いやあのほんと恐縮すぎてすみません。7月に「Wild Echeveriaが発売されたよ!」というチラ見せ記事を書いて以来、早くやらなきゃ、一番にやらなきゃと思っていた「Wild Echeveria特集」ですが、そのあまりのボリュームと力の入りように「僕なんかが扱っていいものか……」と尻込みしていたら、なんと出版元のシュミノリブロさんから直接「紹介してください!」と案件を頂いてしまいました。もう一回言います。恐縮すぎます。すみません。ありがとうございます。
というわけで、案件ではありますが、そもそもやるはずだった特集記事を前倒しにしてお届けする「Wild Echeveria特集」です。個人的にもとてもお世話になっている本の紹介なので力入れていきます。どうぞ!
『Wild Echeveria』とは、多肉植物業界の第一人者であられる羽兼直行先生による10冊目の著書で、世界で2冊目※となる貴重なエケベリアの原種に特化した図鑑です。エケベリア属が誕生して約200年、今はまだ登録審査中の新品種も合わせて合計196種の原種が、生息地、由来、特徴、原産地での写真などの充実の内容で掲載されています。
※1冊目は2008年に出版された John Pilbeam著『The genus Echeveria』。
ただいまAmazonにて絶賛発売中です。
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エケベリアは多肉植物の中では突出して「ハイブリッド」づくりが盛んです。毎日のように新しい品種がリリースされている気がするくらいどんどん増えています。けど、原種はそうそう増えません。
そもそも「原種」とは、自然環境の中で生息している種のことです。進化・変化する理由が自然環境の変化による適応しかないので、新しい品種が生まれるためには今の環境が激変するか、人類が未踏の地に行って探し出すしかありません。そしてハイブリッドと原種の大きな違いは「故郷がある」ということ。長い時間をかけてその地で元気に暮らしていくために進化してきたのが原種なので、どんな原種でもその「故郷の環境」がもっとも過ごしやすい環境だといえます。
この新種が滅多に増えないことと故郷が明確なことから、なぜこの環境に適応できたのか? そのアドバンテージは何なのか? と学術的な研究も深く行われるのも原種ならでは。1つの原種がバックグラウンドに持っている情報は、ハイブリッドの比ではありません。ハイブリッドは1000種で1冊の本になったのに、原種は196種で図鑑になっている理由の1つ。密度や情報量が違います。
自宅にあるものがハイブリッドばかりだとしても、原種を知っているとそのハイブリッドの特徴から、親はこれとこれかもしれないな……と推測することができるようになってきます。親がわかれば、生息域がわかるし、ケアする上で注意することもわかります。
逆に、誰も見たこと無いようなレアな親を使えば、誰も見たこと無いようなハイブリッドを作ることもできるはず。もちろん「今までに誰もハイブリッドに使ったことがない原種」も、この本には掲載されています。この原種を使うとどんなハイブリッドが誕生するだろう……そんなことを妄想するのもこの本の楽しみ方の1つです。
僕がこの本を知ったのは、普段から時々除いているクラウドファンディングサイト「Campfire」でのこと。「多肉植物の本を出版したい」というワードに惹かれて開いていみると、羽兼直行先生の新刊というじゃないですか。しかもリターンに「羽兼先生とサシ飲みできる権」なんてものがあったのでソッコーでポチって……なんて大それたことは一切せずにささやかな応援コースで完成を見守ること数ヶ月。
多肉植物人生、60年の集大成!念願であるエケベリア原種の本を出版したい! ―― Campfire
さすがに当初予定からは延期にはなりましたが、クラファン開始から半年もかからないという超驚異的なスピードで完成し(本やカタログを作る仕事に関わっていたこともありますが詰めてやっても1年くらいはかかるものです)、6月に僕の手元にも送られてきました。
#後で伺いましたが、デザインやレイアウトや出版や校正まで数名という少数精鋭で担当されたようで、毎日が修羅場のような半年間だったそうです……。
製作に携わられた方には、本当に「おつかれさま」の言葉しかありません。
この本の素晴らしいところというと、内容以外にも語りたいことがあります。
白く大きな余白に青空とエケベリアの写真、その上に墨一色で堂々と配置された「WILD ECHEVERIA」のタイトル。そんなシンプルだけど計算された美しいレイアウトの表紙から始まるこの書籍はそのまま部屋に飾っておきたくなるカッコよさ。もちろん中の書面もレイアウトや書体や色使いがきちんとカッコいい! まさにプロのデザイナーさんのお仕事ですね。
PUKUBOOKでも時々エコやサステナブルのコラムを書いたりするように、環境保全活動には個人的にとても関心を持っています。実はこの『Wild Echeveria』を手掛けているシュミノリブロさんでは今回の出版を機に、原生地の保全活動に積極的にコミットしていこうとされていて、巻末にその情報を掲載誌つつ、本の売上の一部をメキシコ大学での保全活動に寄付すると表明されています。役に立つ本を買って、それが間接的に自然保護活動に繋がるというのが良いですよね。
PUKUBOOKでもこうした活動は積極的にご協力させていただきたいと思っています。
というわけで、多肉植物を愛する人みんなの家の本棚に納めておいて頂きたい、自身を持ってオススメする一冊をご紹介させていただきました。
今回の記事は「ご紹介案件」なので猛烈プッシュしているのは当然と思われるかも知れません、そうでなくても個人的にとても気に入っていてみんなにオススメしたい1冊であることは間違いありません。むしろ紹介したい熱量がありすぎるのと、本書は軽々しく扱ってはいけないと気後れしている自分もいたので、今回のようなご縁がなかったら記事にまとまらなかったかも知れません……。
あらためて、このような機会をいただいたシュミノリブロさんに感謝申し上げます。そして、その活動を今後ともささやかながら応援させていただこうと思います。
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