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PUKUBOOK Succulent picture book

2021.10.8 紅葉は冬のイベントじゃない! 秋からの準備が欠かせない「色鮮やかな紅葉」にする3つのポイント

日中でも30度を超える日が(ほぼ)なくなり過ごしやすい季節になってきました。秋晴れが続き、屋外での作業も捗るまさにガーデニング日和な毎日。ふと多肉ガーデンに目をやると、夏真っ盛りだったころより、少し大人びたカラーに染まってきていることに気づきます。今日はそんな「多肉植物の紅葉」のお話。ド定番ですが、他所さんよりもちょっと掘り下げます。

紅葉する仕組みと理由

ブロンズ姫 2月 冬カラー
ブロンズ姫 6月 夏カラー

紅葉と聞くと、11月ごろの秋の山々を思い浮かべます。緑一色だった葉っぱが赤や黄色にお色直し。ほとんどすべての木々が一斉に色を変え、ほんの数週間で葉っぱを落として冬支度する様は、とてもダイナミックで、太古の昔から自然の偉大さや美しさ、儚さや再生への期待を人々に抱かせてきました。

ほとんどの多肉植物は多年草で、冬になったからといって落葉はしませんが、多くの多肉植物は秋の木々と同様に「紅葉」する仕組みがあります。理由や目的もほぼ同じで、

1. 余分なエネルギーを使わないように効率が悪くなってきた栄養生産工場を閉鎖する「養分回収」
2. 強い光から組織を守る「日よけ」
3. 寒くなっても凍らない「凍結防止」

こうした目的から、植物は、栄養生産工場である葉緑素(クロロフィルという緑色の色素を持つ)を分解し、もともとあったカロテノイドという黄色い色素や、新しく作ったアントシアニンという赤い色素が目立ってきて色が変わっていきます。

基本的な紅葉のしくみの解説はキヤノンサイエンスラボ・キッズ 「紅葉のしくみ」がわかりやすいです。

色鮮やかな紅葉にするには

ネオンブレイカーズ 3月 ピークカラー
ネオンブレイカーズ 6月 夏カラー
ネオンブレイカーズ 2月 冬カラー

先程の「目的」からも導き出されますが、色鮮やかな紅葉にするためのポイントは以下の3つと言われています。

1. 日光によく当てる
2. 寒さに当てる
3. 水や肥料を控える

一部アガベも紅葉します。冬になってから日照と水と肥料でどう変わるか実験したもの。左から、日陰で水と肥料多め/日向で水と肥料多め/日向で水と肥料控えめ

でもちょっと待って。それっていつから? 寒くなってきたら外に出せばいいの? そう。このポイントだけだとちょっと不親切。実はこの3つのポイントはすべて、寒くなってくる前の秋からの準備が不可欠です。なので本当に伝えたいポイントは次の3つ。

1. 今から日光に十分当てて、たくさんの糖分を作って蓄えておく
2. 今からずっと屋外に出しておき、少しずつ寒さに慣れさせる
3. 今の時期にしっかりと肥料を与えて 健康的に生長させておく

それぞれ詳しく解説してみます。

今から日光に十分当てて、たくさんの糖分を作って蓄えておく

真冬の紅葉絶頂期に日光に当てることは必要不可欠ですが、それはどちらかというとストレスと与えて無理やり色を出させているイメージです。そこで色素を作るためのエネルギーはというと、それ以前に蓄えられた栄養が元になっています。なので、秋のうちにしっかりと栄養を蓄えておくことが冬の紅葉にとって重要になってきます。

今からの季節は日光にガンガン当てても溶けたり傷んだりするリスクがほとんどありません。うちでは1日4~6時間くらい直射日光があたる日当たりの良いところに置いています(夏の間は日陰にあったコは徐々に慣らしていきます)。

今からずっと屋外に出しておき、少しずつ寒さに慣れさせる
セダム 玉葉。透明感のある赤。葉緑素がほとんどなくなって実現できる色。

絵の具でいろんな色を混ぜたところを想像していただきたいのですが、絵の具は混ぜれば混ぜるほど暗く重く汚い色になる性質があります(これは絵画の宿命で、昔の西洋絵画がどれも重厚な色彩な理由のひとつ。印象派がその宿命を打ち破りました)。ということは逆に、鮮やかな色になるには余分な色を減らす必要があって、その余分な色は「緑色」。つまりクロロフィルを含んだ葉緑素。葉緑素を減らすには、十分に寒くなって「もう光合成は要らない、休眠しよう」と思っていただく必要があるので、何はなくとも「寒さに十分当てる」ことが鮮やかで透明感のある紅葉に欠かせません

ただ、寒くなってから外に出せば良いわけじゃなくて、長い期間をかけて徐々に寒くなっていくことが重要です。理由は2つ。1つは植物が「冬になった。休もう」と思うには長い期間が必要だから。今日急に寒くなったからといって、急に休眠することはできません。もう1つは寒さ対策ができていないうちに寒くなると凍結して枯れちゃうから。

植物は凍結すると枯れます。これは硬い細胞壁を、体積が膨らんだ氷が突き破って壊しちゃうからです(ニンジンやジャガイモをそのまま冷凍庫にいれて解凍してみてください)。氷点下でも植物が凍結しないのは、長い時間をかけて体内の糖分濃度を上げているから(理科の実験が続きますが、濃い砂糖水や塩水を冷凍庫に入れてみてください)。

その植物本来のスピードで準備させるためにも、今からずっと屋外に出しておきましょう。

今の時期にしっかりと肥料を与えて健康的に成長させておく
秋の植え替えで欠かさない「施肥」。適量は真ん中くらい。

理由は「日光に当てる」と同じです。冬は植物にとってストレスが多いのに栄養が作れない厳しい季節なので、秋にしっかり健康的に生長していただきたいからです。

でも「紅葉させるには水と肥料を控えましょう」って言ってませんでした? そう。紅葉の絶頂期にはしっかり休眠させるために肥料は控えたほうが良いのですが、だから逆に、今からの季節はしっかり与えましょうということを強調しておきたいです。肥料を切るのは冬になってからで大丈夫(なので大粒の緩効性肥料よりは小粒、もっと細やかに管理したいなら液肥がオススメ)。水と同様、肥料も緩急メリハリつけるといい感じです。

紅葉とはちょっとちがう紅葉

アロエ千代田錦の日焼け。日のあたってない裏が緑色なのが「日焼け」である証拠。

多肉植物の色の変化には「紅葉」とはちょっと性質の違う変化がもう1つあります。それが「日焼け」。これは文字通り、強すぎる日差しから身を守るための対策で、冬の紅葉とは次のような違いがあります。

- 季節を問わずいつでも起こる
- 陽のあたっている面だけで色が変わる
- 表面的な変化であること
- 日差しを避けるとすぐに色が緑色に戻ること
- 色が「枯れ葉のような茶系」であること

さらに日差しが強く体内温度が高くなると高温障害で葉の一部が焦げ付いてしまう「葉焼け」になってしまい、もとに戻らないので注意が必要です。

カリッカリに干からびたように見えるハオルチア。大丈夫。この色は「日焼け」。
水やりを再開して1週間。ちょっと時間がかかりましたが復活してきました。

特に、アロエやハオルチアで顕著に見られますが、エケベリアでも見られることがあります。夏のハオルチアは行き過ぎると完全に枯れ木のようなビジュアルになってしまいますが、アロエの中には赤やオレンジに美しく色づくものもあるし、冬の紅葉にもこの「日焼け」が一因になって色鮮やかになっていることもあるので、必ずしも悪いことではありません。ただ、こうした別の理由で色づくことがあるということは知っておいて損はありません。

紅葉が美しい品種

最後に、紅葉が美しい定番の品種をピックアップ。特に夏カラーとのコントラストが大きく、表情の変化が楽しいものを紹介します。

セダム オーロラ
クラッスラ 火祭り
エケベリア オリオン
エケベリア ネオンブレーカーズ
カランコエ デザートローズ
エケベリア 高砂の翁
セダム パープルヘイズ
クラッスラ ロゲルシー
グラプトセダム ブロンズ姫
ハオルチア レイトニー ほとんどのハオルチアは冬でもあまり色が変わりませんがレイトニーは真っ赤になる......というウワサ(まだ見たことない)

まとめ

紅葉の季節というとだいたい11月くらいから始まって、絶頂期は2月や3月。けどその準備にはちょうど今の秋口からスタートすべし!と、ちょっと早めに紅葉特集を組んでみました。いろいろ書きましたが、一言でまとめるとこんなところです。

一番の生長期の秋に、しっかり元気で健康な株に育てましょう!

はい。言うまでもないことです(^^)

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