まだまだ暑い日が続く中、多肉さんたちはいかがお過ごしでしょうか? 元気に生長する植え替えのベストシーズンにはちょっと早いけど、そんな楽しい植え替えやアレンジを夢想するためにちょっと先取りなテーマをお届けします。
そのテーマは「化粧砂」。それも「こんな種類があります」ではなく具体的ブランド付きで徹底レビュー。もちろん実際の仕上がり見本もご紹介します。永久保存版です。
2022.06.26 種類とレビューは「VOL.2」にすべて移転して、ここではその役割だけに編集し直しました。プロに聞いた「化粧石を使う本当の理由」も掲載した特別増補版です。
化粧砂とは鉢植えの一番上の表面だけにかぶせる用土のこと。素材にもよるけど、園芸用品のカテゴリ的にはマルチングと言うこともあります。ただ「化粧砂」という専用の商品があるというよりは、単一素材の普通の用土を代用したり、園芸用品店よりもアクアリウム用品店に行ったほうがバリエーションが豊富だったりする、買うのに意外と知識と経験のいるアイテムだったりします。
具体的にどんな種類があるのか……その話の前に、まずは「なんで化粧砂が必要なんですか?」という疑問にマジメに向き合います。
もちろん一番の役割は見栄えを良くすることです。鉢植えに使う用土は植物の育成のためを考えた混合用土なので、色や粒の大きさがバラバラです。これってノイズになるんですよね。例えて言うならむちゃくちゃ派手な色の柄シャツを着ているような感じ。植物本体の美しさを鑑賞するためには用土はノイズのない「背景」にしておきたいところ。なので、視覚を邪魔しない単一カラーでカバーします。植物の種類ごとに用土の種類を変えても化粧砂でカバーすれば見た目を統一できるというメリットもあります。
見栄えが変わるということは、受ける印象も変わるというもの。同じ鉢でも化粧石次第で、よりモダンに、よりカジュアルに、明るく、ダークに……と表情が変わります。お部屋の雰囲気や、多肉植物そのものの性格にピッタリのコーディネートを探す楽しみもあります。
次に意外と実用性があるよというお話の1つが、水はけが良くなること。植え込み用土は多少水持させるためにバーミキュライトやピートモスを使うことがありますが、こうした用土は水やり後しばらくベチャッとした質感になって植物の葉裏にくっつきます。ここで赤玉土のような吸水性と乾きの良い用土を化粧砂に使うと、用土表面の水がさっと乾いて蒸れの防止になります。6月の植え替えで黒玉土を化粧砂に使った理由がまさにこれです。赤玉、黒玉、鹿沼土などがオススメ。
重ための用土を使うことが条件ではありますが、水をまいても崩れないのもメリットです。泥はねしないので植物や鉢植えの周りを汚すこともなくなります。遠くから散水する場合や雨ざらしにするときに効果を発揮します。富士砂、デコジャリといった重い用土がオススメ。
多くの用土には「濡れ色」といって水に濡れていると大きく色が変わる性質があります。この濡れ色の差が激しい用土を使うと、用土が濡れいているか乾いているかがわかりやすくなります。初心者にオススメしたい機能です。赤玉、黒玉、鹿沼土などがオススメです。
はい。見た目しか気にしていなかった僕に怒りの鉄槌を下していただいたのは、山城愛仙園さんの園主山城勝一様(うそです。むちゃくちゃ優しく丁寧に教えてくれました)。
山城愛仙園さんでは一部の鉢に川砂利系の化粧砂を共通して使っているのですが、その理由を尋ねたら「原産地に近い土質にするため」とのこと。
古くはアフリカ大陸と南アメリカ大陸がまだ南極で1つの「ゴンドワナ大陸」だった頃まで遡ります。2つの大陸(とインド)はもともと同じ大陸で、その土壌の多くが火山によって生まれた花崗岩でできています。そしていまも、そのアフリカ大陸と南アメリカ大陸の地表の多くはゴツゴツとした花崗岩で覆われていて、現地の植物はそんなゴツゴツとした岩場の中で隙間を縫うように根を張っているんですね(雨が少ないから侵食が進まないのも理由の1つかもしれません)。
山城愛仙園さんで使っている川砂利は、まさにそんなアフリカ大陸や南アメリカ大陸の石質にそっくり。たしかに言われてみると、山城愛仙園さんで化粧砂を敷いているのは、アフリカ大陸と南アメリカ大陸原産の植物たちだけ(ハオルチア、ユーフォルビア、アロエ、南米のサボテンなど)で、それ以外(北米のサボテンやアガベ、エケベリアなど)には使用していません。
山城愛仙園さんでも、この川砂利を使うようになってから「長年うまく行っていなかったリトープスなどの痛み・腐りがピタリと止まった」と、その相性の良さを証言していただけました。
ちなみに山城愛仙園さんで使用されている川砂は、いまは希少材料とのことで詳細は控えさせていただきますが、質的にはコラムでも取り上げている「白川砂利」や「伊勢砂利」に近いものと思われます。
多肉植物の話を聞いたのに地質学まで勉強することになるとは……。
鉢植えの最後のひと手間「化粧砂」は、ちょっと手に入りにくいけどコスパに優れた用土がたくさんあります。Vol.2 ではたくさんの種類を実際にお取り寄せして違いをわかりやすく掲載しています。お気に入りのカラーを1種みつけて常備するだけでスッキリきれいな多肉コーナーができあがります。参考にしていただければ幸いです。