• Twitter
  • Instagram
  • Facebook
  • greensnap

PUKUBOOK Succulent picture book

2021.7.23 オススメできないオススメ書籍2冊と「育て方」マスターへの心構え

多肉植物図鑑を編集するのに参考文献は書かせません。いろんな品種を紹介するカタログ本はもちろんのこと、育て方のガイド、寄植えやアレンジのレシピ……。その中で、ぶっちぎりで初心者におすすめできない、超絶コアでマニアックな情報満載で度肝を抜かれた本が今回ご紹介する2冊です。

初心者にはおすすめできない、と書いたけど、本音を言うと初心者にこそ、まず一番最初に見てほしい本だと思っています。今すぐにその価値がわからなくても、きっとこのさきかならず役に立つ時が来ます。そんな多肉植物愛好家の必携本ではないでしょうか。

B.plants ビザールプランツ 冬型

2020年2月発行。SPECIES NURSERYの藤川史雄監修。多肉植物の中でも「冬型」に特化した本でハオルチア、コノフィツム、オトンナ、ケープバルブが主軸。特にハオルチアは自生地の写真が豊富だし、コノフィツムは解剖写真や詳細分類などこれ以上無いくらい詳しいのでそれらが好きな人にとっては間違いなくバイブル。2019年8月に発行された「夏型」もあって、アガベ、パキポディウムが好きな人にはこちらもオススメ。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

ビザールプランツ 冬型 珍奇植物最新情報 [ 主婦の友社 ]
価格:1760円(税込、送料無料)


多肉植物の栽培 羽兼直行

2018年12月発行。サボテン相談室を運営している多肉植物の(とくにエケベリア栽培の)第一人者 羽兼直行 さんの著書。羽兼さんの著書はたくさんあって、初心者向けの育て方解説本ももちろんありますが、この本は初心者さんのためというよりも、ベテランさんが知りたいようなディープな栽培方法を網羅的に紹介している、専門的な図鑑に近い内容です。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

多肉植物の栽培 [ 羽兼直行 ]
価格:2420円(税込、送料無料)


バーゲン本も販売されています。今だけかも?!
多肉植物の栽培 羽兼直行(バーゲン本)

なぜこの本が必携なのか

どちらの本も、多肉植物栽培のプロフェッショナルたちが執筆しているものなので、一般的な「育て方」の本としても優れた書籍であることはまず断言しておきます。ただ、その周りにある記事たちが異色すぎるんです。思わず「この情報、誰得?」とツッコみたくなってしまうような。なので、ここからは、この本にどういった事が書かれているのかという雰囲気と、なぜそんな記事が書かれているこの本を推すのかという個人の見解です。

市販の培養土の水はけ試験(B.Plants冬型)

多肉植物栽培に使用する用土の解説はほとんどの多肉植物の育て方本に書いてありますが、実際に水を与えてみて、どれだけの量がどのくらいのスピードで流れ落ち、どのくらいが用土に残ったかという「水はけ/水持ち性能」の比較試験を掲載しているのは、僕が知る限りではこの本だけです。

「多肉植物の栽培」でも用土の種別を詳しく詳しく解説していますが、その書き出しの中に「多肉植物は用土を選ばない、または土に対して順応性があるといえます」とあります。日当たり、水やり、苗の状態や植え方などの条件に比べると、用土はそこまで重要でないのは確かです。そんな用土でもっとも重要な要素は何かというと、個人的には「水はけ/水持ち」じゃないかと思っています。肥料が足りなければあとから足せばいい。酸性度だってあとから調整できる。虫が湧いたら殺虫剤や防虫剤をまけばいいじゃないか。でも「水はけ/水持ち」はあとから調整できないし、管理に最も重要な「水やり」の頻度に直結します。だから用土の良し悪しは「自分の環境&性格とマッチする水はけ具合かどうか」で決まるんじゃないかと思います。

いやそれはちょっと言いすぎかな、極論、暴論かなと思っていたのですが、この本が水はけ試験をしているのはまさにそういうことだろう!とより思い込みを強くした次第です(笑)

人工光線栽培・組織培養(多肉植物の栽培)

多肉植物がインテリアショップや100円ショップにも置いてあるので(売り場が室内っていうこともあって)インテリアプランツのつもりで室内に置いてしまい、にょろにょろと徒長させてしまうということは多肉あるあるですが、じゃあ最近流行りの植物育成ライトを使えば室内でも元気に育てられますよね!と思い至った人のためのページもしっかりガッツリ用意されています。

曰く「ハオルチアは人工光線のみで栽培が十分な植物」だけど、光源は白色蛍光灯がベストチョイスで1年毎に交換、季節によって照射時間を変える、そんなことより室内は湿度が低すぎるので特に夜間の湿度が必要、そして、やっぱり外に少しでもスペースがあったほうがいい、と結んでいます。き、きびしい。いや、プロらしい責任感溢れた記事でとても参考になります……。

ただ実際に多くの多肉植物愛好家さんたちがLEDライト環境で元気に育てているのをみていると、もう少しカジュアルにやってみて、うまくいかないケースとその対処法を集めてみたいなと思ったので、僕の自宅でいろいろ試してみようかなと思います。

ハオルチアの自生地(B.Plants冬型)

その植物のことを知りたいなら、自生地のことを知るのが一番だと僕は思っています。ハオルチアはよく「岩陰に埋まっているので日陰でも大丈夫」と言われますが、どんな岩場なのか?どのくらい埋まっているのか?その周りにはなにがあって、どのくらい日陰になっているのか?なんて実際に見せてもらわなければわかりませんよね。日陰日陰というので僕は最初洞窟みたいなところなのかと思っていたくらいですが、実際には確かにまわりにハオルチアよりずっと背の高い草木に覆われてはいるけど、基本的には「なにもない」カラッカラの岩砂漠のど真ん中。草木の隙間から結構な日差しを受けているんじゃないかと思われます。

エケベリアの自生地(多肉植物の栽培)

セクンダの自生地での様子(イメージ)

多肉植物の栽培も自生地の写真が豊富です。その中で特に見ておきたいのはやっぱりエケベリア。多肉植物は乾燥地帯の出身だからと、砂漠?と想像しがちだけど、エケベリアは結構深い森の中にお住まいです。ハオルチアよりずっと日当たりが悪そうなところ。曰く「木陰や岩の陰や朝日だけが当たる山の東側の斜面を好んで苔類と一緒に生きています」。徒長するから日当たりが重要だ!とは言われますが一日中カンカン照りのところでは焼けてしまってうまく育たないのも頷けます。

まとめ 育て方をマスターする上で最も大事なことはなにか?

大事なことは「育て方」を知ることよりも「多肉植物とはなにか?」を知ることだと思います。

植物は動物と違って動けません。いや動けたとしても、鳥でもければ生まれた地域を大きく離れることはできません。住み慣れた故郷を離れ、遠い異国の地に持ち込まれた植物が健やかに生きていくためには、故郷の気候にできるだけ近づける必要があります。いわゆる一般的な「育て方」はその現地の気候を手軽に再現する方法論でとても有益ではありますが、本の著者と自分が同じ地域や同じ環境ではないのでそもそもその「育て方」ではうまくいかないケースがあります。それに一口で多肉植物と言っても、灼熱の砂漠、富士山よりも標高の高い高山地帯、熱帯雨林の木陰などまったく異なる環境からやってきたものが1つのお店に集められています。

まずは、自分が持っている多肉植物たちが、どんな植物なのかを知ること。全部一緒くたに「多肉植物」でくくらずに、それぞれがどんな環境で生きてきたのかを知ること。それが「多肉植物とは何か?」を知ること。

そして自分の環境をその現地の環境に近づけるにはどういうことができるのかを知ること。それは「育て方」には違いないけど、より特殊な、特定条件を解決するためだけの具体的な「ノウハウ」で「道具」のようなものです。

どんな「道具」があるかを知って、自分の環境で使えそうなものを選んで、トライアンドエラーで多肉植物に快適な環境にしていく。それが本当の「育て方」じゃないかと思っています。

ちなみに

と書いていますが、僕自身はふだんは「いかに適当でズボラで手をかけずに、日本のご家庭のどこにでもある環境で、イイ感じに育てていけたらいいなー」というコンセプトでやっています(笑)。

専門的で信頼性の高い情報は書籍に譲り、ゆるく力を抜いて読んでいただける記事を書いていければと思います。

コメントはSNSで!

  • Twitter
  • Instagram
  • Facebook
  • greensnap

記事のご感想など、SNSでいただけると、
とても嬉しいです!
お返事も書かせていただきます!

RELATED ARTICLE関連記事