるようになったと思いませんか? しかも、よく知る「アロエ」とはちょっと様子が違う。赤やオレンジ、ピンクやブラック?! といった多彩な色。どこに葉っぱがあるのかわからないくらいイボイボゴツゴツのフォルム。

いったいアロエの世界で何が起きているのでしょうか。

今回はそんな「イマドキのアロエ」がわかるお勉強会。アロエをマスターしてぜひお気に入りの1株に出会っていただければ幸いです。

実は40年以上の歴史があるアロエハイブリッド

イマドキのアロエと言えば「ハイブリッド」。なんといっても「アロエハイブリッド」なんて商品名で流通しているくらいです。そもそもアロエのハイブリッドとは何か? 実は遡ると1980年頃から始まっていて、その間に大きく3つの「ウェーブ」があったようです。

  • 第1ウェーブ 1980年代 アメリカで、マダガスカル産の小型種 Aloe descoingsii × Aloe haworthioides から 'Pepe' が生まれます。ただ「振り返るとここが原典だったよね」と言う程度でひっそりとしたスタートでした。
  • 第2ウェーブ 2000年代 人気が爆発したのがこの頃。 Kelly Griffin、Dick Wright といった著名育種家が今も名を残す多くの銘品をリリースし、ジャンルとして確立します。
  • 第3ウェーブ 2010年代 タイをはじめとする東南アジアが育種の主役に。2006年に記載された新種後からも加わり多様性が爆発。2020年の時点で現地ナーセリーは「アロエ交配の最前線」として紹介されています。

新種がデザインの可能性を広げた「第3ウェーブ」

近年のアロエブームを牽引しているのは間違いなく「第3ウェーブ」での「多様性の爆発」です。
それまでのアロエのハイブリッドと言うとフォルムはシュッとしてて優等生のようなイメージ。それが一転、葉っぱ全体が刺のようなもので覆われたモンスターのようなビジュアルで一気にダークサイドに落ちたのが「第3ウェーブ」。なにが彼らアロエを闇落ちさせたのか。

カスティロニアエ

そんな「悪魔の血」のひとつが、マダガスカル原産の「アロエ・カスティロニアエ(Aloe castilloniae)」。
葉の縁だけでなく葉面にも大きな結節を持ち、それらが鮮烈な赤色に染まるといういままでのアロエにはなかった特徴を持つ、個性的な小型アロエです。
こうした新しい特徴が、他のアロエに「葉面いっぱいに結節」や「赤黒く染まった鋸歯」、「コンパクトなまま複雑にうねりながら積み上がる」といった新しい特徴を発生させたのはまさに「闇落ち」そのもの。 小さな世界に異様なほどの情報量が詰め込まれたアロエがでてくるようになりました。

四角形に近い鋸歯(ラズライト)
葉表をびっしり覆う結節(テンプラ)

もちろん、現在のハイブリッドの多様性はカスティロニアエひとつで説明することはできませんが、「原種が持つ個性を組み合わせると、アロエはこんな姿にもなる」というハイブリッドの面白さを象徴する存在です。

#育種家さんがよく言うのは「あるものを組み合わせて作れるものは限られている。新しい表現には新しい材料が要る。けどそれは自然(長大な時間による進化)でしか創れない」と……。

2023年ごろに日本に「第3ウェーブ」が到来

この多様なアロエを日本で見かけるようになったのって結構最近な記憶じゃないですか? 実はその感覚はあっていて、日本に本格的に紹介されたのは2023年。「THE CORE」さんがイベントやYouTubeで海外の優れたハイブリッドや新しいタイプのアロエを積極的に紹介したことで、それまで一部の愛好家が追いかけていた世界が、より広い多肉植物ファンの目にも触れるようになりました。

そして2026年現在、当時は入手困難で高かった人気ナーセリーのハイブリッドやネームド品種も比較的お手ごろ価格で入手できるほどにこなれてきました。あこがれ、遠くから見ているしかなかった世界が、手に届くところに。乗っかるなら今しかありません!

イマドキアロエの魅力

まず、小さい。
ドニー。ロゼット単体で10m程度、もりもり群生しても10~12cmのポットサイズで十分納まります

そもそも小型のアロエがベースになっていることが多く、ほとんどのハイブリッドアロエは大きくても10~15cmに収まります。何十株になっても棚にすっぽり収まるコンパクトさ。

カラフル
店頭に並ぶ「ハイブリッドアロエ」。赤や黄色やオレンジ……たくさんの色が並ぶ

カラーの多様性が圧倒的。よく引き合いに出される「流行の男前植物たち」は基本的に緑一色だったのに対し、アロエハイブリッドはその色数の違いで目を楽しませてくれます。

私だけのオリジナルハイブリッドに挑戦

究極的な楽しみとしては「自分だけのハイブリッド」が作れること。作りやすいこと。コンパクトでたくさんの株を保有でき、毎年同じ時期に花を咲かせるので交配しやすく、実生もカンタン。実際にヤフオクやメルカリでも、個人の方が作った多くの「オリジナルハイブリッド」がリリースされています。

人気のアロエハイブリッド ピックアップ

TCT

誤解を恐れずに言うと、実は市場で見かける「アロエハイブリッド」の多くはここタイのTCT Nursery(Tepchai Tippayachit さんの農園)がリリースしています。テンプラ、ラヴァ、グロリアスドラゴンといったネームドは、その膨大なハイブリッドの中から育種家自身が選抜したコという位置づけ。

グロリアスドラゴン 2026年現在最も注目を集めるネームド。色といかつさに定評
テンプラ TCTといえばまずこれとも言うべき代表種
ラヴァ 溶岩の名のとおり赤黒い発色が魅力
ラズライト 青い宝石の真価は最盛期にのみ見られる深いブルーカラー
ライオンフィッシュ 長い葉の上に、鋸歯が四角く長くうねうねと揺らめく。流通はレア
ワサビ わさびカラーのシュッとしたフォルム
ロウルサンコ

日本でもアロエのハイブリッドをリリースしている生産者さん、趣味家さんは多くいらっしゃいますがまっさきに名が上がるのがロウルサンコさん。実はその活動の歴史は近年のブームよりもずっと古く、インスタを遡ると2020年ごろから「アロエが面白い!」と新品種を紹介したりハイブリッドを発表したりしています。オリジナルっぽい品種もざっくり数えても20種以上発表されているのですが、いまだにそのほとんどは市場流通しておらず、私めのような素人にはインスタを見てため息を付くことしか許されていない世界のようです……。

デンキショック 細長い葉にチリチリと舞う鋸歯が個性的なフォルム。
カレン ジマーマン

アメリカも熱い。ハンティントン植物園のカレン ジマーマン Karen Zimmerman さんが発表しているアロエも市場で高い評価を得ています。アメリカ産だからなのか植物園としてのこだわりなのかはわかりませんが、色やビジュアルのインパクトよりもフォルムの個性やバラエティを追求している雰囲気で、どちらかというと第2ウェーブの正統な後継者たちといった印象。

ワイリーコヨーテ これは往年の、ではなく2016年という生まれ年でもそのビジュアルでも第3ウェーブです。アメリカ産の第3ウェーブは雰囲気がどことなく往年の銘品に近い感
ソ―ボーンズ 大きく四角い鋸歯がまさにノコギリ
往年の名品

新しいトレンドが生まれると、それに呼応するようにヴィンテージの魅力が再発見される。アロエの世界も同じです。先輩たちが愛したクラシックなハイブリッドには、今の時代にこそ新しく映る、洗練された造形美。当時はあまり注目を集められていなかった品種も掘り起こされてきているのが新鮮で面白いところでもあります。

クリスマスキャロル 往年のハイブリッドの中でとりわけ発色の良いコ。ケリーグリフィン。
ドニー ギャングスターシリーズ。最盛期は深いブルーボディに蛍光ピンクのエッジ。
デビルグループ 名前はデビルだけど明るいグリーンからオレンジの爽やかカラー。最初に手にしたアロエハイブリッドなので個人的に思い入れが強い
コーラルファイア 立ち上がり広がるフォルムが独特。
ドランブラック ディックライト氏の銘品。白い。
ペペ もちろんこのコもお忘れなく。ちいさくてかわいい。花もかわいいので注目
夜の姫 いわゆる世界的ウェーブではない国産ハイブリッド。こういうのを発掘するのも楽しみの1つ
名前のない「アロエハイブリッド」
たくさん並んでいるのに1つとして同じものがない!

これまでに紹介した「ネームド」は、育種家さんがセレクトしたいわば“道しるべ”。本当に面白いのは「ノーネーム」の世界です。育種家さんがつくった膨大な交配株や趣味家さんがつくるオリジナルハイブリッドのすべてに名前をつけるのが不可能なだけで、ノーネームの中にも驚くほどカッコいい個体が潜んでいます。しかも世界に2つとないオンリーワン。名前に縛られず、目の前の姿と直感で選ぶ「一期一会」の出会いこそ、ノーネームハイブリッドの醍醐味です。

道しるべを頼りに似たコを探すのも良し、イベントで並んでいるものから自分の好きな色やカタチで選ぶも良し、あらゆるネームドを超える次世代の弩級アロエを探すも良し、といったところです。

買う前に、2つだけ

新しいアロエに挑戦しよう!とショップやイベントに足を運ぶ前に2つだけ覚えておいてください。

色はコロコロ変わる
テンプラ
同じテンプラ 季節的なものではなくストレスが要因で、水切れカット苗だったものが根付いて元気になった結果。この間1~2週間程度の超速変化です。

写真は特に、だけでなく実物でも、その発色は一時的なものとお考えください。ほとんどのアロエは育成機には明るいグリーンに、寒さや日照、肥料などのストレスで強く色づきます。タイ産のハイブリッドは年中温かいタイでも色が出やすいものが選抜される傾向にありますが、逆に言えば寒い日本では育種家でさえ知らない色になる可能性を秘めているってことかも。

「実生」はその親や兄弟と同じ顔にならない

ハイブリッドはそもそもハイブリッドなので同じ兄弟でも顔が違うのは見ていただいた通り。注意したいのは「テンプラハイブリッド」など親に品種名があるもので、これは「テンプラを交配に使っているけどテンプラではない」ということなので誤解のないようにしてください。

まずはハイブリッドを1つ

ショップやイベントで見かけるようになった「アロエハイブリッド」。ただこの一見だけだと「同じ名前なのにたくさんの顔があるコイツらなんなの?」と難しそうに感じるかもしれません(値段もまちまちだし……)。この特集でその大枠を掴んでいただけましたら、ぜひ今年は遅の中から1つお気に入りを見つけてお迎えしてみてください。その世界の奥深さに気づくきっかけになるはずです。

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