夏休みの自由研究企画第2弾。今回は堅苦しいハナシはなしで、シンプルに「育て方」の実験と結果の発表回。テーマは今最もホットな「夏越し」です(ホントは夏前に発表できたけどシンプルに筆が遅くてスミマセン…...)。
先に言っておきます。夏越しと言えば「涼しいところで、風通し良く」が基本であり、ほぼすべてです。もちろん水やりをどのくらいやるかは品種や環境によってかなりケースバイケースだし、風通しは大型業務用扇風機レベルが必要かもしれないし、日本じゃ屋外に「涼しい」場所は無いかもしれない。それが夏越しを難しくしている要因なんだけど……。
今回はそういう「地域や家や個人の感覚といったきめ細やかな諸条件」がほぼない、どんな家でも、誰でも同じようにできる究極の夏越しテクニック をご紹介します。
「多肉植物は砂漠の植物」というイメージがあるからか、こういうとよく驚かれます。「多肉植物は日本の夏の暑さが苦手」と。
なぜかというとまず、日本の夏は「蒸し暑い」こと。砂漠だろうとどこだろうと乾燥した気候に適応している植物なので、日本のように雨が多く湿度の高い夏=カビや雑菌がむちゃくちゃ元気になる環境で、彼らに対する十分な抵抗力が備わっていません。
次にもっと意外なのが、日本の夏は「砂漠より暑い」こと。砂漠砂漠と言いますが、多くの砂漠は暑いから砂漠になってるんじゃなくて乾燥しているから砂漠になります。つまり砂漠と言っても意外と暑くない。それに多くの多肉植物の故郷であるメキシコや南米は標高が高く、南アフリカは緯度が高い(南極に近い)こともあって、暑い夏でも25℃~30℃とかなり快適な気候です。熱帯のイメージがあるブラジルのリオデジャネイロですら最高気温は30℃くらい。近年の気温上昇もあって、日本の蒸し暑さは東南アジアの亜熱帯気候と同等とも言われています(そのうち日本の植生はジャングルのそれになるのかもしれません)。
というわけで、多くの多肉植物は日本の夏にさらされると耐えきれなくて枯れちゃいます。アエオニウムやエケベリアはほぼ全滅。ハオルチアは比較的強く、アガベはかなり強い方ですが彼らだって無敵ではありません。何かしらの対策が必須。ざっくりまとめると大きく2通りの方法があります。
多くの方にオススメなのがこれ。最も確実な方法は、初夏の元気なうちに元気な穂先をカットして、風通しの良い日陰に置いておく方法(以前に紹介した記事を貼っておきます)。数が少ない場合は鉢植えのまま明るい室内に置いておくのもありです。ポイントは日差しには当てないが真っ暗にはしないこと。休眠期とは言え暗すぎると徒長してくるので、徒長しないギリギリの明るさを狙ってください。
断水管理の最大のデメリットはみすぼらしい姿になっちゃうこと。しわしわになるのはもちろん、蓄えた下葉の水を使うので多くの下葉がカリカリになり健康な部分が小さくなってしまいます。夏に縮ませず、秋からも健康な状態でスタートするには、夏も完全に断水せず健康な状態を維持する必要があります。となると、直射日光は避けつつも、休眠期より徒長しやすいのでより明るいところ、水をやるからすぐ乾くようにより風通しの良いところに置く。水やりの頻度は……環境による。って、それができないから夏越しに失敗するのでは?(汗)正直、難易度は高いです。
休眠させず健康を維持する方法で、もっと誰にでも簡単に間違いなくできる方法はないのか? と考えてまず行き着いたのがエアコンですが、やってみたけど意外と難しかった。何より電気代が月3~4万円とかかってくるのでとても「誰にでも」はオススメできません。もっと冷気をぴっちり密閉できる断熱性の高い部屋があれば良いんだけど。もっと狭くていいから。ギリギリ植物だけ入ればいいから……。
って、あるやん。「冷蔵庫」ですよ。
というわけで、実験的に冷蔵庫に多肉植物を突っ込んでみたのが昨年公開したこちらの記事。
他にもコキリノさんが実践してレポートしてくれています。
結論としては、先の「休眠させる方法」で「ダメージを最小限にする」方法としてはかなり優秀です。注意点としては、野菜室でも温度が低すぎるため品種によっては冷害で駄目になるリスクがあることと、暗いし水やりもできないため品種にもよるけど1~3ヶ月を超える長期保存には向かないということ。
いや、ちゃうねん。「健康な状態を維持」したまま、「長期間保存できる」方法を探しているわけですよ。それを妨げている要因は2つ。暗いことと、冷えすぎること。ならちょっと工夫してみますか。
暗い環境で植物を育てると言えば「LEDライト」。これを冷蔵庫の中に入れてみます。冷蔵庫は密閉されていて配線を通せないのでドアの隙間からニョロリと出すという醜い配線でご容赦ください。冷蔵庫の外にタイマーコンセントを入れて1日の半分だけ点灯するようにします。
次の問題は冷えすぎること。冷蔵庫には温度調整機能がついているものが多く、実際にこれを使うと最高で「12℃」くらいまで高めの設定にすることができました。ただ、冷蔵庫の温度調整機能が優秀すぎる。ホントに1日中ずっと12℃。1時間平均で±1℃もブレない。そもそも12℃というのも植物育成には低すぎるし、年中温度が一定なんていう自然環境は冥王星くらいにしかありませんよね。
この問題はLED電球を設置していてひらめきました。冷蔵庫本体にもタイマーコンセントを付けようと。しかもアナログのタイマーコンセントは15分単位で細かくON/OFFできる。この間隔をうまいこと調整すると、1日の理想的な温度変化をうまく再現できるのではないか、と。
以下が実際に設定完了した温度変化グラフです。16℃~27℃くらい。なかなか理想的な環境にできました。
※後日そのタイマー設定の写真も載せます……。
最後の問題は水。中が見えない冷蔵庫を開いて水やりするのって難しいんですよね。けど冷蔵庫中には水源があります。冷却板は冷えると氷が付くくらい冷えるけど、OFFになるとそれが溶けて滴ってきます。これをうまいこと回収できれば良いのでは?
というわけで、鉢の下に深めのトレイを用意。冷却板の結露がうまいことそのトレイに入るように傾きを調整し、他の容器には紐を垂らして水が移っていくようにしました。これで「常に満水」の状態が保たれるようになり、水やりが不要に。
庫内は密閉されているので、冷却板に結露する▶トレイが回収する▶植物が吸収する▶蒸散する▶結露する……とほぼ100%循環していると思うんですよね。それで湿度が高すぎるのは植物が蒸散する量が多いのか、それとも外から入ってくるのか。もしかしたら庫内に除湿剤を置いたほうが良いかもしれないけど、その量はまた難しい調整が必要かもしれません。
最初はうまく行っていることに嬉々として頻繁に覗いていましたが、日常に忙殺されていくうちにその頻度が減り、ついに長期間1回も開けないなんて状態になっていました。そういえば冷蔵庫どうなった? と思って久しぶりに開けてみたのが、最初に入れてから1年以上。しっかりと1年間、本当に冷蔵庫に入れっぱなしで放置した結果です。
というわけで今回は1年がかりという時間で裏付けされた「実際にやってみた」シリーズ。この環境は温度や光のコントロールが簡単なので多肉植物としてホントにベストな環境はどんな環境か、そしてその環境ではどんな姿になるのか?を追求していくと面白いことになるかもなーと思っています。また続報をご期待ください。