「多肉植物やってます」という話をすると実に多くの人が「私は植物は無理です……サボテンですら枯らすので」という言い方をされます。「サボテンですら枯らす」は植物が苦手という意味の慣用句にすらなっている感がありますが、はっきりいいます。サボテンや多肉植物は、枯れます。それもわりとあっさりと。
この記事は、そんな「サボテンでも枯らす」と思っている方に「それでも大丈夫だから多肉植物やってみて」とお伝えするための記事です。
ちなみに「誰もが」と書いたのは、ほんとに誰もがやるからです。僕でも、いやいや生産のプロでもやらかしています。初心者だけではありませんのでご安心ください!
他の植物たちと違って乾燥に強くて丈夫なコが多いので「カンタン」と言いたい気持ちはわかります。けど、そもそも植物(に限らずありとあらゆる生き物)はその原産地の環境で生きていくために長い時間をかけて進化してきているため、原産地以外の環境では、上手にその「原産地の環境」を作ってあげないと生きていけません。
サボテンや多肉植物は基本的にカラッカラに乾燥した地域に適応していて、さらに種によって、灼熱の砂漠や極寒の高山帯までその生息域は様々。少なくとも、高温多湿の日本の庭やエアコンの効いた室内に適応したコは皆無なので、そのままその環境においたら枯れるのは当然です。
多肉植物は、実はムズカシイ。
ぜひこれを頭に叩き込んでください。
話を聞いている限りで一番よくあるのが、水のやり過ぎ。「植物には毎日水をあげましょう」と小学生の理科の時間にも教えているのでどんな植物でも水がいると思って、毎日コップいっぱいの水を……なんてやっているとほとんどの多肉植物はあっという間に枯れます。
水のやり過ぎは大抵の場合、「ジュレ」という症状を引き起こします。こんな状態になっているようでしたら要注意。
まずは、多肉植物がどれだけ水がなくても生きていけるかを知っていただきたい。そんなあなたに「多肉植物水なし生活体験セミナー」をご用意しましたので、こちらのコラムをぜひ実際にやってみてください。
①と関連してよくあるのが「風通しが悪い」問題。植物の育て方を読むとよく「風通しの良いところに置く」という表現が出てきます。風通しが悪いところでは、基本的にどんな植物も育ちません。
風がなぜ大事かというと、土を乾かしてくれるし、植物の周りの湿度を下げるからということもありますが、そもそも植物は風がないと呼吸ができません。風があると植物の呼吸が活発になって、土の中の水をよく吸うから土も早く乾くし、植物の中の水分や栄養もよく循環し、植物自体がより健康になります。
※植物には肺も心臓はありませんよね? それなのになぜ水を吸ったりそれを葉っぱに運んだりできるかというと、気孔を開いて風に水分を運んでもらい、水分が少なくなったところに自然と水分が流れていく原理(毛細管現象)で根から葉っぱに水を運んでいます。これが「風で呼吸をする仕組み」です。
特に注意が必要なのは室内。人がいるうちは大丈夫でも、人がいなくなった部屋は全く空気が動きません。特に多肉植物は夜に呼吸をするので、夜に人がいなくなる部屋に置いているとピンチ。そんな部屋に植物をおいているならサーキュレータを置いて24時間つけっぱなしにすることをオススメします。
①と同じくらいよくあるのが「日照不足」です。多肉植物は観葉植物と売り場が近くて似たようなイメージがあるからか室内に置きたくなりますが、基本的には室内では育ちません。
室内の多くの場所は、自然環境でいうと、鬱蒼としたジャングル……よりもずっと暗く、洞窟の入口くらいをイメージしてください。そんなところに植物は生えていませんよね?(いいとこ、シダや苔くらいでしょうか)
実際に多肉植物にどのくらいの日当たりが必要かは、やってみるとよくわかります。ぜひご自宅の環境でも、同じ多肉植物をいくつか買ってみて、どんな育ち方をするか比べてみてください(大丈夫。水やりも要らないから、買ってきた苗をそのまま置いて、1~2週間経てばわかります)。
日照不足だと最初は「徒長」という現象が起こります。症状が軽いうちなら日当たりの良いところに置くだけで症状は改善できます。いろんな対処法を次のコラムで紹介しています。
もし、自宅でいちばん日が当たるところにおいているのに徒長しちゃうようでしたら、そのコを育てるのは諦めてください……。けど、日照の少ない家でも育てられる多肉植物はあります。ハオルチアやリプサリスあたりがオススメです。
①~③は比較的すぐに結果が出ますが、逆に時間がかかるのがこれ。
「だって水やらなくていいっていったじゃーん!」という声が聞こえてきますが、さすがにほんとにやらなかったら枯れます。限度はあります。種類や株の大きさにもよりますが、エケベリアなどのいわゆる多肉植物で3ヶ月~半年くらい、サボテンだと半年~2年くらいが目安。
あまりに水をやらないと、見た目にはまだ枯れてなくても根がダメになってしまい水をやってもすぐ吸わず、適切な季節にならないと復活しないなど難易度が爆増することもあります。
どんな多肉植物でも1ヶ月~2ヶ月に1回くらいは鉢底から水が溢れ出るくらいたっぷりと水をあげることを習慣にしてください(ただし真夏と真冬は除く)。忘れちゃう人はカレンダーアプリにスケジュール登録しましょう!
まずは、枯れてもメゲないメンタルを持つこと。日本なんだから、室内なんだから、うまく育たなくてもしょうがない、と。
次に、今度は失敗しないように、勉強して改善に務めること。枯れちゃったのはしょうがない。メゲないからもう一回チャレンジする。でも前と全く同じことをやっていたら同じ結果になっちゃうでしょ? だから何が悪かったのかを学んで、何かを変えてリトライすることが大事。
水やりの頻度、水の量、日照量、置き場所、風通し、土の質、鉢の素材、鉢の大きさ、寄植えや鉢を置く密度、スタート時の株の大きさ、始める季節、品種、属……(あ、品種を変えるのは本当にオススメです。似たコでも性質が全く違うなんてこと、ざらにありますので)
そのリトライの方向が間違っていても良いんです。前よりヒドイ結果になったら、やっちゃダメなこともより強く理解できます。
でもそうやってリトライし続けるうちに、きっと自分の環境でうまく育つコに出会えるはず。そのときには、多肉植物マスターとまではいかなくても「そのコのマスター」になっているはず。そうやって「マスター」を少しずつ増やしていってください。