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PUKUBOOK Succulent picture book

2023.2.17 植え替えシーズンの今から警戒しておきたい「カイガラムシ」の生態と対策

厳しい寒さも一段落。植物にとって目覚めの時期となる春はガーデ―ナ―にとっても一年でもっともウキウキする時期ですが、ウキウキしているのは「虫」さんたちも同じです。今回は多肉植物の害虫の中でも最もやっかいな敵の1つ「カイガラムシ」にフォーカスして、今の季節からやっておきたい害虫対策を学びます。

この記事のテーマからして苦手な人は絶対に苦手な画像が登場しますのでご注意ください。ただ、多肉植物をやる上ではいずれ出会うほぼ避けられない状態ですので覚悟はしておいていただきたいところです。

カイガラムシとは

閲覧注意画像が並びます。

カイガラムシの幼虫

生物学的にはカメムシ目ヨコバイ亜目に分類される昆虫で、アブラムシに近い仲間。成虫は小さなハムシのような姿……だけど、成虫が人類の関心の的になることはほぼなくて、やっかいなのはその幼虫。

カイガラムシの幼虫は農家さんや園芸家にとって代表的な害虫で、植物の表面にくっついて養分を吸い、ダメージでボロボロの見かけにしちゃうだけでなくひどいと株ごと枯らしてしまうやっかいもの。さらに「カイガラ」の名前の由来になっているように、成虫に近づくにつれ硬い殻で防御力が高いので殺虫剤が効きにくいのもやっかいさに輪をかけています。

カイガラムシの被害。水もしっかりやっているのになぜかカリカリになってしまっています
カイガラムシの被害 その2。下葉が弱々しく見るからに元気がない
その株。カイガラムシは花芽が好きなので花芽が上がっていると発見しやすい(これより上部の写真は掲載できない……)

寒さも和らぎ、草木も虫も活動を始める春……だけど、カイガラムシが大活躍するのは実は初夏から秋にかけて(この後登場する戦いの記録もそのほとんどが8月~10月のものです)だけど、春には同じ仲間のアブラムシが大躍進するし、なにより今から対策しておくと秋の被害も抑えられるので、植え替えシーズンの今だからこそ、気を引き締めて対策しておきましょう。

カイガラムシに弱い品種

フリル系のエケベリア! うちにはいろんな多肉植物が置いてありますが、いままでカイガラムシの被害に遭ってきたのはほぼ100%葉っぱの薄いエケベリアたち。特にフリル系。特にネオンブレイカーズ。ネオンブレイカーズに至っては、いろんなところから購入した株のほぼすべて100%被害を受けている……気がします(誇大広告かもしれません)。

もちろんカイガラムシといえばサボテンですし(後述)、アガベの多くもカイガラムシに注意というテキストを見かけます。多肉植物は全般的にカイガラムシやアブラムシの好物ですので漏れなく注意が必要です。

見つけてしまったときの緊急対策

できるだけ被害に遭う前に対策しておきたいところですが、被害に遭ってしまったらどうするか? 緊急対策をご紹介します。

このくらい被害が進むと……
対策しても残るのはこのくらいなので回復は難しい

まずお伝えしたいのが、被害が進んでしまうと回復が難しくなるということです。カイガラムシは花芽が好きなので花芽に群がっていると見つけやすいですが、目につくところに出てきた段階では手遅れなことが多いです。ふだんから、上からばかりではなく横からや下から注意深く見るクセが必要になってきます。

パッと見だけでは被害にあってるわからない、このくらいの状態で気づかないと回復は難しい
カイガラムシは上から見てもまったく気づかない事が多いけど、葉裏を見ると……
ひとまず抜いて枯れ葉を取る。カイガラムシの巣窟になっている「茎」を露出させるのがポイント。目に見えるカイガラムシは流水でぜんぶ飛ばす
ベニカXファインスプレー
ベニカXファインスプレーを全体にひたひたになるまでかけた後、清潔な用土に植え替え、さらに用土にもベニカXファインスプレーを浸透させる
約1ヶ月後。キレイに回復してくれました

とは言え、手遅れかどうかはやってみないとわかりません。対策の手順としては

1. 下葉を取り除いて茎を露出させる(ここが巣窟になっていることが多い)
2. 目に見えるカイガラムシはぜんぶ取り除く(ジェット水流で飛ばすと早いけど他の株に伝染らないよう飛び先には注意)
3. できれば清潔な用土に植え替える
4. 株全体+用土にもひたひたになるくらい「ベニカXファインスプレー」をかける
5. 対策として用土に「オルトラン」を撒いておく
6. 1週間後に「ベニカXファインスプレー」をかける

イメージとしては、カイガラムシそのものをやっつけるというより、植物や用土に残っているかもしれない「卵」とそこから生まれる「新しい幼虫」を倒す感じです。敵は目に見えないと心得ておきましょう。

今からしておきたい対策

すべての害虫は、実際に出てくる前に、被害が大きくなる前になんとかしておきたいところです。そんな「対策」として有効なのが「オルトラン粒剤」に代表される浸透移行性と言われる殺虫剤。これを用土に撒いておくと水と一緒に薬剤成分を植物が取り込んで、それをかじった虫をやっつけてくれます。もちろん「最初のひとかじり」をされてからやっつけるのでダメージゼロというわけにはいきませんが、最初のひとかじりは小さいので大丈夫。

今からの時期、植え替えするときには仕上げに薬剤を撒くのを習慣にしましょう。もちろん、植え替えしない鉢にも撒き直しておくのをオススメします。

余談:カイガラムシの有効利用と環境破壊

園芸界ではやっかいものでしかないカイガラムシですが、実は人類は古くからこの虫を有効利用していました。

1つは「コチニール色素(カルミン色素)」といって、カイガラムシを潰すと得られる赤い色素。食品用着色料としても今も使われていて、ベーコンやカニカマやお菓子だけでなく、リキュールの「カンパリ」にも使われていたのは有名な話(今は合成着色料に置き換わっているとか)。

もう1つは「シェラックニス」といって、カイガラムシの硬い殻を作る蝋成分から作る天然のニス。ギターの外装や、ストラディバリウスのバイオリンにも使われています。アルコールに溶けるのと、天然物なのでウレタンに比べると耐久性がなくてメンテが必要なのが難点。

というわけで、「カイガラムシを栽培して色素やニスを生産しよう」という農業は世界各地に興り、そのカイガラムシのベッドとして、生命力と繁殖力が強く管理しやすい「ウチワサボテン」が世界中に広められました。ただこのウチワサボテンの生命力が強すぎた。今はそのサボテンたちは農場を越え地元の草原や森林にまで広がって、生態系を脅かす始末。生命力と繁殖力が強く手に負えなくなっているところもあります。日本でも沖縄から中部地方の海岸や河原に広がって在来種を脅かしているため重点対策外来種に指定されていると報告されています(日本のウチワサボテンは農業じゃなくて園芸目的で導入されたものかも)。

ちなみに

前回のアザミウマ特集のときに紹介した「病害虫ナビ」によると、多肉植物のカイガラムシ対策には「カイガラムシエアゾール」一択のようです。

オルトラン粒剤は「クロトン」、同様のベニカXガード粒剤は「バラ」、ベニカXファインスプレーは庭木全般向けとありますが、多肉植物園芸での実績は充分あるのできっと大丈夫です。

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