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PUKUBOOK Succulent picture book

2023.11.24 多肉植物の発根にメネデール・ルートンは有効か?そして行き着いたアエオニウムの最強の発根方法

多肉植物の育て方の本やSNS情報を見ていると、胴切りや植え替えをした後には「発根剤」を使うといいよと書いていることがよくあります。代表的なものは、メネデールとルートン。どちらも根っこが良く出てきそうな名前をしています。

さて、この2つの薬品。本当に効くのでしょうか?

疑問を持たずに言われるがままに使ったりしていませんか? 科学大好きなPUKUBOOK編集長はそういう常識的なことでも、あえて疑いの目を向けて自分自身の手でやってみる労力を惜しみません。

今回は(時期的にアエオニウムに限定した結果ですが)その実験&検証結果だけでなく、そんな実験を通して得られた「最強の発根方法」も伝授させていただきます。

今回の結果はあくまで我が家でやった実験の結果であり、諸条件によって結果は大きく変わると思われます。薬品類には適切な用法用量があり、決して「いつもまったく効かない」わけではありません。確かな薬品を開発し流通させているメーカー様の努力を否定する意図はありませんのでご理解賜りますようお願いします。

第1ラウンド 夏の終わりの発根促進

カットしたりしなかったり、事前にメネデールに浸したり水だけだったりなにもしなかったり……かなり色んなパターンを用意

開始時期は7月下旬。アエオニウムだけでなくほとんどすべての多肉植物が休眠状態で発根なんてするはずありませんが、あえてこの絶望の季節に発根を作用していただこうというチャレンジです。

結論だけ言います。まったく効きませんでした

結果「全滅」。細かな条件を分けるのは、1回目にシンプルな実験をやって明確な差が出てからでも遅くないと学習。

かなり細かく条件を分けて入念に準備をしたのに、どれひとつとして1ミリも動かない。やっぱりこの季節に発根を促すのは科学の力を持ってしてもムリなんでしょうか……。

#という前フリ。実はすごい裏技があります。まだ検証が十分じゃないので、来年の夏にでも。

#あとこのときのルートンは量が少なかったので、適切な量でリトライしたらうまくいく可能性はあります。

第2ラウンド 数を打て!夏に傷んだ苗の回復促進

シンプルな3条件でたくさんの苗を比較
なるべく大きさが均一になるように

涼しくなってきた10月上旬。夏に大きなダメージを受けて未だに動かないアエオニウム。その中で死にかけたピンクウィッチの大株から生きている枝を解体摘出したものがたくさんあったので、発根と生長の比較実験をしてみることに。今回はシンプルに、何もない、メネデール、ルートンの3種類のみ。大きさもできるだけ均等になるように割り振り。水やりはメネデールやルートンの成分が他の鉢に移動しないよう鉢底から水が出ない程度に制限。

さて結果はどうなったかというと……。

あれ?
「なにもなし」が一番元気ですよね……

あれ? これ一番元気に開いているのって「何もしてない」列ですよね。

第3ラウンド 初秋の元気なカット苗発根

メデューサカット苗の発根チャレンジ

さらに季節が進んだ10月下旬。海外からお取り寄せしてやってきたメデューサ。当然ながらカットされていてちょっと拗ねた感はありますが、先日まで元気で健康だった苗たちです。これを最速で発根&給水させるにはどうするのがいいのでしょうか。今回は何もない、メネデール、ルートンの3種類に、「カットして(2日ほど)乾燥させてから挿す」のと「カットしてすぐに挿す」の2パターンをかけて、6パターンで比較してみました。

その結果……。

結果

薬品の違いで言うと、4本中3本がもっさもさに根が張った最優秀賞は「何もしてない」コたちです。な、なんだって? また?!

面白いのはまず、メネデールを撒いたコたちは、乾燥させてから挿した方はよく根が張ったのに、カットしてすぐ挿した方は弱々しい結果。これはカットしたその断面からメネデールを吸収しやすかったコたちのほうが控えめな結果になったということ。マイナスに作用したのでしょうか?

ルートンの根っこ。集合体恐怖症の方へはごめんなさい。そうじゃない僕が見てもなかなかキモい結果に(笑)
「なにもなし」の根っこ。そうそう。これがふつうの根っこのはず。

もっと面白いのがルートン。よく見ると、茎の至るところから根っこがもりもりと出てきていて気持ち悪いくらい。茎にあるすべての可能性のある生長点が全部根っこになった感じ。ルートンの発根作用はまごうことなき本物ですね。ただ、根っこが生えすぎているからなんでしょうね。1本1本の根っこが短く根張りとしては不十分でグラグラしているし、吸水力も何もしてないコたちに及んでいません。効きすぎてマイナス。だとすると使用量を調整する必要がありそうですね。

カットして2日乾燥させたものとこの後すぐカットして植え付けたもので比較
ルートンはマニュアルにあったとおり、1回濡らしてから粉をまぶしました。このくらいの塗布量。

今回はカットした後に乾燥させたほうが良いのか? を検証するために、乾燥したものとカットしてすぐ植え付けたものでも比較しました。乾燥させたほうが雑菌が入りにくく安全だけど、カットしてすぐのほうが薬品が浸透しやすいんじゃないかというトレードオフで、どっちが良いのか?っていう話です。

今回のアエオニウムに限って言えば、乾燥させたほうがいい結果が出ている気はします。ただ、差はそれほど大きくないし、この程度の差なら手間を考えても「カットしてすぐ」に植えても大丈夫じゃないかと思います。

これについてはサンプルが少ないので結論は先送りにしたほうが良さそうです。

結論:最強の発根方法

カットしてすぐ土に挿して水やりするのが正解という身も蓋もない結論

以上の結果から、アエオニウムの「最強の発根方法」が導き出されました。それは……

カットして、すぐに土に挿して、腰水管理 (薬品は要らない)

身も蓋もない結果ですが、最もカンタンな方法が、最も効果が高かったとなりました。

もちろんメネデールもルートンもそれぞれちゃんと役割があり、必要なところでちゃんと使えば効果を発揮してくれるはずですが、今回に限って言えば使っても使わなくても結果は同じ。いやむしろ阻害されている感がある。わざわざお金を出して買ってきて手間をプラスして使って、それで効果が常にプラスにならないなら、あえてやる必要はないんじゃないかと。

もちろん薬剤を使って大きくプラスの効果を得ることだって期待できますが、その場合は、それが本当に効いているのか? 与えた量は適切だったのか?※ を自分の経験として体得するためにも、今回やったような「比較実験」が必要になってきます。その「比較実験のやりかた」をぜひ学んでいただければと思うところです。

※マニュアル通りにやるのが適切なやりかただろ?というなかれ。今回の実験はすべてマニュアルに記載の通りの方法でやっています。

そもそもメネデールとは何なのか?

メネデール

まるで芽や根が出ーるな名前の商品ですが、分類としては「活力剤※」で主成分は「二価鉄イオン」といういわゆる鉄分です。この鉄分は植物の生長には欠かせない成分の1つで土壌に含まれているものですが、どんな土壌にでも必ず十分な鉄分があるとは限らないので不足しそうな土壌なら補ってあげる必要はあります。ただ、この情報から読み取れることは、鉄分がもともと十分に含まれている土壌ならメネデールを撒いても効果は変わらないんじゃないかということと、メネデールの鉄分は植物全体の生長に効くけど特に芽や根に効いているわけじゃないということ。ぶっちゃけ言うと、「発根作用があるからカット苗植え付け時に与えると効果抜群」は誤解で、効果がないことだってあって当然。むしろあげるなら肥料と同様に定期的に与えるべきっていうことですよね。

※活力剤…わかりやすくいうと「薄い肥料」です。「肥料」は肥料取締法という法律でその成分の含有量が決まっていて、それに満たないものを活力剤というと決められています。役割としては、植物にとって水が「ごはん」、肥料が「おかず」だとすると、活力剤は「サプリメント」でしょうか。

そもそもルートンとは何なのか?

ルートン

こちらも「根っこの元」みたいな名前の商品、分類はメネデールと大きく違い「植物ホルモン剤」です。主成分はナフルチルアセトアミドと言い、これは、植物がもともと自分自身の細胞たちに「発根せよ!」と指令を出すときに分泌する植物ホルモン「オーキシン」を人工的に作った合成オーキシンの1種。つまりこれを植物に与えると強制的に発根が促進されるというまさに「科学が生んだ魔法の粉」です。

同様の「植物ホルモン剤」としてオーキシンを含む薬剤に「オキシベロン」があります。これもSNSでよく聞きますよね。こちらは天然のオーキシンと同じものを含んでいるようです。名前のオキシベロンもオーキシンから来ているっぽいですよね。

まとめ

今回の企画はもともと批判的な内容にする気はまったくなくて、むしろ逆に「やっぱりむっちゃ効くんだ!すげー!」という方向に持っていきたかったということは主張しておきます。

薬品に限らず、土、肥料、みずやり、日照……植物の管理方法すべてに言えることですが、育て方のガイドブックやSNSで広まっているやりかたは、そのまま自分の環境でやってもうまくいかないことや返ってマイナスになってしまうことがあります。大事なのはそういった情報を鵜呑みにせず「比較実験」で効果を確かめてみること。地味で時間がかかりますが、結局植物マスターになるにはそれが一番の近道だと僕は思っています。

もちろんこの記事も鵜呑みにせず、ぜひ「比較実験」してみてくださいね。

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