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PUKUBOOK Succulent picture book

2022.6.3 『ボーイミーツガールの極端なもの』という名のサボテン関連グッズで、あなたもサボテンに恋をする

今回のオンラインイベント「PUKUBOOK LIMITED ONLINE VOL.4」を開催するに当たり、ふだん使っているものだけでなく前から欲しかったものや全然知らないけど面白そうなものなどをいろいろと仕入れてみようと奔走しましたが、まさか「書籍」が仕入れできるとは思いもよらなかったんですよね。そこで「多肉植物」関連の書籍ってどんなのがあるんだろうと調べていて出会ったのがこの本です。

小説『ボーイミーツガールの極端なもの』とは

マーケティングの世界でちょっと前に言われていたことに、「今は物じゃなく、物語を売る時代だ」というキーフレーズがあります。「この商品はこんな機能があります」とか「こんなに品質に優れています」ということだけでは物が売れなくなってきている。それよりも、その物が作られてきた背景だとか、込められている思いだとか、あるいはそれが自分の生活に入ってきたときに今の平凡な生活がどんなふうにドラマチックに変化していくのかといったことを「物語」として伝えることで、ようやくそれが売れていくという。ただここでいう「物語」はあくまでもマーケティング上での比喩であって、物語風に語られるけど中身はセールストークやプレゼンテーションだったはず。

でもそれが、本当に「物語」だったら?
「ここにサボテンが1株あります。このサボテンから『物語』を創作してください」という問。
それを一流の小説家が本当にやってのけたのがこの「ボーイミーツガールの極端なもの」という小説です。

その物語は、意識しなければ気づかないくらい自然に、でも深いところでしっかりと、テーマとしているサボテンの世界観としっかりシンクロ。だからもう、このサボテンを見たらこの小説の世界で紡がれる暖かい物語を思い出さずにはいられない。
サボテンを見るたびに心があたたまる。それってつまり、サボテンに恋しちゃったってことですよね。

あなたもきっと、いや間違いなく、サボテンに恋することになります。
サボテンってなんだかとっつきにくいなぁと思っていたあなたに読んでほしい物語です。

白雲鸞鳳玉 鳥子の物語

「青空ばかりではつまらない。…曇の日や雨の降る日があってこそ、日々が面白くなる。」
そんな文章で始まる物語は、白雲鸞鳳玉の、清々しく晴れた空ではなく所々に白い雲が立ち込めるその世界観が具現化したかのよう。その世界に生きる鳥子は、御年72歳になって初めて「恋」に落ちる。今まで男物の傘や財布を愛用するなど渋い趣味だったけど、サボテンをネット通販するついでに女物のかわいい傘を買って、次の雨の日を待つ。
「身近な生活も、恋をしている目で見ると、全く飽きないものだった。」 いくつになっても、恋は日常に彩りを与えてくれるもの。

アストロフィツム 鸞鳳玉

メキシカーナ 伽奈の物語

メキシカーナだから主人公の名前が「岸 伽奈」ってダジャレかーい!ではなく、メキシカーナとヒントニーが交雑せず独立した2種を維持している理由に着目。それは「花が咲く時間帯が違う」から。大学卒業を控えた21歳の伽奈は、今まで自分が本当に思っていることを言わなくても特に問題なく過ごしてきた。6歳のときに父親が再婚して育ての親になった竜子さんとも仲良くやってきた。でもそれって本当にうまくいってるの? 伽奈が目標としていた国家試験に合格したとき、今までサポートしてくれた竜子さんにお礼をしようと花束をプレゼントしたら喜んでくれなかった。「お金が勿体ないし自分には必要ない」と(うわぁ言ってしまいがちだ)。相手にちょっと踏み込んだとき、それが予期せぬリアクションだったとき、どうする? 人間はメキシカーナとヒントニーのようにいつまでも独立した2種ではいられない。

ゲオヒントニア メキシカーナ
アズテキウム ヒントニー

竜女冠 竜子の物語

ここに登場する「竜女冠」は古い株で、昔は子株を傷つけずに採るために親株はトゲを切られていたというその傷跡のあるまま長い年月が過ぎた株。それを「子育てのために30代40代を費やしてきた女性」に投影した物語。ただよくありがちな「自分を犠牲にして」とか「女を捨てて」ということじゃなくて、「私はずっと本来の自分だった」とか「ずっと幸福だった」と肯定的なのがちょっと違う。竜子は肯定しつつも、ただ、トゲが無い、というよりもトゲを自ら切り落としていたような人生だったと振り返る。そのトゲをもう一度身にまとったらどうなるんだろう。

エキノカクタス 竜女冠

解説というか感想というか

といった具合に、各章ごとに登場人物ひとりひとりが主人公として入れ替わる短編集。その各章ごとにサボテンが1鉢登場し、そのサボテンの特徴にちなんだ世界観で物語が進んでいきます。このサボテンを監修しているのが、広島に拠点のあるサボテンと多肉植物専門店「叢」の代表、小田康平さん。物語の中にもそれをモデルにしたお店や店主が登場します。

個性的な形をした植物に、今日も恋を続ける。

そんな一文で締めくくられるこの小説は、やっぱりサボテンへの愛を語った、長い長いサボテンガイドブックなのかもしれないなという、月並みな感想で締めくくらせていただきます。

余談

この本を読んでいたらパートナーから「よくそんな本見つけてきたね?!」なんて驚かれたけど、たまたまです。とある書籍サイトで「多肉植物」で検索したら引っかかっただけ。でもAmazonもGoogle先生もすごすぎて(ユーザーのふつうの欲求に的確に答えすぎるので)「多肉植物」で検索しても図鑑やガイドブックだけでまさかの「小説」は引っかからないんですよね。だからこそ声を大にして主張したい。

この本を「多肉植物関連書籍」として紹介している多肉情報サイトはうちだけです!
Google先生こそちゃんと勉強してください。

なんて。いつの日か、このページがGoogle検索に引っかかる日を夢見て。

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