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PUKUBOOK Succulent picture book

2022.6.24 緊急速報 蒸れ警報発令! こんなときどうしたら?ジュレた多肉の応急処置と予防策

ふといつものように多肉畑に目をやると、お気に入りのあのコが突然きれいな半透明ゼリーに……。じゃない。これダメなやつ。な、なんで? 昨日までは元気じゃなかったけ?! そう、そんな季節がやってきました。やってきてしまいました。

この記事では主に「風通しが悪い」か「暑すぎる」ことが原因で起こる「ジュレ」の応急処置にスポットを当てた具体的な記事です。もっと他の原因にも着目した「夏のトラブル全般」については下記記事をご覧いただければと思います。

多肉植物にとって最も過酷な季節「夏」がやってきました。SNSでもいろんな被害報告が連日上がっていて、我が家でももちろんい...

蒸れ・溶け・ジュレとは?

「ジュレ/ジュレる」とは、水分をたくさん含む多肉植物の葉っぱが、内部で雑菌にやられて組織が壊れ再起不能になる病気のこと。健康な葉っぱと違って黄色く変色しつつ、向こう側が透けて見えるくらい透明度が増し、まるでゼリー(フランス語でジュレ gelee)のような見た目と柔らかさになることから「ジュレる」と呼んでいます。

直接の原因は高温多湿なので「蒸れた」が現象としては正確。暑さが主な原因なのと、組織が崩壊してトロトロになっているため「溶ける/溶けた」ともいいます。

キレイにジュレている例。上の方の左側の葉っぱは、向こう側の鉢のエッジが透けて見えます。もちろんこの後しっかりとお星さまになりました。
サブセシリス錦。重度のジュレは真っ黒になります。値段の高いコほどジュレやすいのはマーフィーの法則か。

ちなみに寒さにやられて凍結したときも似たようにジュレっぽくなりますが、こちらは「ジュレた」とは言わないのでこの記事では触れません。

緊急対策

早速ですが、その「ジュレ」を発見したらどうしたらいいのか? 進行の深刻さ別にできる対策を紹介していきます。

ジュレた葉っぱをすぐに取り除く(+通気を良くして乾かす)

ジュレが葉っぱの先の方だけで数も限られる場合。まずはそれを取り除いてみましょう。ジュレた部分がちぎれやすくなっているので注意しながらしっかり葉っぱの付け根から取るようにします。

ドリームローズ。葉っぱの一部がジュレた。大丈夫、まだキズは浅いはず。
葉っぱを取り除いてみたところ。芯もその周りの葉っぱも健康的に見える。このまま風通しの良いところで様子見。

で、取った結果、芯に目立ったダメージがなく健康そうなら、そのまま様子を見ましょう。できればそのちぎったところから風を当てて中を当てて乾燥させ、風通しの良いところにおいておきます。より風通しをよくするために、同じ根本の周りの葉っぱ(健康なものでも)もいくつかちぎっておいても良いかも知れません。

抜いてみる

葉っぱが密で取り除きにくいケースや、芯や根っこの状態がわかりにくい株は、いっそ引っこ抜いてみると対策しやすいです。葉っぱだけでなく根っこも傷んでいることがあるので傷んだ部分はできるだけ取り除き、そのまま天日で数時間カラカラに乾燥させ新しい用土に植え直します。

蒸れに弱いアガベ「ユタエンシス」。葉っぱの中央部分が黒くなって縮れている
その5日後。下葉を取って様子を見ていたけど進行は治まらず。抜本的対策が必要。
下葉と傷んだ根っこを全部取って、殺菌剤を散布して天日干しで小一時間、カリカリに乾燥。
植え直して木漏れ日が当たる程度のマイルドな環境で様子見
ジュレた部分を切除する

ジュレが芯に到達しているケースは、そのジュレが到達していないところまで芯ごとカットしていきます。健康的な芯を十分残すことができたら、切り口を乾燥させて植え直せば復活することもあります。

芯は真っ黒だけど生長点付近はまだ望みがあるようにみえる
断面にジュレがなくなるところまでカットしていく(加熱殺菌した包丁でカットしています)。

ただ、経験上、ジュレが芯に到達した株で復活することはほぼありません。落ちた葉っぱを葉挿しに使うとうまくいくこともありますが、これも確率的には絶望的です。

芯どころか生長点付近も黒くなっているケース。これはもう手の施しようがない。

ジュレる原因

はぁ。なんかもう切なくなってきました。こういうのを見るたびに「もう多肉やめよう……」なんて思いたくもなりますが、まだ諦めないで! だってまだ他のコ達は賢明に生きようとしているじゃない! このコたちを同じ目に遭わせないためにも、できることはまだあります。

そもそもどうしてジュレるのでしょうか? 何が悪いの? 原因がわかれば対策できそうです。ちょっと勉強してみましょう。

雑菌・カビ

はいこれ。基本的にジュれる原因はこれ1択です。暑さ? 蒸れ? 風通しが悪い? それってすべてこのカビや雑菌さんたちが大好きな環境だってことです。気温が25度~40度、湿度が高く、空気が動かないところで、栄養価の高いエサがある。そういうところでヤツラは活発に動きます。

逆に言うと、これらの条件が1つでも揃わないとヤツラはちゃんと活動できません

後半ではこの「雑菌やカビが好きな環境を作らない」という視点で予防策を紹介していきます。

雑菌・カビが発端じゃないジュレ

「これ1択」と言ったわりに、後半で紹介するジュレ対策をしっかりしているのにジュれることがあります。以下に挙げる原因もジュレを引き起こしますが、実はこれはジュレは二次的な症状。別の一次的な原因で死んでしまった組織が雑菌の餌食になっているだけで、雑菌がいようといまいとダメになってしまっているということ。なので今回の記事では詳しいところまでは扱いません。

- 葉焼け …… 焼けた葉っぱはその後ジュれることが多いです。
- 高温障害 …… 葉焼けに近いけど、温度が高すぎて細胞が死んじゃったケース。通称「煮えた」。コーデックスに多い気がします。
- 低温障害 …… 逆に。凍結して細胞が死んじゃったケース。
- 栄養不足・水不足 …… 光や水が不足して葉っぱが健康を害すると枯れるより先に雑菌に負けてジュれることがあります。

予防策

というわけで、ここからは健康なコを蒸れから守る対策をいくつかご紹介いたします。

蒸れちゃダメだからと梅雨時期に雨を避けて軒下に置いてもジュレる謎。それはきっと空気が淀んでいるから。

逆に梅雨時期に雨ざらしにしていてもジュレない謎。それはきっと雨で植物の周囲と土の中の空気がよく動き、洗い流されて清潔に保たれるから。

うちは基本的に梅雨時期は雨ざらしです。雨続きのときにジュレたことはないんです。危険なのは雨が止んだ後。

もちろん植物自体にも免疫システムがありますので、植物が健康だったらカビや雑菌と戦う力も強くなります

いかにカビや雑菌の繁殖を抑えるか。そんな視点で「予防策」を考えていきましょう。

風通しをよくする

結局一番の対策はこれです。

風がなぜ大事かというと、土を乾かしてくれるし、植物の周りの湿度を下げるからということもありますが、そもそも植物は風がないと呼吸ができません。風があると植物の呼吸が活発になって、土の中の水をよく吸うから土も早く乾くし、植物の中の水分や栄養もよく循環し、植物自体がより健康になります。

※植物には肺も心臓はありませんよね? それなのになぜ水を吸ったりそれを葉っぱに運んだりできるかというと、気孔を開いて風に水分を運んでもらい、水分が少なくなったところに自然と水分が流れていく原理(毛細管現象)で根から葉っぱに水を運んでいます。これが「風で呼吸をする仕組み」です。

そんな「風通し」をよくするための積極的な対策は例えばこんな感じ。

サーキュレータや扇風機を回す

夏に生産者さんのハウスにいくと、業務用の巨大な扇風機がガンガン回っています。この際、見た目や電気代を気にしている場合じゃありません。置けるならドカンと大風量の扇風機を置いてガンガン回しましょう。

#っていいつつ、うちではやらないけど……
#専門的・本格的な設備なし縛りでなんとかするっていうコンセプト
#という言い訳

隙間を作る(寄植えしない)

寄植え派の方、すみません。わかっていらっしゃるとは思いますが、危険です。そもそも植物はギチギチ・密密なところで育つようにできていません(いやいや、リトープスとか密密に身を寄せ合っているじゃないですか?という方はには、そのリトープスがどんなカラッカラの岩砂漠に住んでいるのかを想像していただきたい)。

寄植えの中でジュレたグラプトベリア。
しれっとジュレた葉っぱを取り除いて透かしておきました。

それがよくわかるのが、寄植えした後、1~2年ほど、自然のままに伸ばし放題にしていたグラプトさんたち。いい感じにスカスカになっています。彼らはこのくらいスカスカになっているのが好みということ、なんですね。

自然に伸びた多肉植物はどうしてもスカスカになります。これが彼らの好みなんでしょうね。
直射日光を避ける

夏の直射日光はとても危険ですが、何でかというと、陽に当たると植物内部の温度が上がるからなんですよね。日差しがなさすぎると栄養が足りず免疫が落ちるので極端な日陰は避けたいところ(ダイエットでご飯を食べなさすぎて体調を崩すイメージですね)で、逆説的だけど、温度さえ上がらないならできるだけ日に当てたほうがジュレのリスクは軽減できます。

なので、朝イチから昼くらいまで当たるようにするか、遮光ネットで柔らかい木漏れ日を作ってあげるか、ですね。

#っていいつつ、うちに遮光ネットはないけど……
#専門的・本格的な設備なし縛りでなんとかするっていうコンセプト
#という言い訳2回目

濡らさない・濡れたらすぐ乾かす

夏の水やりは控えめで、やるなら夕方で朝には乾くくらいという話はよく聞きます。ただこれ、昼の暑いうちに水分があると蒸れるからと思っていたけど、ここまで調べてきて「違うかも」と思ったんですよね。つまり、夜にやるのは、多肉植物が気孔を開いて呼吸する=水を吸うのは夜だから。で、ちゃんと呼吸して水を吸わないと健康を害してしまう。つまり暑い涼しいはあまり関係なくて、健康的な食事のために夜は湿らせておきましょう、ということなのかなーと。

もちろん、土の中のカビたちは暖かくてジメジメしてると元気になるので、昼間の湿り気は無いに越したことはありませんが、たとえ夜でもカビたちは十分活動できるんですよね。

なので、健康になって積極的に雑菌を撃退するために、夏は積極的に水やりをしたほうが良いのかも。ここ、未検証なので無責任なことは言えませんが。

水はけをよくする

朝には乾くくらいというのは重要で、そのために水はけは極端なくらい良くしておくのがオススメです。夏越し準備で植え替えです。エケベリア系だったら、ロゼットの幅か高さの小さい方くらいの深さにしか土入れず、それ以上深いところは全部大粒の鉢底石を敷いておくくらいが良さそうです。

水をやらない

そうは言っても水やりするのは不安だなぁという場合、大丈夫、普通の多肉植物は2~3ヶ月くらい水をやらなくてもそうそう死にません。日差しの弱い風通しの良いところで休眠状態に持っていけるなら、6月下旬から9月下旬くらいまで放置してても大丈夫です。

カットする

それもちょっと不安……という方に、最後の手段として、いや本音を言うと、いつも当たり前のように、最初にやったほうが良いんじゃないかというくらい効果の高いメソッドが「カット苗で夏を越す」手法です。

風通しの良い日陰で保管
ちょっと徒長したコがいますが元気です

詳しくは下記コラムに書いたので合わせてご覧ください。

多肉植物の育て方を調べてみると夏越しはたいていこんなふうに書いてあります。 - 高温多湿は避けましょう - 雨が当たらない...
毎日巡回する

結局、1番の予防策は「毎日チェックする」ことです。冒頭にも「ある日突然ジュレる」と書きましたが、実際にたった1日で死に至るということは稀で、実は何日か前から気づかず進行していたということが多いです。手遅れにならないうちに救出することもできます。早期発見! 早期治療! 早いうちに気づける目も養っておきましょう。

クリムゾンタイド。1日でこのくらい進行。驚異的な変化ですが、1日でいきなり死に至るほどのスピードではないことがわかります。

まとめ

今年は夏が早い! つい先日まで長雨が続き「梅雨っぽい梅雨だなぁ」と思っていたら、もう今週から晴れ続きの夏日ラッシュ。雨の気配やどこへやら。これが梅雨明けだとすると、観測史上最速の梅雨明けになるそうです。

もうすでに乗り切れる気がしない暑さなのに、いつもより1.5倍くらいの長さと、必然的に予測される「酷暑」。半壊どころか全滅すらありうるのか。今までジュレ知らずの無敵系品種でさえ油断しているとやられるかも知れません。

ふふふ。燃えるじゃないか。史上最大の試練を前に、今まで培ってきたチカラが試されるってワケか。まだまだやれることはある。今年も全力で夏越し対策をしてきたいと思います。

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