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PUKUBOOK Succulent picture book

2021.7.16 7月にやること 腐れる夏を全力で回避する多肉植物の「収穫」

多肉植物の育て方を調べてみると夏越しはたいていこんなふうに書いてあります。

- 高温多湿は避けましょう
- 雨が当たらないようにしましょう
- 真夏の直射日光を避けましょう
- 風通しの良い半日陰に置きましょう
- 水やりは月に1回か断水で

言いたいことはわかるんですが、なんかふんわりぼんやりしていません? 結局、具体的にはどうしたらいいんですか? この記事ではそんな「ふんわりメソッド」に一石を投じる、超絶具体的な夏越しテクニックを1つ紹介します。

それは「収穫」です。

「抜き苗・カット苗」で夏を越す

いきなり結論から言うと、春に大きくなり梅雨をたっぷり吸い込んで密密でプリプリになった多肉さんたちは、元気なうちにカットするか引っこ抜いて、トレイに並べて風通しの良い日陰に置いて、涼しくなる9月下旬まで放置しましょう! というテクニックです。

別の言い方をすると、植替えのために抜いた株を、2ヶ月半後に植えましょう(7月中旬→9月下旬)というイメージ。

風通しの良い日陰で保管(ちょうど下段にじゃがいもが…)

これは、初夏の健康的な鉢植えをできるだけその健康状態を維持したまま秋に持っていくためのテクニックではなく、そのままだと全滅してボロボロになるリスクがとても高いので、どうせボロボロになるくらいなら維持することは諦めて、秋に仕立て直すことを前提にしています。

この手法は、もともとは「センペルビブムの育て方」として考えていた「その年にできた新芽は、翌シーズンに植えるために切って保管しておこう」というときの「翌シーズンのために刈り取る」イメージと、ちょうどこの春にじゃがいもを育てていたんですが掘った芋をしばらくトレイに並べて乾燥させておく手法にそっくりだったことから、勝手ながら「収穫」と呼ばせていただいています。

※多肉界隈では寄植えに使うためセダムやエケベリアの新芽をカットして集めることを「収穫」と呼んだりしていますね。

センペルビブムの子株収穫

もともとこの「収穫」テクニックはこのセンペルの子株のために紹介しようとしていた手法です。センペルの子株はまったく水をやらなくても、植えなくても、平気で1年以上生きていた実績があります。むちゃくちゃ丈夫なヤツなので、自信を持って推奨します。センペルの育て方の標準メソッドにすべきと思うくらい。

2021年6月 ランナーを伸ばしてできた子株を手当たりしだいにカットしてトレイに

やり方は説明するまでもなく、出ている子株をカットしてトレイに並べておくだけです。ランナーは要らないものなので短くカットしておきます。同じ品種で束にしておいても良いかもしれません。

センペルビブムの引っこ抜き収穫

上の写真は6月上旬の子株最盛期のものですが、その後も梅雨の長雨でさらに密密ぎゅうぎゅうになってきて、ところどころ黄色い葉っぱという危険信号も出てきたので、思い切って大部分を引っこ抜きました。

BEFORE 密密
AFTER 抜き切れませんでした(笑)

引っこ抜いた株は枯れた葉っぱだけでなく痛みかけていた葉っぱもあったのですべてキレイに除去。幸い芯まで達している株はなく元気いっぱい。土や根っこは最小限を残して落としておきます。

左手前の株の黄色い葉っぱは危険信号
右が抜いた直後。枯れた葉っぱにカビが生え、黄色く傷んだ葉っぱもある危険な状態。左のように葉っぱをキレイに取り除いて通気を良くしておきます

すべての株を撤去しなかったのは、トレイがいっぱいになってしまったのと、残しておいたらどうなるのかという実験のためなので、全部撤去しても大丈夫と思います。

レアエケベリアのカット

いい感じに生長してきたカンテ E. cante ですが、あえてスパッとカットしてみました。以前に夏越しを失敗した苦い思い出もありますし、カットするなら元気そうな今のうちかと思い。なお、カンテは手元にもう一株あるのは内緒です(予備があるから大胆にもなれる、というハナシ)。

BEFORE
AFTER

他にも、痛みやすいアガボイデス系(ツヤツヤのむっちりしたエケベリア)もカットして夏越しさせるのにオススメです。

多肉植物はカット苗でどれだけ生きていけるのか?

たまに植え替えようと思って引っこ抜いていたコをそのまま忘れて放置しちゃったのに、半年どころか1年経っても生きていたなんてことがあります。また海外からカット苗をお取り寄せする場合、検疫を通すために出荷前にはカットして乾燥して箱に詰め、船に揺られて到着するまで1ヶ月以上かかるのに、開けてみたら当たり前のようにぷりぷり元気です。1株たりとも死んでません。

大丈夫。自信を持ってください。

それでも心配な方へ。カット苗、抜き苗の状態で長生きさせるコツは、活動させないことです。明るくて水気のある環境だと「よーし元気に生長するか!」と張り切ってしまうので、その逆、カラッと乾いた日陰に置いて快適な眠りにいざなってあげましょう。

以下、実際にひと夏を過ごした様子です。

8月下旬。ちょっと徒長したコがいますが元気です。
9月下旬の様子 ほぼ変わらず
9月下旬のカンテをひっくり返すと根っこが。このまま植え付けしてあげました。
12月下旬 無事に夏を乗り切って、冬により一層もりもりと元気になったカンテ

それでもまだ不安だーという方、とりあえず1本やってみましょ。ぜひ。という趣旨でガイドさせていただいているコラムもありますので合わせてご覧ください。

「今までまったく多肉植物を触ったことがありません」 そんな初心者さんが、初めて多肉植物を育ててみようとするとき。苗を買...

抜き苗越夏をしないほうがいい多肉植物

もちろん、カット苗・抜き苗で長期間生きていけない状態のものは適しません。例えばこの春に生まれたばかりの子株や線の細いセダム類。十分に水を蓄えていないすでによれよれの株。

あとは、あえて「やらなくてもいい」でいうと、夏に強いアガベやユーフォルビア、カランコエなど。

根っこが痛むと回復が遅いコーデックス類も控えたほうが良さそうです。ただこの「抜いて乾燥」テクニックはもともと球根類(チューリップとか、ね)で定番の手法なので、コーデックス類こそ活用すべきなのかもしれません(が経験がないので責任持てません……)。

そもそも「全滅を避ける」ことを目的にしたテクニックなので、手持ちのものをすべてやるというよりは、特に大事な、希少性のある株を、やるものとやらないものでどっちかが生き残ってくれればいいというリスク分散の考え方でやるくらいがいいかと思います。

まとめ

夏越しに大失敗して多肉畑が腐海に飲み込まれた…なんて経験をされていませんか。はい、それはワタクシです。
そんなワタクシだからこそ考え至った「収穫」というテクニック。言うなれば、多肉植物を強制的に休眠させちゃおうってこと。きっとうまくいくはずです。

2020年7月 密密のまま放ったらかしでほぼ全滅したセンペル……。今年こそはこんな事態にならないようガンバリマス!

もともとは「センペルビブムの育て方」として考えていた手法でしたが、育て方っていうのにいきなり最終章になっちゃうし、他の多肉植物にも使えると思い、急遽そこだけシングルカットして先行リリースさせていただきました(そのセンペルビブムの育て方はまた秋のベストシーズンにお届けしようと思います)。また今回引っこ抜いた株たちが夏の終りにどうなったかの結論をうけて、また来年の夏用にこの記事も加筆しておこうと思います。

街を歩くと、いや街を歩かずネットをウロウロしていても、そこはクリスマス一色。寒くなってくると園芸界隈も自然と静かにな...

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