図鑑の説明文を書いていると、「〇〇系のハイブリッド」と表現することがよくあります。もちろん、それは単純に「〇〇っぽいから」なのですが、実はこの表現、明確に定義されたものではないんですよね。つまり、人によって解釈が違う可能性があるということ。
そこで今回は、よく登場する「〇〇系」の代表的な品種をピックアップし、それぞれの特徴や使われ方を改めて整理してみることにしました。ちょっとしたカタログ&用語辞典的な内容として、あらためてチェックしてみましょう!
あくまでPUKUBOOKにおける「〇〇系」はこういうもの、と言ったスタンスです。
ではどうぞ!
例えば「〇〇系ハイブリッド」と聞くと、厳密には「〇〇」が親や祖先にいて、その血を受け継いでいるハイブリッドのことを指すのでは? と思うかもしれません。だったら「〇〇ハイブリッド」や「〇〇の血統」とはっきり言えばいいはず。でも、そう言わずにあえて「〇〇系」と表現するというときには、血統そのものはあまり重視していない というニュアンスが見え隠れしています。
さらに、たとえ直系の子孫だったとしても、「〇〇」の特徴がほとんど現れていなければ「〇〇系」というワードは使われません。
つまり、「〇〇系」という言葉が指しているのは、血筋の正しさではなく、単に「〇〇っぽい」とか「〇〇の特徴を持っている」といった感覚的な分類、ということですね。
よく目にする「〇〇系」ランキングのたぶん堂々1位が「エレガンス系」。透明感のあるエッジ、明るい葉色、よく群生するのがまずその代表的な特徴で、次にやや扁平なロゼット、薄く柔らかめの葉っぱ、薄ピンクの小さな花なども出てくると「まさにエレガンス」といった雰囲気になります。
「桃太郎」をイメージしていただくとわかりやすいかと思いますが、「コロラータ系」は、マットなブルーグレイの葉っぱの先をほんのりピンクに染めつつ、根もと太く先が細い「槍型」の力強いフォルムがチャームポイント。コロラータの原種より桃太郎のほうがコロラータらしいイメージです。そもそもヨーロッパでは「コロラータと言えば桃太郎」と認識されているようですし。
ブルーバードはそのカラーはまさしくコロラータ系ですが、生態的特徴は代表的なピーコッキー系(コロラータとピーコッキーのハイブリッドという通説の裏付けですね)。
マットなダスティグレーのカラリング、先がツンととがった短く堅い葉っぱ、やや開いた薔薇のようなフォルム。「リラシナ系」の多くは他と味間違えることがないくらい「リラシナらしさ」をよく体現しています。個人的に好きなので、ついつい集めてしまいます。
ローラも血統からするとリラシナ系ですが、ローラそのものがとても有名なこともあってあまりリラシナ系とは言わないかも。
人によってはリラシナの「分化しやすい」という生態的特徴から「リラシナ系」をイメージされるかもしれません。
ツンと尖ったツヤッツヤの葉っぱを、底抜けに明るいグリーンと鮮やかな赤系で彩るのが「アガボイデス系」。ツヤツヤだったらとりあえずアガボイデス系と言っちゃっても良いかもしれない雰囲気。多肉植物の中でも特に人気の高い系統のひとつ。
まるで多面体のようにカクカクしたフォルム(に見えるウォーターマーク)が「トリマネンシス系」。葉っぱは細くツンツンしていることがおおく、葉にはほんのりとしたパウダー感があり、柔らかな発色を見せることが多い。ウォーターマークが特徴といえば「シャンペーン系」や「モンロー系」もあるので要注意。パキフィツムの千代田の松に似ているのでその系統もまとめて「トリマネンシス系」とされちゃいがち(あまり明確に区別する必要性もないかなーと)。
まるでドレスの裾のように、葉のエッジが波打つシャビアナ系。葉は比較的薄めでやわらかい。色合いは淡いラベンダーやピンク系が多く、エレガントで個性的な姿が魅力的。フリル系の中でもそのフリルが小さいことが特徴で、さらにハイブリッドになるとフリルがなくなりパープル系のカラーを持って「シャビアナ系」ということも。カイガラムシに弱いという負の特徴もシャビアナ系らしさ?
エケベリア界トップクラスに厚いホワイトパウダーをまとい、シルキーな質感を持つ「ラウイ」。その特徴から「ラウイ系」は輝くホワイトいパウダーが第一条件。さらにむっちり肉厚の葉っぱであれば間違いありません。
槍の剣先のようにシャープで直線的なフォルムと、輝くホワイトパウダーで、どこか洗練された印象を持つ「ピーコッキー系」。夏に葉っぱが下がって「スカート」になるのも大きな特徴で、多くのハイブリッドにそれが受け継がれています。
ツヤ感のあるディープグリーンの葉に赤黒いブラッディスポットを描き、まるでブロンズ像のように植物離れしたメタリックな質感が特徴的なこの系統。葉の質感は硬めで、エッジに赤みがさすことが多い。もともとはパーパソルム系が主流だったけど、ロンギシマもハイブリッドになるとあまり区別しにくく同系列扱い(ロンギシマのほうが茎が長くロゼットが薄い感じではあります)。
エレガンス系の繊細な透明感、コロラータ系のニュアンスカラー、リラシナ系のかっちりフォルム、アガボイデス系のツヤ感……。こうして写真付きでまとめてみると、ひとことで「〇〇系」と言い表す背景に、それなりのしっかりとした特徴や個性があることが見えてきたのではないでしょうか?
もちろん、これはあくまでPUKUBOOKにおける「〇〇系」の解釈。ただ、このPUKUBOOKで「〇〇系」という表現に出会ったら、この記事に立ち返ってみていただけると理解も深まるのではないでしょうか。
品種の魅力を知る手がかりとして、これからも「〇〇系」を楽しんでみてください!