2023年最後のコラムは、2023年の最後にやり遂げた新しいチャレンジのレポートです。ちょうど数日前に行ってきたばっかりで超ホット。師走らしく、車で、足で走り回ってきました!
多肉植物を愛する読者様のたぶん99.99%の人にはまったく関係なければ縁のない世界のハナシですし、ノウハウですらなく、未来の自分が読み返して楽しむためのただの「個人的な日記」。そんな記事に一体何の価値が?
いやいやこれは「このくらい事前準備も前情報もゼロでチャレンジしてもなんとかなる」という体験談。もし「経験や前情報がなくて不安」と思って何か新しいことへのチャレンジをためらっている人がいたら、その後押しになれば幸いです。
以前に「多肉植物の輸入ノウハウ」を赤裸々に綴って一部界隈に熱烈な反響を頂いているコラムを書かせていただきましたが、「空港に行った」なんて記述はまったくありませんでしたよね? そうです。その後なんどもいろんな国からお取り寄せするのを趣味として楽しませていただいていますが、空港に取りに行ったことなんて一度もありません。ふつうは郵便局さんや佐川さんが自宅まで運んできてくれるからです。
それを今回空港に行く羽目になったのは、中国のとある業者さんの都合。年末年始企画のために、ちょっと特別な苗をお取り寄せしようと注文したところ、「今からの季節は寒すぎてEMSでは送れない。欲しいなら直行便を手配するから空港に取りに来て」と。 は? ですよ。詳しく聞くと、EMSは業者に荷物を預けてから飛行機に乗せて飛ぶまでに最長3日くらい空港に荷物が留め置かれる可能性があるとのこと。ほかの季節なら問題ないが、今の現地は氷点下10度くらいになる日もあって植物が凍ってしまうらしい。それを「直行便」を手配すると、荷物を預けてすぐに積み込まれて飛ぶので留置時間が短く凍結の心配がない。ただし、空港に着いた荷物は、僕が空港に直接取りに行かないとダメと。
わかったわかった。じゃあ春まで待ちます。と、ふだんだったら回答していたと思いますが、ここでなぞの「記者魂」に火が付きます。これ、ネタになるな、と。1回くらいは行ってみるのもいい経験になるかな、って。ついでにりんくうプレミアム・アウトレットで買い物したりできるかもしれないし、と。
というわけで行ってきたわけですが、結論はタイトルにも書いた通り「二度とやらない!」と心に誓うくらい大変でした。郵便屋さんに佐川さん、いつもこんな大変なことを代行していただいていたなんて、本当に感謝しかありません。ありがとうございます。
もしかしたらこの記事を「輸入した植物を空港に取りに行くノウハウ」だと思って飛んでこられる方もいるかも知れないので、先に必要な情報だけまとめておきます。といっても、ここに挙げた「事前に準備しておくもの」をきちんと準備できていれば、空港に突撃してもスムーズに手続きできるかと思います。
最も重要な情報です。発送した輸出業者さんが知っているはずの情報なので絶対にゲットしておき、プリントしておいてください。スマホ画面でもいいけどめんどいです。
これも輸出した業者さんが持っているので事前にもらってプリントしておきます。各所で提示を求められます。
輸出業者さんが持っているはずのもの。ただ、基本的に荷物の箱に貼ってあるはずで、箱に貼ってあるなら持参は不要です。
次に重要な情報です。関西空港でその荷物を引き受ける会社。ただし、これは発送した業者さんではわかりませんし、事前に簡単に知るための問い合わせ先を僕は結局分からずじまいです。空港の国際貨物の問い合わせ窓口に聞いたら教えてもらえるんでしょうか? まったく手がかりがない場合「とりあえずJAL」とおぼえておいてください。実際にJALの窓口に行けば、行くべき会社名を教えてくれます。ちなみに会社名がわかっても、その所在地がわからない場合もあります。その場合もJALへ(笑)。
関税や荷物取扱手数料。ざっくりと「購入した荷物代金の20%」は持っておきましょう。敷地内にコンビニATMがあるのでキャッシュカードがあれば心強いです。
国際貨物エリアは許可がないと入れません。もちろんゲートで必要書類を記入して申請すれば入れてもらえますが、事前にWEBで申請しておくとスムーズです。申請には[4]の会社を「訪問先」として申告する必要があるので事前に把握しておく必要があります。が、わからなくても「JAL」と書けば通してもらえます。
検疫するときに箱を開けるのであったほうが便利。なくても借りれますが。あと開けた荷物は開けっ放しでも特に問題ありません。つまりこれらはなくてもなんとかなります。
コンパクトカーで貨物エリアに突撃している猛者は僕だけでした(周りは巨大なトレーラーだらけ)。本当に荷物が積めない場合は敷地内にある郵便局から宅配をお願いできるかもしれません……。何しに来たん?ってハナシですが。
ここからが本題です。「空港に取りに来い」と言われてみたものの、そんな経験がないのはもちろん、ググってもそんな情報まったく出てきません。このネット全盛の時代に、こんな情報が見つからないなんて信じられない。えーい。わからんもんはわからん。開き直って、なんにも知らないまま突撃してやれ! 持ち物も、業者さんからもらった情報以外は何もなしだ。なんとかなるだろ。
当日の朝7時くらいに知らない番号から着信が。
「関西空港の……ですが、本日荷物が届いています。引き取りに来られますか?」
「はい。把握してます。ちなみにどこに行ったら良いですか?」
「関西国際空港の……貨物エリアの……コンビニの奥の……に来てください」
ちょうどその時は外に出ていてうっかりAppleWatchで出てしまったこともあり、はっきり聞き取れなかったので覚えている会話はこのレベル。「今日関空に行くことは間違いないことがわかったし、行けばなんとかなるだろう」くらいに思っていました。
舐めてました。ごめんなさい。
思い返せばこの話がむっちゃ大事な話でした。耳かっぽじって聞いて、メモして繰り返し確認必須なレベル。
レンタカーを走らせて空港にやってきました。手前の「りんくうプレミアム・アウトレット」には行ったことがありますが、橋を渡った先にある空港に行くのは今回が初めてです。ちなみに、今日イチでビビったのが、この橋の通行料が片道940円だということ。往復したら大阪縦断の高速代とほぼ同額です。ボッタクり過ぎる……(前の台風でぶっ壊れたりしたからかな)。
さて。「空港に行けばなんとかなる」と思ったのは、入り口に案内があると思っていたからなんですよね。それなのに、まさか案内ゲートどころか、全体的な案内表示すらありません。やばい。どっちに行ったら良いかわからない。
少し進むと道路標識に「国内貨物」という文字が見えます。あ、貨物だ貨物。こっちだ。
けどさらに進んでいたら今度は「国際貨物」という文字が、まったく別方向に見えます。え?国内と国際?どっち? どっちかわかんないけど雰囲気からすれば「国際」だろ?! Uターンして国際貨物エリアに向かいます。
この2択問題は幸い「正解」でした。
国際貨物エリアに近づくとゲートがあります。「関係者以外立入禁止」とか「立ち入り承認が必要」とモノモノしい表示。あぁ、そういえば事前に関空のWEBサイト調べていたときに、「入場事前申請」があったのをここで思い出しました。さて、何も持ってないけど突入できるんでしょうか?
「あのー。荷物の受け取りに来ました。特に何も許可持ってないんですが。」
「どこの会社にいくの?」
「わかりません」
「原則、訪問先がわからないと入場許可できないんですが」
(オワタ)
「便名はわかってるんです。到着してるって電話もありました(航空運送票を見せる)」
「これじゃわかんないね。じゃあとりあえずJALに行って聞いてみて。JALで聞けばわかるから。訪問先もJALって書いて」
「わ、わかりました……」
#ここでこんなやり取りしたっていう話が実はダメなことだったりして関空さんが炎上したりしませんように
#この話はフィクションです、フィクション
さて、とりあえず貨物地区に入れてもらうことはできましたが、JALって言われてもどこかわかりません。
ちょっと進むと国際郵便局を発見。いつもEMSを届けてもらっている郵便局はここなんですね。拝んでおきます。
もうちょっと進むと、もう郵便局のようにわかりやすい建物がありません。会社名がほとんど書いてない。
ここでふと、GoogleMapを開いてみます。すると「JAL」の文字がいくつか。いちばん近かった「JAL CARGO」に行ってみます。
少し立派な入口があったので入ってみます(車をどこに停めて良いのかまったくわかりません)。
「すみません。ここじゃないかもしれないんですが、わからなくて教えてほしいんですが……(正直)」
「あぁ、とりあえず総合案内はここじゃなくて表の……(外に出て指さしてくれる)あの小屋だからそこで聞いてみて」
「ありがとうございます。行ってみます」
(この先ずっとこんな感じです。みなさんむっちゃ親切で丁寧。すごい)
「すみません。ここで聞けって言われたんですが、荷物を受け取りたくて……」
「どこ?」
「中国」
「輸出?じゃない輸入なの?」
「はい」
「じゃあここじゃない。ここは輸出。輸入は……(また外に出て指さしてくれる)あのANAの手前を右に入って左側」
「あ、ありがとうございます。行きます」
「すみません。ここじゃないかもしれないんですが調べていただきたくて……」
「便名は?」
「ここに書いてある…山東航空のSCXXXXです」
「スイスポートですね」
「(おお!)それってどこですか?」
「ちょっと待って……(地図のプリントを出してきてくれる)こっちに行くとファミリーマートが見えるので、そこを曲がって、ここ(マーク入れてくれる)」
(あ!朝の電話でコンビニの奥って言ってた気がする。間違いない)
「ありがとうございます。行きます」
「すみません。荷物の受け取りに来ました」
「お名前は?」
「PUKUBOOK です」
「…はい。こちらです(と言って数枚の紙だけ渡される)」
「え?(荷物じゃないの?)えーと。どうすればいいですか?」
「税関に行ってください。税関にこの紙を見せてください」
「税関ってどこですか?」
「郵便局のとなりです」
「は、はい。行ってきます」
郵便局はわかるのでとりあえず向かいますが、なんと郵便局のとなりに「税関」と書かれた建物がありません。まじか。あるのは「合同庁舎」。まぁきっとここですよね。それにしても表に「税関」の文字が本当にない。ふつう雑居ビルには入居者名が表に書いてあるもんじゃないですか? しかたないのでたまたま表に歩いていた警備員さんに聞きます。
「すみません。税関ってここですか?」
「はいそうですよ」
正解だったので車を停めて入ります。駐車は申請がいると書いてあったので、受付で申請して駐車許可証をゲット。
建物内に「税関」は大きく2箇所ありましたが、とりあえず一番近いところに入って聞きます。
「荷物の受け取りに来たんですが、スイスポートでこの書類をもらいました」
「はい。ここで大丈夫です。ものはなんですか?」
「植物です。多肉植物」
「でしたら『植物防疫』が必要ですね。いったん植防に行ってもらえますか?」
「え? どこ……」
「あ、わからないですよね。案内しますよ……(と言って連れて行ってくれる)」
植物防疫所に着きます。なんですかここむっちゃ怪しい雰囲気なんですが。
「すみません。この人、植物防疫が必要なんでよろしくお願いします」
「はい。申請書を用意しますね。これ書いてください。ここに便名……ここにこの番号……ここに品目をすべて……こっちに輸出者名を、そう全部……」
むっちゃ手取り足取り教えていただき書類が完成。
植物防疫所に連行されたときに税関の人が「また戻ってくることになると思いますが」と言っていた通り、「税関に行ってください」とのことなので先程の税関の担当者さんのところへ戻ります。
そこでさらに親切丁寧に必要事項を記入して「荷物の移動許可書」をゲット。つまり、荷物はまだ税関を通ってないので持って帰ることはできないが、植物防疫書で検査するために一時的に移動させても良いよという許可書です。このあとは、①荷物を持って防疫所でチェックする → ②合格したら必ず荷物を運送会社に戻す(たまにやらない人がいるけど絶対ダメですと念を押されました) → ③2Fにある別の税関窓口で税金を払う → もう一度運送会社に行って荷物を引き取るという手順になることを教えていただきました。
許可書を持ってスイスポートに戻ります。受付で許可書を見せると「荷物を出しますので外でお待ち下さい」と。すぐに出してくれたので車に積み込み、植物防疫所に戻ります。
合同庁舎の搬入口から入っていき、荷物を出して植物防疫所に入ります。
「すみません。荷物持ってきました」
「では、検査所の空きを確認しますね。……第1検査室に持って行ってもらえます? ここから一番奥の……(と外に出て指さしてくれる)」
(建物の反対側。むっちゃ遠い)
「じゃあ荷物は…車で運んだほうが良いですね」
「そうですね。しかもここ一方通行なので一回外に出て入り直してください」
(降ろさなくてよかったのか)
荷物を積んで検査室に運び込みます。
(なんと先程の人、検査室の前で待ってくれている)
「じゃあ、ここに書いた個数分だけ箱から出して並べておいてください」
「全数検査じゃないんですね。やっておきます」
「終わったら呼んでください」
「あ!あの。カッターか何か貸していただけます?」
というわけで開梱する道具すら持ってなかったのでお借りして開梱。今回は前もって「個装しない」パッキング方法にしてもらっていたのでダンボールトレイを出して並べるだけなのですぐに終わりました。
苗はキンキンに冷えていますが、冷害は無さそうです。
検査室に戻ります。
「準備終わりました」
「では検査しますので検査室でお待ち下さい」
ここが一番待たされるかと覚悟していたんですが、数分で来てもらえました。待ち時間実質ゼロ。
眼の前で、箱から出していた苗を1つ1つ丁寧にチェックします。基本的に「土がついていないか」をチェックしている感じです。
「チェック終わったものはすぐに梱包し直していただいて大丈夫」とのことなので、終わったそばから詰め直して散らかった梱包材を片付けていきます。
「はい。合格です。許可書作るので事務室でお待ち下さい」
この書類もすぐに作成していただけました。
荷物を車に積み直してスイスポートに戻ります。とりあえず表に荷物をおいて、受付に書類を渡します。先程の「一時的な移動許可書」が役目を終えたのでここで回収されていきます。
ちなみに、置いた荷物はノーチェックでした。これ、税関の人が言ったように荷物を車に積んだままでも全然問題なさそうです。ていうか基本的にみんなそうしているけど、建前上「ダメです」と言ってみた感じなのかもしれません(悪)。
すべての書類を持って税関の2F窓口に行きます。もちろん誰に聞いたら良いかわからないので最初に目があった人に訊きます。
「関税を払いに来たんですが…」
「あ、ここじゃなくて反対側の窓口です」
移動します。
「関税を…」
「じゃあ申告してもらえますか?」
「え? どうやったらいいですか?」
「パソコンですか? 書面ですか?」
「えーと、カンタンなほうで」
「じゃあパソコンで。こっち来てください」
「ここに名前を…ここにこの番号…(と手取り足取り言われたとおりに入力していく)」
なお、ここで入力した情報は今までとは比較にならないくらい複雑怪奇で、手取り足取り指導がなければ絶対に完成させることができなかったレベルです。区分とか記号とはさっぱりわけがわからんヤツ。お役所仕事恐るべし。
「では計算しますのでお待ち下さい」
「この納付書を持って、反対側の窓口で納めてきてください」
納付するところはさっき(間違えて行ったから)見ていたのでスムーズに向かいます。
現金で納めたらすぐ「許可書」を作っていただけました。
ついに最終目的地。スイスポートの受付に許可書を見せると「どうぞお持ち帰りください」となりました。
ちなみにここで「取扱手数料」を請求されました。全然その気がなくて財布を車に取りに戻ったのは言うまでもありません……。
関西国際空港の玄関口は「りんくうタウン」といってプレミアム・アウトレット他いろんな施設が充実しています。ゆとりあるスケジュールを組めば、帰りにアウトレットでショッピングや温泉で疲れを癒やすなんてことをして帰ることも可能です。「1回くらいやってみてもいいかな」の中にはそんなレジャーも加味されていましたが、今回は一歩たりとも足を踏み入れる余裕がありませんでした……。
#ただ家族は連れていきましたので
#たっぷり3時間、楽しく遊べたようで満足そうでした……
まずは今回、こんなド素人の突撃を、本当に暖かく親切丁寧に対応していただいた各社のスタッフ様に感謝いたします。みなさん年末の忙しい時期にも関わらず意外とどこも混み合ってなくて暇だったのか丁寧に対応していただけました。待ち時間も実質ゼロでスムーズだったのも意外。時期にも寄るかもしれませんが。
「一回くらいやってみてもいいかな」と軽い気持ちでチャレンジしてみた空港直送便の荷受け手続きですが、思っていた以上にあっち行ってこっち行っての「おつかい系ロールプレイングゲーム」みたい。特に敷地内めっちゃ広いのに行き来させられるのが。行く前は、荷物を受け取るところと防疫所と税関は同じ建物内で、荷物はカートに積んで徒歩移動するくらいのイメージでした。そんなワケねえよ。
今回、空港についたのが14時ごろで、最後に荷物を積み込んだのが17時前。約3時間かかりました。そのうち1時間は道に迷っていた時間だとしても、はやくて2時間くらいはかかるってこと。直送便を使うとEMSより送料は少し割安にはなりますが、往復のガソリン代、高速代、空港に行ってウロウロする時間コスト(人件費)を考えると圧倒的にEMSのほうが安いし確実なので、今後は絶対にEMSを利用させていただこうと心に誓いました。逆にこれだけ面倒で煩雑な手続きを僅かな手数料だけで代行してくれるEMSが素晴らしすぎるサービスです。ありがとうございます。
強いて直送便のメリットを上げると、到着までの日数が短いことですね。なんせ発送当日に受け取れるので。今回のように冷害も防げるし、苗もより新鮮な状態で届きます。とはいえEMSでも最短3日くらいで届くので、多肉植物にとっての鮮度で言うとあまり変わりませんけどね。
というわけでゲットしてきた今回の「お取り寄せ」を、年末年始のスペシャル期間にお裾分け販売リリースさせていただきます。これがやりたくてわざわざ空港まで取りに行ったという理由もあります。いつもよりずっとレアなもの、変わったものがありますので、見るだけでも見て行っていただけると幸いです(そもそもお取り寄せの目的が「図鑑に掲載するため」なので「見るだけ」が正解ですし)。