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PUKUBOOK Succulent picture book

2022.8.12 この夏はアガベを「飲もう」! 多肉植物LOVERが書いた、世界で最もアガベに着目している「テキーラ」特集

「テキーラ」と聞いて何をイメージする? 若いコたちがショットで煽ってぶっ倒れるためのお酒だって?! いや、僕にだってそんな武勇伝の1つや2つあるけどさ、今日はそういう話じゃないんだ。そんなテキーラのイメージを刷新してほしい。テキーラを好きになって欲しい。そう願いながらまとめたのが今回の記事。だって、これを読んでいる人はみんな「多肉植物好き」だろ?

なお今回の記事は全面的に、イアン・ウィリアムズ著 『テキーラの歴史』(原書房)を参考文献とさせていただいています。

テキーラとはなにか?

まず、どこで作っているお酒かご存知ですか? そう、メキシコです。北米や南米各地で作られているようなイメージもありますがそれはただのイメージで、「テキーラはメキシコのテキーラ町で製造されたものに限る」という法律があるくらい、他の地域では作ることができない地域限定の特産品です。ちょうどシャンパンがシャンパーニュ地方でしか作れないのと同じですね。

ハリスコ州テキーラ町(Google Map)

じゃあ、何から作っているかご存知ですか? 「テキーラはサボテンから作る」という話もまかり通っていますがそれはウソで、テキーラの原料はアガベ。それも、アガベ・テキラーナ・ウェーバーズアズール、通称「ブルーアガベ」と呼ばれる品種を使用することが法律で決まっているくらい、正真正銘のアガベ酒です。

メキシコで作られている、アガベのお酒。それが「テキーラ」。

テキーラの原料

ブルーアガベ

アガベと言ってもたくさんの種類があることはみなさんご存知と思いますが、テキーラの原料に使用できるアガベは唯一この「ブルーアガベ」こと「テキラーナ・ウェーバーズアズール」と決められています。それもカキコから増やした完全なクローン個体のみ。DNA管理もされているらしいです。本当に単一のクローンばかりなので、たった1種の疫病で全滅するリスクも懸念されています。

アガベから葉っぱを切り落としたもの=ピニャがテキーラの原料

7~12年ほどかけて大きく育てたアガベの先端と葉っぱをすべて切り落とすと、こんなパイナップルのようなボール(球茎)が残ります。アガベ農場ではこれを「ピニャ」と呼ぶそうです。テキーラはここにたっぷりと蓄えられた糖分を醗酵させて作られます。

アガベの樹液は刺激が強く、皮膚に浴びると炎症を起こすそうです。アガベ農場でピニャを作っている農夫さん(ヒマドールと呼ばれています)は肌にクリームを塗って炎症を防いでいます。自宅でピニャを作ろうという猛者はその点をご留意くださいませ。

ちなみにこの「ブルーアガベ」は自宅で栽培しようと思っても、園芸店にはめったに売っていません。ていうか見たことないです(ヤフオクで「タネ」を見たけど、タネで増やしたらブルーアガベとしては認められないのでは……と思ったり)。他所の国や地域で勝手にテキーラを製造されないように流通が規制されている可能性もありますが、単に観賞用としては人気がないからじゃないかと思います。ほら、食用アロエ「アロエベラ」も園芸店にはめったに流通しないのと一緒で。

その他に利用されることがあるアガベの品種
サルミアナ

テキーラとして認められるのはブルーアガベだけだとしても、他のアガベはまったく利用価値がないかというとそんなことはありません。たとえばアガベサルミアナは、この記事の最後に出てくる醸造酒「プルケ」の代表的な原料。解体して搾り取るブルーアガベと違い、茎にストローを刺して吸い出す平和的な手法で樹液を得ているそうです。

他にも、テキーラにするにはブルーアガベしか使えませんが、アガベから作るお酒(メスカルと言います。テキーラはメスカルの1種)の原料に利用されているのはこんな品種たち。

レチュギラ
マキシミリアナ
アトロビレンス
マピサガ

テキーラのグレード ざっくり解説

ちょっと興味が出てきたテキーラ。でもいざ買おうとしたら種類がありすぎて値段もピンキリでよくわからん!安いので良いやと思っても、その安いのでもたくさん種類がある。どう選んだら良いの? の基準としてこれだけは覚えておきましょう。

カテゴリー

日本酒には「純米酒」「純米吟醸」「純米大吟醸」……、ブランデーにも「VO」「VSOP」「XO」とグレードがあるように、テキーラにもカテゴリーがあります。酒屋さんのボトルにはほぼ例外なく、ブランド名に続いて以下のカテゴリー名がついています。

ブランコ(シルバー)製造後すぐから2ヶ月以内に瓶詰め
ホーベン(ゴールド)ブランコに熟成されたテキーラをブレンドしたもの
レポサド600リットル未満のオーク樽で2ヶ月~11ヶ月と30日を超えない期間熟成
アネホ600リットル未満のオーク樽で1年以上熟成
エクストラアネホ3年以上熟成
100%アガベ/ミクスト

このカテゴリー分けは「熟成期間」による分類です。テキーラにはこれ以外に「材料の51%以上はブルーアガベ由来のアルコールを使う」というルールがあり「いやいやうちは混ぜ物なしの100%ブルーアガベだよ」というものには「100%ブルーアガベ」といった表記があります。

100% BLUE AGAVE の表記

その表記がないものは「ミクスト」と呼ばれ、サトウキビ(ラム酒の原料だ)やとうもろこし(同ウィスキー)を原料にしたものをミックスしているようです。

と、日本酒やウィスキーがそうであるように、グレードや製造方法の違いに比べると、ブランドの違いって素人にはわからないレベルだったりするんですよね。まずはこのくらいの基礎知識で味に当たりをつけ、あとはボトルのデザインで選んだら良いんじゃないかなーと思います。

入門におすすめのテキーラ ブランドとグレード

僕自身はお酒にはさほどこだわりのない素人なので、素人らしくメジャーで手に入りやすいものを紹介します。全部飲んだら他のブランドや高級テキーラにも挑戦していきたいと思います(いつになるやら)。

サウザ・シルバー

スーパーやコンビニで「テキーラを買おう」と思ったらたぶんこれしか売ってない、けどほとんどどこでも売っている、日本のテキーラのスタンダードがこちら。市価は1,600円~1,800円くらい。

口に含んだ途端にまず「甘み」が入ってくるまろやかな口当たりで、クセが強くなくて飲みやすいです。

サウザ社はこの後出てくるクエルボ社の帳簿係をしていたセノビオ・サウザ氏が設立。1873年に自社のメスカルを「テキーラ」と名付けて初めてアメリカへ輸出したという逸話が残る由緒正しきテキーラカンパニーです。もちろん昔も今もメキシコに拠点を構えていますが、いろんな紆余曲折があって今は我らがサントリーグループの傘下に入っています。誤解を恐れずに言っちゃうとサントリーが作っているテキーラ(あぁ怒らないで)。スーパーに並んでいる理由もわかります。

サウザ・シルバー
サウザ・ブルー

サウザシルバーはアガベ以外の原料を使用している「ミクスト」ですが、こちらはピュアな「100%ブルーアガベ」。熟成のカテゴリー的には「シルバー」なのでボトルにはシルバーと書いてあります(ブルーの表記が小さいので自信がなくなってきます)がネックにある「100% BLUE AGAVE」の表記が「ブルー」の証

お値段が高くなりそうだけどシルバーより1割くらいで 1,700円~2,000円くらい。ただ大きな専門店じゃないと置いていないと思います。

クセが強くないと書いたシルバーと違って、こちらはクセしかありません。優しい甘みはなく、口に含むとむせ返るような独特の風味。個人的に「草っぽい風味」と思っています。薬草のような雰囲気。ただ、その風味に慣れるとサウザシルバーは物足りなく感じます。このあたりは、芋焼酎と麦焼酎のどっち好き問題と似ているかも知れません。

サウザ・ブルー

飲み方はもちろんショットでクイッと!……なんて乱暴的な飲み方はせず、オンザロックやハイボールがオススメ。独特の風味がフレッシュに効いてスッキリ爽快な飲みごたえです。

サウザ テキーラハイボール
クエルボ・ゴールド・エスペシャル

クエルボ社は1795年創業と、メキシコのテキーラカンパニーの中で最も歴史ある会社の1つ。外資に買収・提携する会社が多い中、創業当初より独立しながらトップブランドの地位を守っている「ザ・テキーラカンパニー」。日本ではアサヒビールが輸入販売しているので、サウザと並んでスーパーでも買いやすいブランドです。

今回は、サウザと同じカテゴリーじゃ面白くないと思って「ゴールド」をセレクトしてみました。こちらは角のない味わいとほんのりスモーキーな香りがあってウィスキーに近い印象。お値段も1,700円~1,900円でサウザブルーと同じくらい。

クエルボ・ゴールド・エスペシャル
パトロン・アネホ

パトロン社は1989年創業と、先の2社と比べるとできたてほやほやのベンチャー企業ながら、品質の良いテキーラとして世界的にトップクラスの人気を誇るブランド(と『テキーラの歴史』にまっさきに紹介されています)。お高いので入門というにはハードルが高いけど、お金をかけてもいいから「良いテキーラを味わってみたい」という方はここから入ると間違いないそうです。市価は9,000円~11,000円くらい。

フルボトルは流石に勇気のいるお値段だったのでミニチュアボトルで試飲させていただいたのんですが、いやー、もうとてもまろやかで芳醇な香り。アガベらしいトゲトゲしさはどこへやら。上質なウィスキーのようでもありますが、ウィスキーよりずっと透明感のあるスッキリした味わい。テキーラのイメージを覆してくれました。

こちらはもちろんショットでクイッと、なんてことはせず、オールドグラスにストレートでちびちびやってください。

これをフルボトルで嗜める男になりたいと思います。

パトロン・アネホ

アガベ由来の食品

アガベを観賞用としか見てこなかった僕たちには想像も付きませんが、アガベは美味しいそうです。そのままではとても食べれるような気がしませんが、根本の膨らんだところには糖分が蓄えられていて、焼くとちょうど炊いたコメのように甘くなる(加水分解)ので、古来から食用に利用されてきたんだそうです。その歴史は、およそ11,000年前にアメリカ大陸に初めて人類が渡ってきたころから、食用にされてきた形跡が見つかっているんだとか。

そこまで聞いちゃ抑えきれない好奇心。いつかそのうちアガベを焼いて食ってみようとは思いますが、それはまたの機会に取っておくとして、最後にオマケとして日本でも手に入るアガベ食品を紹介します。

プルケ

わかりやすく言うと、テキーラを蒸留する前の醸造酒。ブランデーに対するワインのようなものです(いやウィスキーに対するビールかな)。主にサルミアナが原料で、サルミアナから採取した樹液(アグアミエルというそうです)を放置すると自然に発酵してヨーグルトのようなお酒ができあがるんだとか。

日本では蝦夷ビールさんが輸入販売しています。今回は手に入らなかったのでまた今度試してみたいと思います。

アガベシロップ

アガベの樹液。主にサルミアナから採取して煮詰めて甘いシロップにしたもの。言われてみればメープルシロップとまったく製法が同じですが、まさかアガベから甘いシロップが採れるというのが意外しかありません。

さてそのカンジンのお味ですが、本当に「猛烈に甘い」です。はちみつやメープルシロップの比じゃない。ほんのりカラメルの香りがする煮詰めた砂糖のような甘さ。ベッコウ飴に近い風味かな。アガベらしい独特の風味を期待したけど、そういうのは全然ありません。

アガベシロップ(駅前の大きめのスーパーにふつうに売っていました)

まとめ

というわけで、多肉植物図鑑のコラムなのに、なんと多肉植物の紹介がほぼ無い異色のコラムができあがりました。でもここまで材料のアガベに踏み込んだテキーラ特集も、世界のどこを探しても見つからない自信があります。

今後とも、多肉植物愛好家として、ちょっと脇道それた面白話を見つけて記事にしていければと思っています。

いかつい。とにかくいかつくカッコいい。大きなものは何メートルにもなる、まるでドラゴンのような風貌。花が咲いたら枯れて...

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