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PUKUBOOK Succulent picture book

2023.7.21 「ジュレ」だけじゃない――いろいろある夏の多肉植物トラブルの「原因」と「対策」の全記録

多肉植物にとって最も過酷な季節「夏」がやってきました。SNSでもいろんな被害報告が連日上がっていて、我が家でももちろんいくつもの多肉植物たちが旅立っていく日々。そんな我家だからこそ、お伝えできることがあります。夏にトラブルを引き起こす原因は、暑さだけではないということを。

今回はそんな「いろんなトラブルの原因」を、実際の被害の様子をみながら記録したコラムです。原因によって対策も様々だから一辺倒の対策ではダメ。ここでいろんな「原因」と「その対策」を学んで、ご自身の多肉管理の一助にしていただければと思います。

なお、あくまで「原因の記録」であって、対策としてうまく行くかどうかの結果がはっきりしていないケースもあります。今後、経験をつめたら加筆修正していく予定です。

【難度★★】 ジュレ ≒ 風通しが悪い

ジュレの原因はというと、そのほとんどのケースが風通しが悪い環境です。

見分け方としては、ジュレたときの葉っぱがパツンパツンに水を吸っていること。一部の葉っぱだけジュレてて、そのジュレた葉っぱは全体がきれいにジュレてること。他の葉っぱも触るとポロポロと取れやすい、といった特徴があります(進行して芯までジュレていたり、全体が黒く変色していると手遅れなことが多いです)。

メキシカンジャイアント。これはわかりやすくて、室内LED管理してたのにジュレ。気温も光も水も問題ない。ただ数日トラブルでサーキュレータが止まっていただけ。結論「風がないとジュレます」
中心はプリプリしてきれいなのに下の方が黄色く透明感のある状態
日が経つと黒くなってきます
対策

対策としては風通しを良くすること。それも日中だけでなく夜間も。日中は暑さ対策として重要なのはわかりやすいですが、夜は呼吸のために風が絶対に必要です。室内であれば24時間のサーキュレーターはマスト。屋外でも風が止むことがあるのでできれば扇風機を置いたほうが良いですが、難しい場合は棚を置いたり植物が過密にならないように工夫してください。

実はこの「ジュレ」は、芯まで進行して手の施しようがないものでない限り、葉っぱを取って風通しよくしておけばわりとちゃんと改善するので、難度はそれほど高くなく、慣れてきた我が家では「またか」程度にしか思っていません。

さらに詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

ふといつものように多肉畑に目をやると、お気に入りのあのコが突然きれいな半透明ゼリーに……。じゃない。これダメなやつ。な...

【難度★★】 高温障害

次にジュレる原因としてよくあるのが「高温障害」。その名の通り暑すぎることが原因です。その多肉植物、真夏の直射日光に当たっていませんか?

見分け方は、多くの場合は葉っぱの一部分だけが本当に「焦げた」ように変色するのが特徴です。でも「風通しが悪い」ときとほとんど違いがない場合もありますが、風通しが悪いのか、暑すぎるのかは置いている環境を見ればだいたいわかりませんか……? あとは、ホワイトパウダーやモケモケに覆われたタイプは日差しに強いので焦げにくく、逆に緑の艶々葉っぱのタイプは焦げやすいです。

とてもわかりやすい「焦げ」。外葉が焦げただけでジュレ感がなく、生長点にダメージがないなら、マイルドな環境に移すと意外と進行しないので放置することが多いです。ジュレていたら除去推奨。
これもわかりやすい「焦げ」。生長点にダメージはないのでマイルド環境に移して様子見。
メキシカンジャイアント。ジュレとよく似ているけど、風通しがよく日当たりの良いところにあったのでこれは高温障害(下葉のほうが黒い鉢に近いのもあって温度が高くなりがち)。傷んだ葉っぱを取り除いて日差しの柔らかいところに移動。
星星雪。これも環境が同じで高温障害。半日陰に移動。
アフターグロー。水切れからの高温障害。水をしっかりやっていれば初夏程度の日差しには耐えられたと思われます

あと、エケベリアなんかは傷んだ葉っぱをもげば復旧も見込めますが、球体1個で構成されるサボテンやコーデックスは一発アウト。高温障害にはより一層の警戒が必要です。

ギムノカリキウム 九紋竜。表向きには「ちょっと水不足でシワが寄ったかな」程度なのに裏を向けたら中身が全部腐っていたなんてことに……。
対策

日差しが少し弱い環境に移動するか、遮光ネットを被せてください。このときの注意点は、風通しが悪くならないようにすることと、日差しが極端に弱くならないようにすることです。それと、これからの季節は日が長くなってくるので1~2週間もすれば今まで影だったところに陽が差すようにもなります。マメなチェックを怠りなく。

対策しやすく、原因もわかりやすいので難度・重要度はさほどではありません。

【難度★★★】 日照不足

「夏だ!暑さが一番ヤバい!日陰に退避だ!」となると今度は逆に日照不足にやられることがあります。一概に言えない夏対策の怖さ。

日照不足に陥っているコの見分け方は、ヒョロヒョロと徒長した葉っぱ。外葉が反り返ったりするのも日照不足の前兆。なんて明らかに徒長していたらまだわかりやすいのですが、突然葉っぱの一部が変色したり根本がカリカリになってぽろっと取れたりと、根本原因が日照不足にあることがわかりにくいケースもあります。

日照は、植物にとっては「ごはん」です。栄養バランスの良いご飯を食べない人が健康を害するのと同じように、植物の栄養不足にともなっていろんな障害を起こします。ジュレだけでなく病気になったりするのも日照不足が根本原因かもしれません。

エレガンス。日陰で給水していたのでこれは日照不足。栄養不足による免疫力低下ですね。水やりを休止して傷んだ下葉を取って少し日の当たるところに移動(ただ体力がないのでホントは室内LED環境が理想)。
ルノーディーン。日照不足。中心が明らかに徒長していて、葉っぱが傷んでポロポロと。LED荒療治が間に合った株は強くがっしりした葉っぱを取り戻しています。
アシェラッド……かな(見る影もない)。日照不足の中の底面給水で、体力回復よりも雑菌の侵略のほうが早かったかな。
ホルウェイ錦。水切れで下葉が枯れてからの、日陰に長居しすぎて日照不足。まだ致命的な痛みはないけど、軽く触っただけで取れる葉っぱがあったりと健康状態がよくない。放置するとジュレそう。すこし日当たりの良いところに移動。
対策

日陰においたことで弱ってきたと思ったら、少し強めの日差しに当てる必要があります。ただ、夏の直射日光は高温障害のリスクが高いのは先程勉強したばかり。なので、環境はそのままで、高輝度LEDを当てて改善するか見てみるというのも安全策としてオススメです。

意外と根本原因に気づきにくく、でも放置すると確実に弱って再起不能になるので難度・重要度は高めです。次の水不足と合わせて「カット苗での夏越し」も抜本対策としてオススメです。

多肉植物の育て方を調べてみると夏越しはたいていこんなふうに書いてあります。 - 高温多湿は避けましょう - 雨が当たらない...

【難度★★★】 水不足

「なるほど、ジュれるのは水のやりすぎね。夏に水やりはしないほうがいいのね」 というのはぶっちゃけ言うと「誤解」です。夏のトラブルは水不足が原因ということも実は多いんです。

見分け方としては、葉っぱがしおしおに……なっていればわかりやすいのですが、そのまえに突然ジュレたり枯れ込んだりするのがやっかいなところ。日照不足が疑われない環境で、日差しにも強いタイプのコが、急に葉っぱが枯れたり根本がカリカリになっていたら要注意。ジュレる前に葉っぱが柔らかくヘロヘロになったりもします。栄養不足なのでよく病気も併発します。

サブリギダの実生。これは明らかに水不足。屋内LED環境なので温度も風も日照も問題ないけど、水やりをサボりすぎました。下葉ちょっとジュレている感(葉焼け感)があるのが、単なる水切れじゃなくて栄養不足を起こしている証(と思っています)。
夢々は水切れしてヘロヘロになったものを日陰で底面給水していたら今度は日照不足気味に。むずい。
インブリカータ錦。水不足+日照不足。こういう繊細そうな斑入り種は過保護に「日陰で水も控えめに」としがちだけどそれが仇となっているケース。根本スカスカだからもっと水やっても大丈夫。水を吸わせればもっと日当たり良くても大丈夫。少し日当たりの良いところに移動。
対策

実は夏の間に水不足になったときに必要なのがもっとも難易度が高い対策です。水不足が軽くて元気なうちは水を吸わせればすぐ回復しますが(底面給水がおすすめです)弱ってくると水も吸うチカラも弱くなるので難度アップ。

わかりにくくてすみませんが、これ、真夏の炎天下で底面給水させている様子です。「真夏の昼間に水やるな」って誰か言ってました? それも条件次第です。もっと自信持って水やりしましょう!

荒療治としては、室内に取り込んで、底面給水+LED+扇風機ぶんまわし環境で回復を試みる。

逆に休眠へのソフトランディングを助けるなら、鉢の表面だけさっと濡れる程度の軽い水やりをしつつ、日照不足にならない程度の日陰(朝の光が当たる程度)に移動して様子見します。生長点回りだけでも元気になるまでは極端な水切れは避けるようにします。

【難度★★】 カイガラムシ

なんかしわしわになってるけど水不足かな?と思ったら、水をやる前に葉裏をチラッと見てください。特にネオンブレイカーズを筆頭とした薄葉エケベリア。それはカイガラムシが襲来しているからかもしれません。

カイガラムシの被害。水もしっかりやっているのになぜかカリカリになってしまっています
カイガラムシの被害 その2。下葉が弱々しく見るからに元気がない
その株。カイガラムシは花芽が好きなので花芽が上がっていると発見しやすい(これより上部の写真は掲載できない……)
対策
ベニカXファインスプレー
ベニカXファインスプレーを全体にひたひたになるまでかけた後、清潔な用土に植え替え、さらに用土にもベニカXファインスプレーを浸透させる

対策としてはカンタンで、いまいるヤツラを吹き飛ばして殺虫剤を散布、を1週間おきに何度か繰り返すだけ。ただ、対策はカンタンですが対策しないと緩やかな死に向かうことは止められませんので絶対に対策必須です。また、単に水不足と見間違えやすいので、気づいたら手遅れになりやすいのも要注意です。

詳しくは以前に書いたコラムをご覧ください。

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【難度★】 黒斑病・炭疽病

日照不足や水不足、あるいは風不足によるジュレに伴ってよくあらわれるのが黒い斑点。おそらくたいていの場合は「黒斑病(こくはんびょう)」と呼ばれる細菌が原因の病気と思われます。炭疽病はカビが原因だけど近い病気。他にも似た病気はいろいろあります。

クリスペイトビューティの黒斑病。ほぼ進行しないので放置しています。
クリムゾンタイド。これは結局蒸れによるジュレではなく、高温障害からの黒斑病の疑い。木陰に移動させて傷んだ下葉を取ったらそのままキレイに回復しました(そして凝りずにまた今年も同じ症状と対策を……)
アガベの黒斑病(炭疽病かもしれない)。自然現象らしくなく幾何学的な円を描くので勝手に「スティグマ」と呼んでいます。1回かかるとダメになることが多く、粘ったとしても長引きます
対策

個人的には、エケベリアなどのいわゆる多肉植物では、黒斑病はあまり対策しません。他の原因から併発していることが多く、その原因を改善すると自然に回復していくということが多いからです(病気になった葉っぱは回復しないけど新しい葉っぱには出ないので更新されるとキレイになる)。

アガベは逆に、黒斑病には弱くてこれが現れるとほぼ確実に死ぬ感じです。1株だけ、抜いて根を切ってカリカリに乾燥させたら新芽が出てきて回復しそうなコがいます。こうなる前に対策が必要と思っています。

定期的なベンレートやベニカXファインスプレーでの予防が大切とは思いますが未検証のため備忘録にとどめておきます。

まとめ

実は夏の多肉植物は水を十分にやってもそれだけでジュれることはありません。むしろ環境を適切につくってやれば真夏にドバドバ水をやっても、炎天下の直射日光に当てても元気なコは元気です。日差しに強いコ、水切れに強いコ、逆に日照りや暑さに弱いコ、水切れすると再起不能になるコ。それぞれの個性を理解して寄り添ってそれに合わせた環境づくりができれば、真に無敵な多肉植物環境ができあがるのかなぁと思います。

まぁそれができなくて毎年大量に枯らしているんですが。去年の二の舞いにはならない。でも今年もまた新しいトラブルに見舞われる。また新しい経験を積んだら、この記事に活かしていきたいと思います。

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