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PUKUBOOK Succulent picture book

2023.12.15 いろんな環境を試してわかった、多肉植物ハオルチアをプリプリつやつやにする管理方法

つるつるツヤツヤきらっきらのビジュアルで今も昔も人気が高いハオルチアの、特にオブツーサ。でもそんなキラキラに憧れて手に入れたはずが実際に育ててみるとしわくちゃのカリカリ……。なんで? どうやったらそんなツヤツヤになるの? 品種が違うの? 誰か教えて! 助けて!

と長年ずっと思っていました。

でも違ったんです。必要だったのは、教えでも助けでもなかったんです。単に「トライアルアンドエラー」が足りなかっただけ。

今回のハナシは、「いろんな環境で育ててみたら、たまたまいい感じのコができた」という「偶然」のできごとであって、間違っても「育て方のノウハウ」ではありません。

でも、この「偶然」は、あなたの家でも起こすことができます。今回はそんな偶然を呼び起こす「トライアルアンドエラーの方法」をご紹介する回です。

#テーマは「ハオルチアをつやつやにする方法」ですが、他にも例えば「エケベリアをプリプリにする方法」や「アガベをガチゴリにする方法」などどんな方法にも応用ができます。

出典 flic.kr
アロエに近い硬質葉系と、透明の窓を持つ軟質葉系でグループ分けされていて、軟質葉系がいわゆる「高価な多肉」。末端価格100...

ノウハウを訊いても自分の環境でうまくいくとは限らない

多肉植物の育て方を訊く。たとえば「どうやったらハオルチアをプリプリのつやつやにできますか?」と。そのこと自体は何も間違いではなく、むしろ積極的にどんどんと訊けるだけ訊いたほうが良いに決まっているんですが、問題は、答えを聞いて、それでどうするか? です。

回答してくれた専門家は、質問者の環境を知りません。なのでどうしてもよくある答えしか返ってきません。「そりゃ日当たりは控えめにして、湿度を維持すればいいんだよ」って。

もちろん写真を持参したり詳しい状況を伝えれば回答の精度も上がりますが、それでもそこで得られた回答はあっているかもしれませんが、間違っているかもしれません。それに方向性はあっていても、程度が掴めないということもあります。「もうちょっと日当たりは控えたほうが……」のもうちょっとってどのくらい? それに水や日当たりをプロとまったく同じにしても、建物や土や鉢や、そもそも天気や気候が違うなんてこともあります。

#プロの多くはハウス栽培ですがアマチュアの多くは室内や庭先です
#ちなみにプロに土と鉢について聞いたら「ハウス環境を整えてるから安いので良い」と教えていただいたことも

必要なのは「トライアルアンドエラー」=「比較実験」

問題の本質は、正解がどこにあるかわからないのに、正解がある場所を探し当てようとしていること。例えるなら、プロにノウハウを教わるのは「駅」という行きたい場所が決まっているときにその「行き方/道順」を訊いているイメージを持たれるかもしれませんが、本当は「捜し物」のイメージに近く、自分の家の「爪切り」が行方不明になったときにプロに「うちの爪切りがどこにあるか知りませんか?」と訊いているイメージです。

#「知らんがな」ですよね。親切な人なら「すぐに手が届くリビングの引き出しに入れておけばいいんだよ」と教えてくれるかもしれません。

#「どこに爪切りを仕舞ったら良いと思います?」とか「あなたはどこに爪切りを仕舞っていますか?」はプロに聞いたらいい回答が得られますよね。プロに訊くべきなのはこういう質問。

「ベストな育て方」を追求するのは「自宅で無くした爪切りを探す」のに似ている

爪切りがない場合はどうします? 心当たりのあるところを手当たり次第に探しますよね。これが「トライアルアンドエラー」です。ここかな?と当たりをつけたところでやってみて、失敗したら次のところを試す。そこも失敗したら次へ……。

植物育成の場合は1回のトライアルアンドエラーに時間がかかるので、「1回やってダメだ次いってみよー」ではとても時間がかかります(それに1回目と2回目で季節が変わったりしたらダメです)。なので、いくつものトライアルアンドエラーを同時にたくさん実行します。これが「比較実験」です。トライアルしたい条件ごとに育成環境を作って、植物がどうなるか経過を見る。良好な結果は思いもしなかった環境で得られることがあります。これが今回起こしたい「偶然」です。環境をたくさん用意するほど、「偶然」が見つかる確率も高くなります。

環境の作り方

例えば今のハオルチアを置いている環境が、屋外の木陰で週1回の散水をしている環境だったとします。

ここで、「光を強くするのか弱くするのか?」と悩んだとします。そうしたら、「光の強い環境」と「弱い環境」を探します。例えば、「ほぼ1日中よく日に当たるところ」と、「軒下の日がまったく当たらないところ」

さらに、「水やりを多くするのか少なくするか?」と悩んだとします。そうしたら、その光に対する3つの環境を3つの区画に分けて、それぞれ「毎日水やり」、「週1回」、「1ヶ月に1回」とします。

2種の「悩み」を3段階に分けると、3✕3で9種類の「環境」ができる

合計3✕3で、9種類の「環境」が出来るので、できたら同じ品種の同じ大きさの同じ鉢の同じ土で植えたものを9個用意してそれぞれの環境に置きます。

あとは、一番いい感じに育った環境が、その植物にとって、あなたの家のベストな環境、というわけ。

#つまり悩んだ分だけ環境が増えるということ?と考えた方はするどい!その通りです。科学ではその悩みのことを「変数」と言います。変数が増えると掛け算で環境の数が増えるので、科学実験をするときは変数はできるだけ少なくするのが鉄則です。重要な変数以外は固定して実験し、ある程度理解できたら次の実験で他の変数を試していくようにします。

おそらく最大のネックは「同じ植物を9個用意する」ことです。コストが9倍になりますし、9個中8個はダメにする覚悟がいります。そこは「授業料」だと思って割り切りましょう。8個はダメージを受けたとしても、いい環境を探し当てられればそこで回復させることもできますし、いい環境で立派に育てあげれば良い値でメルカリすることもできますし。

実際に作った環境

今回作った環境。思いつきでいろんな環境を作ったのできれいなマトリックスにはなっていません……。

実際に今回僕の自宅で用意した環境は以下のような感じです。実はハオルチア以外にもいろんな比較実験をしようと思って思いつきでいろんな環境を作っているので、上にかいたほどきれいなマトリクスになっていません。

A 屋内LEDのベストポジション

植物にとってのベスポジというわけじゃなくて、自分にとっての管理しやすさベストという意味。広くて置き場所を選びやすく、LEDの照度も調整しやすく、なによりいちばん目につく場所なのでミスったらすぐに修正できるというところが。当然今回のハオルチアにとっても最適な環境が用意しやすい場所です。

B 屋内LEDベスポジ横のトレイの外

ほぼ同じ位置で、底面給水トレイの外に鉢を置きました。水やりの頻度をほぼゼロにするためです。

ベストポジションの給水トレイ内と、そのすぐ外
C 屋内ベスポジでLEDなし

ベスポジのちょうど横に、LEDを使用しないトレイを用意しました。窓から入る光しか無いという、光がほぼゼロの環境です。

屋内でLEDなし
D 屋内すみっこでLED直下

在庫をおいておく場所のうち、最も風通しの悪いすみっコ。こんなところにおいて生きていけるのはハオルチアだけだろうと思ってハオルチア専用の置き場所にしたところ。ただ狭いので、LEDライトがほぼゼロ距離で当たるところと……。

E 屋内すみっこでLED直下の隣の光の当たらない暗がり

……まったく当たらないところができていました。当たらないところは部屋の中で一番暗いかもしれません。

E 屋内すみっこでLED直下の隣の光の当たらない暗がり/撮影のためにLEDを持ち上げているので本来より光は当たっていて、これ
F 南側の出窓

直射日光の当たる窓辺。LEDよりもさらに強い光。ほんとは水やりの間隔は同じにすべきでしたが、ハオルチア以外にも置いていて、暑くてジュれるのが怖かったので半分くらいにしました。

南向きの出窓
G 屋外に置いたスタッキングバスケットの最下段

比較実験のためと言うより、たまたまそういう環境もあったので比較してみた環境。一般的にハオルチアにとって良いと言われている環境っぽい雰囲気。

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H キッチンで霧吹き

自宅キッチンにおいて、目についたら霧吹きするように。サンセベリアでもちょっと徒長するような明るさです。

I 日が差す窓辺で毎日霧吹き

自分が毎日マメに霧吹きできないので マメな知り合いに協力してもらい、毎日の霧吹きだけで水やりしてもらいました。

結果

さて、実際にどうなったか。

色付きのところが要注意環境

先にまとめると、青い部分が「徒長」、オレンジとピンクが「チリチリ」のリスクが高いところ。特にピンクのところは水が十分あるのにチリチリになるという新しく注意したいところです。

いい感じ
A 屋内LEDのベストポジション/水晶オブツーサ/今回の全ハオルチアの中でいちばんツヤツヤのプリプリに
A 屋内LEDのベストポジション/ドドソン紫オブツーサ/ドドソンも今回の環境の中ではベストな仕上がり(欲を言うともう少しツヤツヤにしたい)
E 屋内すみっこでLED直下の隣の光の当たらない暗がり/赤線レンズオブツーサ/健康的なグリーンカラーでぷりぷり
G 屋外に置いたスタッキングバスケットの最下段/ブラックオブツーサ/Aのドドソンを超えたツヤプリ感
G 屋外に置いたスタッキングバスケットの最下段/琥珀玉露/むっちむちです。ほんとはもうすこし日焼けしたほうが「琥珀」っぽいオレンジカラーになりますが
I 日が差す窓辺で毎日霧吹き/ドドソン紫オブツーサ/Aに近いツヤプリ感を維持
日焼け
F 南側の出窓/水晶オブツーサ/プリプリは維持しているけどボディは赤茶けてツヤ感は控えめに
カリカリ
F 南側の出窓/ドドソン紫オブツーサ/水はあげているのにチリチリになり回復せず
D 屋内すみっこでLED直下/ドドソン紫オブツーサと赤線レンズオブツーサ/いい感じだったEと同じトレイ内なのにLEDの強すぎる光でチリチリに
B 屋内LEDベスポジ横のトレイの外/ドドソン紫オブツーサ/こちらは水不足で、当然シワシワに……ただ内側にプリプリの新葉が控えていて、次の水やりまで耐えている雰囲気
徒長
H キッチンで霧吹き/ドドソン紫オブツーサ/葉っぱに隙間があり緑が覗く。ほんのり徒長している感
C 屋内でLEDなし/玉露/壮大に伸びてます。光がないのに水が潤沢にあるとダメっぽいです

結論

今回の実験で僕が得たノウハウが2つあります。

カリカリになる原因は、水不足か、日に当たりすぎ

ハオルチアがカリカリになる原因=プリプリにならない原因は、水不足だけかと思っていたけど、日照が強すぎてもダメだということがわかりました。いままでカリカリになったコにはひたすら水をやったり保湿したりしていたけど、どれだけ水があっても光が強すぎてはダメ。逆に水がさほど潤沢になくても、日差しが弱く風通しもほどほどの環境だとプリプリを維持できることもわかりました。

水をやっているのにプリプリにならない場合は、思い切って光の弱いところにおいてみるのも手です。

DとEの中間くらいの位置にあった「赤線レンズ」。ちょっとシワが寄っていてお疲れ気味の表情……
かなり暗い環境に移動して2週間。プリプリさを取り戻しました。これは撮影の加減で暗いんじゃなく、目視での暗さに合わせています。照度計で1,000luxくらい。北向きの部屋の窓辺くらいでしょうか。
日照不足でも絶対に徒長するとは限らない

日差しが弱いと徒長するんじゃないか?と思っていましたが、かならずしもそういうわけじゃないことがわかりました。ポトスやシダでも育たないんじゃないかと思うような暗いところでも、元気にツヤツヤプリプリになったハオルチアもいます。それがどんな条件で変わってくるのかまでは結論できませんでしたが、うまくノウハウにできれば、室内のデスクの上などの暗いところでも管理できるかもしれません。

まとめ

ちなみに「多肉置き場を1箇所にまとめず、日当たりの違ういくつかの場所を確保しておく」というのは比較実験云々の前に多肉植物管理の基礎としてもれなくオススメのテクニックです。

さて。冒頭にも書きましたが、今回のやり方は「ハオルチアをつやつやにする方法」以外にも、例えば「エケベリアをプリプリにする方法」や「アガベをガチゴリにする方法」などどんな方法にも応用ができます。同じ株をいくつも用意して環境を分けて管理するのは手間もお金もかかりますが、誰にどんな教えを受けるよりも「自分の経験」として身につきます。特に「あなたの家でどう育てるか?」はあなた以外の誰にもわからないので自分で掴むしかありません。

そのためのツールとして「比較実験」をぜひマスターしていただければと思います。

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