植物を育てるときに絶対に外せないのが「日当たり」。育て方のガイドにも必ず書いてあります。でも一言で日当たりといっても、「日向」はともかく、「半日陰」「明るい室内」って何? 何基準? どのくらいの明るさのことをいうの?
そんな「日当たり」の基本を、座学だけでなく実践で学んでいきます。
大丈夫。照度計なんて要りませんよ!
#ハオルチアについては一般的な多肉植物と必要な照度がぜんぜん違うので以下のコラムをご参照ください!
まず植物の育て方で「日当たり」というと何を基準にしたらいいかと言うと、何も遮るものがない直射日光が、1日にうち何時間当たるかということ。例えば、学校のグラウンドや高層ビルの屋上のど真ん中にポツンと置いた状態が100%の日向。太陽光線の強さ100%で、6月で14時間強、1月で10時間弱。
実際には建物があったり、木々があったり、レースのカーテン越しだったりと、100%日光が当たり続ける環境はほとんどありません。なので、直射日光がどのくらい遮られるか? その時間がどのくらいか?が基準になります。1日中、日光の半分を遮る木漏れ日の下にあるなら、日照時間は50%と換算するワケです。逆に50%の遮光が必要と言われたら、午後は日陰になるところに置いても良いワケです。
日光そのものの強さは、夏と冬、朝と昼でも異なります。天気によっても変わります※。でも、この「強さ」は日本全国で同じように変化するのであまり考える必要はありません。それよりも、自分がおける環境ごとの日照時間の違いを把握することのほうが大切です。
※例えば山梨県が「日照時間日本一!」をアピールしてたりするけど、天気のいい日が多いということ。同じ日本でも、日照最長の地域と最短の地域で、年間の日照時間は2倍くらい差が付くようです。
もっとも顕著なのが、ひょろひょろと細長く伸びてしまって見た目が悪くなる「徒長」という障害。もちろん見た目だけの問題ではなくて、徒長している=栄養不足なので、この状態が長く続くと弱って免疫も落ちて病気になりやすくなるし、生長も止まるし、枯れてしまうこともあります。
徒長とまではいかなくても、例えば冬の紅葉の源は光合成で作る栄養分なので紅葉の色づきが悪くなるといった、植物本来のダイナミックさを感じにくくなってしまう影響もあります。
#余談だけど「徒長」は英語で etiolation というらしいので海外記事をググるにはこちらをご利用ください。辞書をググると legginess とか streched と載っているけど。活きた英語講座でしたー。
逆に、日当たりが良すぎても問題があります。もっとも顕著なのが「日焼け」です。正確には強い日当たりで体内温度が上がりすぎることが原因で「高温障害」と言います。葉っぱが全体的に黄色く変色したり、一部が焼け焦げた跡のようになってしまうのがそれ。通称「焦げた!」と言うやつ。サボテンなどは一生残る致命的なキズに……。
「焦げた!」で済めばまだいいほうで、太陽の熱で温められると雑菌が繁殖しやすくなるので、溶けて再起不能になるリスクも高まります。まだ肌寒い春先でさえ、油断しているとやられます。
エケベリアのような葉っぱが生え変わるタイプだったとしても、日照が強すぎると色が濃くなり、葉っぱが短くガッシリとして力強いフォルムになります。またアロエやハオルチアは日のあたったところだけ赤茶けた色になります。まさに「日焼け」です。そういった姿はたしかに、いわゆる「多肉植物のかわいらしさ」とはちょっと違うかもしれません。
以上のような知識を基本として頭の片隅に入れながらも、もっとも大事なのは、実際にやってみることだと思います。ここからは、育て方のガイドにも載っている日当たりの基準を、実際に僕の自宅で例示しながら、多肉植物がどう生長してくのかを見ていきましょう。
わが家で言うと、庭のほぼど真ん中。ひさしの下であっても、日中はずっとひさしの影にならないようなところです。もちろん周りに植物がなく影に入りません。現実的にはなかなか用意しづらい環境と思います。ただ、多くの多肉植物にとっては「強すぎる」ので、春と秋の涼しい時期以外は避けたほうがいいレベルです。
日照時間そのものは「日向」と変わらないけど、左右を他の植物に囲まれてるような、いわゆる現実的な環境。朝の9時に日が差しはじめて昼下がりの3時には影になるくらいが植物の育成環境としてはもっとも理想的と言われますが、まさにそんな環境のこと。
他の植物や建物の影になっていて、ときどき直射日光が当たる程度の環境。わが家で言うと、南側にある植木たちの足元。めったに直射日光が当たらないし、あたっても木漏れ日程度。日当たり好きの多肉植物にはものたりないレベル。
日陰と言うと本来なら、北向きの壁面など、直射日光はまったく当たらないけど、壁以外は開けていて空がよく見える環境。日陰であっても「空が見える」というのが大事。空からの間接的な日照量は、それがない屋内とは大違いです。ただ今回の実験では、北向きの軒先なので空もあまり見えない環境。「暗い日陰」レベルです。
わが家で言うと南に面した部屋の窓辺。窓辺と行っても窓の外に障害物があるので、直射日光は「ときどき射す」程度。もちろん人間の目には明るさは十分で、日中は照明無しで過ごせます。ハオルチアなどの「日陰でも大丈夫」と言われるタイプでも理想を言えばこのくらいが限度。
暗いと行っても、北向きの部屋ではありません。わが家で言うと、南に面した明るいリビングの中の、北側の戸棚の上。窓の反対側です。人間の目には部屋の明るさは十分(明るい室内の部屋と変わらないか、もっと明るいくらい)。でも「反対側」というのがポイントです。このレベルで育つ多肉植物はほとんどありません。いわゆるインテリアプランツたちの世界。チランジアはわりといけます。
それではこの6種の環境においた植物がどんな姿になっていくのかを見ていきましょう。登場していただいたのは元気なエケベリア プロリフェラ E. prolifera 。時期は10月から翌1月の、秋のベストシーズンです。
ばばん。
左から順番に解説すると、
まとめると、キレイに育っているのは日向組だけ。日差しの少ない半日陰と火の当たる室内でギリギリ許容範囲かな。
日当たりというテーマからはずれますが、明るい室内だけ気根がよく伸びてきているのは、それだけ乾燥しているということだと思います。風通しが良ければいいけど室内なので空気の動きも悪く、湿度を適切に維持しにくい難しい環境です。
ちなみに、徒長する環境だとわかるのに1ヶ月かかるのか?というとそんなことはありません。1週間の結果も掲載するので比較してみてください。1週間でも「ちょっと伸びてきているな」という雰囲気はわかると思います!
「日当たりはどのくらいがいいですか?」というのは植物の育て方Q&Aで常に上位にランクインする質問ですが、その答えは「実際にやってみてね」です(笑) この記事に結果は載せておいたので、自分の環境で試してどんな姿になったかを比べてみて、自分の環境の日照具合を把握してみてください。
ちなみに、今回は「プロリフェラ E. prolifera 」という育てやすいコを、秋という育てやすい時期にためしただけなので、また折を見て、別の種で、夏や冬などの過酷な時期にやってみようと思います。
実験にご協力いただいたプロリフェラさんは、植え替えして元気に盛り返しています。