2025年の(ここ大阪では)最も大きな話題と言えば何と言っても「大阪万博2025」。9月旬現在で10月13日の会期終了までの残り40日あまりの全日で午前中入場がほぼ完売状態という過熱ぶり。終わっちゃったらどうしよう! この冷めない熱気や万博ロスの哀しみを一体どこに持っていけば良いの?! ご安心ください。2年後、いや1.5年後にあります。「横浜花博」です。
EXPOの魅力の1つに「期間限定」というのがあります。終わるとほぼ跡形もなくなってしまうから、開催期間が盛り上がる。でももっと楽しいのが、開催期間前の今から徐々に出来上がっていく「過程」も楽しむことではないでしょうか。今回はそんな「未完成の横浜花博の現在地」をご紹介していきます。
2025年開催の大阪・関西万博。実はその2年後の2027年に、横浜でも国際博覧会が開かれることをご存じでしょうか。正式名称は「2027年国際園芸博覧会」、通称「横浜花博」や「GREEN×EXPO 2027」と呼ばれています。なんでもこい!の万博とは違い「園芸博覧会」なので内容は大きく異なりますが、どちらも「国際博覧会協会」が認定する「万博」であることに間違いはなく、園芸博覧会ということはわれわれ園芸LOVERにとっては万博以上の史上最大規模のイベント。
日本で2大会連続して国際博覧会が開かれるのは極めて珍しく、この「万博リレー」にぜひとも乗っからねば!といったところです。
EXPOにはいくつか種類があって、産業や科学技術や芸術などを広く扱ういわゆる「万博」は、大規模な「登録博」が5年に1回(次は2030年サウジアラビア)。小規模な「認定博」が不定期開催(次は2027年セルビア)。他には「海洋博覧会」とか「環境博覧会」に「レジャー博覧会」といった単発的なテーマの博覧会もあります(「つくば科学万博'85」もその1つ)が、いわゆる「万博」とはテーマが違うけど単発ではなく定期的に開催されているのが「園芸博覧会」。
「園芸博覧会」は大体2~5年のスパンで不定期に開催。「花と緑」「農と自然」「持続可能性」に特化していて、各国が自慢の園芸技術や庭園を持ち寄るだけでなく、最新の環境技術や都市の緑化モデルも披露されるのが特徴。万博が「博物館」なら、花博は「植物園」といったイメージです。
実は「園芸博覧会」にも規模の違いで区分があり、「博覧会国際事務局 BIE」も認定している規模の大きな花博は、日本では「大阪花博'90」以来2回目です。合間に「淡路花博」や「浜名湖花博」が開催されていますが、「国際園芸家協会 AIPH」のみ認定の中規模の博覧会でした(といっても十分デカいけど)。
会場となるのは、横浜市瀬谷区にある旧上瀬谷通信施設跡地。ここは戦後長らく米軍に接収されていた広大な土地で、2015年に返還されました。広さは横浜みなとみらいの1.3倍。急にぽんっと返してもらった広大な空き地をどう活用するのか? もちろんいろんな活用プランが挙げられました。大型テーマパークや防災公園、物流拠点、自然を活かした農業体験施設……。が、そうした開発をやる前の打ち上げ花火として「花博」という案が浮上。都市インフラを一気に整備しながら、世界中の注目を新しい街に集める。そんな狙いがあるようです。
横浜花博のテーマは「幸せを創る明日の風景」。シンプルだけれど、自然と人が共生する未来像を示すメッセージが込められています。
ロゴは全国公募で選ばれたデザインで、「緑が重なり合って幸せを積み重ねていく」イメージ。キャラクターは「トゥンクトゥンク」と名付けられ、人と自然の心臓の鼓動のような「共鳴」を表しています。
展示では、世界各国の庭園、最先端の農業・環境技術、体験型の緑化プロジェクトが集まる予定。けど、現時点ではここまで。2025年現在では出展が確定している国も出揃ってなく、テーマ館や政府出展の大まかな内容と国内出展団体は決まっているっぽいけど、それ以外にどんな展示やイベントが行われるかまでは具体化されていません。今後の発表や進捗に期待して待ちましょう。
花博と言えば日本では「大阪花博」が有名です(跡地は鶴見緑地公園と咲くやこの花館になっています)が、1990年という37年前もの話なので、ここでは近年開催された花博を振り返って、横浜でどんなことが期待できるのか見ていきましょう。
来場者934万人という近年の花博としてはトップクラスの大規模開催となった北京花博(歴代記録でいうと大阪が2300万人でダントツ、1983年ミュンヘンが1160万人、1999年の中国昆明が950万人)。参加国や機関は110とされ異例の規模。会場内の丘の上に建設され花博のシンボルとなった「永寧閣」、中央に居を構える「中国館」などの大型のパビリオンや建造物は仮設ではなく今も跡地「北京世園公園」に残され活用されています。日本館では日本庭園を造成したとか、チームラボが没入型アート展示を行ったといった記録もあります。
世界的な園芸産業のメッカであるオランダで開催された花博で、きれいな長方形の敷地をキレイな格子状に区分けした個性的な会場マップが目を引く、まさに万博でしかできないような都市開発プロジェクト。格子の街にある格子の木造建築「オランダ政府館」、外壁全面に花がプリントされた「Floresタワー」(閉幕後に住宅に転用)、会場の移動のためのゴンドラなどが注目を集めました。
大部分が砂漠地帯のカタールらしく、砂漠や乾燥地帯の緑化をメインテーマの1つに掲げていた園芸博覧会。なだらかな丘のような屋根の上が緑化されているので、半分が地下に埋まっているような半円形の建築「EXPO HOUSE」をはじめとして、砂漠の中にあるとは思えないくらい全面緑化された会場。我らが多肉植物たちも活躍してくれているのかもしれません。
さて。やると決まったら大成功してほしいと願ってやみませんが、大阪万博にしても横浜花博にしても、もちろん批判の声もあります。「税金がかかりすぎる」「交通アクセスが整うのか?」「そもそも市民に浸透していないのでは」といった指摘です。特に交通については花博に間に合わせようとしていた「上瀬谷ライン」を断念し「バスに専念する」と計画していることは、(大阪万博での地下鉄のハンパない輸送力を見ているので)心配になってしまいます。
#あと来場者数が1,500万人と想定しているんだけど過去の花博からして目標高すぎないかと思ったり……。
#会場周辺のホテルを検索するとラ◯ホしかでてこないとか……。
広報については我々弱小市民も一丸となって頑張っていくしか無いと思いますが、税金について。いやそもそもこうした国際イベントの「失敗」ってなんでしょう? 税金使ったけど良かったねと税金使ったのに大失敗の線引きはどこで判断されるんでしょうか?
過去に開催された万博やオリンピックなどの国際イベントで、世間的に「失敗」とみなされている例を調べてみたところ、大きく三つのパターンがありました。
1. 入場者数が目標に届かず運営が赤字に終わる
2. 会場施設がその後放置されて廃墟化する
3. 建設費の借金が重荷になり、都市財政を圧迫する
大阪万博でも開幕してから連日取り上げられている「入場者数とチケット収入」ですが、チケット収入については8月中旬時点でクリア、入場者数は目標には達しなさそうだけど万博としては文句なしの水準。会場跡地はIRを含めた都市型リゾートとして開発する計画があります(是非はあります)。
会場建設費は2350億円と言われていて、350億円かかったと言われる「大屋根リング」含め、そのほとんどが会期が終わったら撤去される期間限定の建築物(移築が決まっているのはブルーオーシャンドームとオランダ館くらい?ドバイ万博の日本館だったウーマンズパビリオンは横浜花博にも登場します)。
#ちなみに横浜花博の予算は、会場建設費420億円、運営費360億円。建設費は税金とスポンサーが出し、運営費はチケット収入や飲食店等のロイヤルティ等が充てられます(単純計算で360億円を有料来場者1,000万人で割ると3,600円なのでわりと現実的な目標じゃないかなーと)。
一方で、忘れてはいけないのは「会場建設費は浪費ではなく投資」という側面です。税金を大量に投じますが、その多くは、道路や交通網の整備、観光需要の拡大など、今後も残って使い続けられるインフラや経済に還元されていきます。さらに大事なのは、終わったあとに何が残るか。新しく整備された街並みや施設、イベントを通じて得られた知名度やブランド、そして多くの人が共有した未来への目標や思い出。これらをどう活かしていくか次第で、「やってよかった」となるか「やらなければよかった」となるかが決まります。
つまり大事なのは、何を残すか? そして、どう活かすか? です。
今現在、大阪万博を全力で楽しんでいる1人としてときどきふっと思うのは「始まる前からもっと楽しめばよかったな」という後悔です。もちろん開催決定からロゴ決定までのあれやこれや、ミャクミャクの誕生、シグネチャパビリオンのアンバサダ決定やそのテーマ、街で見かけるようになったロゴやポスター……。意識しなくてもいろいろ情報は入ってきていたけど、もっと積極的に情報を集めていたら、始まる前から通期パス買って初週から通い詰めていたに違いない。
2025年大阪万博の後、すぐに横浜でも国際博が開かれるというのは、日本にとって大きなチャンスです。花博はただの花のイベントではなく、「都市と自然がどう共生していくか」を世界に発信する舞台。市民としては、ボランティアや参加イベントで関わることもできますし、シンプルに「見に行く」「楽しむ」ことが最大の応援になります。跡地がどんな街に変わっていくのか、そのプロセスを見届けるのも楽しみのひとつ。
批判や不安もあるけれど、せっかく巡ってきたこの機会をポジティブに受け止めて、「花博2027」から始まる横浜の未来を一緒に応援していきましょう。