多肉植物にとって最も過酷な季節「夏」がやってきました。SNSでもいろんな被害報告が連日上がっていて、我が家でももちろんいくつもの多肉植物たちが旅立っていく日々。そんな我家だからこそ、お伝えできることがあります。夏にトラブルを引き起こす原因は、暑さだけではないということを。
今回はそんな「いろんなトラブルの原因」を、実際の被害の様子をみながら記録したコラムです。原因によって対策も様々だから一辺倒の対策ではダメ。ここでいろんな「原因」と「その対策」を学んで、ご自身の多肉管理の一助にしていただければと思います。
なお、あくまで「原因の記録」であって、対策としてうまく行くかどうかの結果がはっきりしていないケースもあります。今後、経験をつめたら加筆修正していく予定です。
ジュレの原因はというと、そのほとんどのケースが風通しが悪い環境です。
見分け方としては、ジュレたときの葉っぱがパツンパツンに水を吸っていること。一部の葉っぱだけジュレてて、そのジュレた葉っぱは全体がきれいにジュレてること。他の葉っぱも触るとポロポロと取れやすい、といった特徴があります(進行して芯までジュレていたり、全体が黒く変色していると手遅れなことが多いです)。
対策としては風通しを良くすること。それも日中だけでなく夜間も。日中は暑さ対策として重要なのはわかりやすいですが、夜は呼吸のために風が絶対に必要です。室内であれば24時間のサーキュレーターはマスト。屋外でも風が止むことがあるのでできれば扇風機を置いたほうが良いですが、難しい場合は棚を置いたり植物が過密にならないように工夫してください。
実はこの「ジュレ」は、芯まで進行して手の施しようがないものでない限り、葉っぱを取って風通しよくしておけばわりとちゃんと改善するので、難度はそれほど高くなく、慣れてきた我が家では「またか」程度にしか思っていません。
さらに詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
次にジュレる原因としてよくあるのが「高温障害」。その名の通り暑すぎることが原因です。その多肉植物、真夏の直射日光に当たっていませんか?
見分け方は、多くの場合は葉っぱの一部分だけが本当に「焦げた」ように変色するのが特徴です。でも「風通しが悪い」ときとほとんど違いがない場合もありますが、風通しが悪いのか、暑すぎるのかは置いている環境を見ればだいたいわかりませんか……? あとは、ホワイトパウダーやモケモケに覆われたタイプは日差しに強いので焦げにくく、逆に緑の艶々葉っぱのタイプは焦げやすいです。
あと、エケベリアなんかは傷んだ葉っぱをもげば復旧も見込めますが、球体1個で構成されるサボテンやコーデックスは一発アウト。高温障害にはより一層の警戒が必要です。
日差しが少し弱い環境に移動するか、遮光ネットを被せてください。このときの注意点は、風通しが悪くならないようにすることと、日差しが極端に弱くならないようにすることです。それと、これからの季節は日が長くなってくるので1~2週間もすれば今まで影だったところに陽が差すようにもなります。マメなチェックを怠りなく。
対策しやすく、原因もわかりやすいので難度・重要度はさほどではありません。
「夏だ!暑さが一番ヤバい!日陰に退避だ!」となると今度は逆に日照不足にやられることがあります。一概に言えない夏対策の怖さ。
日照不足に陥っているコの見分け方は、ヒョロヒョロと徒長した葉っぱ。外葉が反り返ったりするのも日照不足の前兆。なんて明らかに徒長していたらまだわかりやすいのですが、突然葉っぱの一部が変色したり根本がカリカリになってぽろっと取れたりと、根本原因が日照不足にあることがわかりにくいケースもあります。
日照は、植物にとっては「ごはん」です。栄養バランスの良いご飯を食べない人が健康を害するのと同じように、植物の栄養不足にともなっていろんな障害を起こします。ジュレだけでなく病気になったりするのも日照不足が根本原因かもしれません。
日陰においたことで弱ってきたと思ったら、少し強めの日差しに当てる必要があります。ただ、夏の直射日光は高温障害のリスクが高いのは先程勉強したばかり。なので、環境はそのままで、高輝度LEDを当てて改善するか見てみるというのも安全策としてオススメです。
意外と根本原因に気づきにくく、でも放置すると確実に弱って再起不能になるので難度・重要度は高めです。次の水不足と合わせて「カット苗での夏越し」も抜本対策としてオススメです。
「なるほど、ジュれるのは水のやりすぎね。夏に水やりはしないほうがいいのね」 というのはぶっちゃけ言うと「誤解」です。夏のトラブルは水不足が原因ということも実は多いんです。
見分け方としては、葉っぱがしおしおに……なっていればわかりやすいのですが、そのまえに突然ジュレたり枯れ込んだりするのがやっかいなところ。日照不足が疑われない環境で、日差しにも強いタイプのコが、急に葉っぱが枯れたり根本がカリカリになっていたら要注意。ジュレる前に葉っぱが柔らかくヘロヘロになったりもします。栄養不足なのでよく病気も併発します。
実は夏の間に水不足になったときに必要なのがもっとも難易度が高い対策です。水不足が軽くて元気なうちは水を吸わせればすぐ回復しますが(底面給水がおすすめです)弱ってくると水も吸うチカラも弱くなるので難度アップ。
荒療治としては、室内に取り込んで、底面給水+LED+扇風機ぶんまわし環境で回復を試みる。
逆に休眠へのソフトランディングを助けるなら、鉢の表面だけさっと濡れる程度の軽い水やりをしつつ、日照不足にならない程度の日陰(朝の光が当たる程度)に移動して様子見します。生長点回りだけでも元気になるまでは極端な水切れは避けるようにします。
なんかしわしわになってるけど水不足かな?と思ったら、水をやる前に葉裏をチラッと見てください。特にネオンブレイカーズを筆頭とした薄葉エケベリア。それはカイガラムシが襲来しているからかもしれません。
対策としてはカンタンで、いまいるヤツラを吹き飛ばして殺虫剤を散布、を1週間おきに何度か繰り返すだけ。ただ、対策はカンタンですが対策しないと緩やかな死に向かうことは止められませんので絶対に対策必須です。また、単に水不足と見間違えやすいので、気づいたら手遅れになりやすいのも要注意です。
詳しくは以前に書いたコラムをご覧ください。
日照不足や水不足、あるいは風不足によるジュレに伴ってよくあらわれるのが黒い斑点。おそらくたいていの場合は「黒斑病(こくはんびょう)」と呼ばれる細菌が原因の病気と思われます。炭疽病はカビが原因だけど近い病気。他にも似た病気はいろいろあります。
ここにいろんな病状と病名を記載していますが、ワタクシは専門家ではありませんのであくまで「〇〇病かなー?」程度のもので、病状と病名が正しく対応しているとは限りません。ご留意ください。
個人的には、エケベリアなどのいわゆる多肉植物では、黒斑病はあまり対策しません。他の原因から併発していることが多く、その原因を改善すると自然に回復していくということが多いからです(病気になった葉っぱは回復しないけど新しい葉っぱには出ないので更新されるとキレイになる)。
アガベは逆に、黒斑病には弱くてこれが現れるとほぼ確実に死ぬ感じです。1株だけ、抜いて根を切ってカリカリに乾燥させたら新芽が出てきて回復しそうなコがいます。こうなる前に対策が必要と思っています。
定期的なベンレートやベニカXファインスプレーでの予防が大切とは思いますが未検証のため備忘録にとどめておきます。
実は夏の多肉植物は水を十分にやってもそれだけでジュれることはありません。むしろ環境を適切につくってやれば真夏にドバドバ水をやっても、炎天下の直射日光に当てても元気なコは元気です。日差しに強いコ、水切れに強いコ、逆に日照りや暑さに弱いコ、水切れすると再起不能になるコ。それぞれの個性を理解して寄り添ってそれに合わせた環境づくりができれば、真に無敵な多肉植物環境ができあがるのかなぁと思います。
まぁそれができなくて毎年大量に枯らしているんですが。去年の二の舞いにはならない。でも今年もまた新しいトラブルに見舞われる。また新しい経験を積んだら、この記事に活かしていきたいと思います。