この時期のSNSタイムラインを眺めていると「屋内に退避だ!」とか「不織布被せて完全防備!」とか多肉植物は観賞するのを諦めて仕舞い込むムードが漂ってきます……。もちろん多くの多肉植物は暖かいエリアにお住まいだから寒い冬はケアが必要。だから冬に元気に観賞させてくれる多肉植物なんて無いですよね……。
なんて思いました? あります。冬に、いや冬だからこそ、美しく咲き誇る多肉植物が。
今日はそんなアエオニウムのご紹介です。
多肉植物というと鉢から上向きに花が咲いたようなフォルム(ロゼット)なコが多い中、ニョキッと1本の茎を伸ばしたその先に花を咲かせるように葉っぱを広げた個性的なコを見かけます。その姿はまるでひまわりのよう。それがアエオニウムです。
アエオニウムが個性的なのはそのお住まいが独特だからで、そこはアフリカ大陸の北西に浮かぶカナリア諸島という離れ小島。特殊な気象条件で夏の間はほとんど雨が降らず乾燥しているので乾燥に耐えられるベンケイソウの仲間が生き残り、枝を伸ばした先にロゼットを広げる独特の姿に進化しました。品種にもよりますが50~60cmくらいに生長する大型の多肉植物です。
雨は12月にピークを迎えるため冬から春のはじめに生長する冬型。春のはじめに花芽を伸ばしたわわなブーケを魅せてくれます。花が咲くと株が枯れるというウワサがありますが、株全体がが枯れることはありません。冬の寒さには強い半面、夏の暑さには弱く、落葉して新芽だけになって休眠する……だけならいいけど株自体がダメになってしまうことも多いです。いかにして夏越しするかがポイント。
アエオニウムという属名は古いギリシャ語で「不老/永遠」を意味する aionios から来ています。
カナリア諸島はアフリカ大陸の北西部、モロッコと西サハラ対岸の大西洋上に浮かぶ島々(行政的にはスペインの一部)。年間を通して気温の変化が穏やかでとても過ごしやすくリゾート地になっています。降水量は11月~3月の冬に集中していて(それでも月4日程度)夏はカラッカラ(7月は1日も雨が降らない)。これが冬型多肉植物が誕生する理由。気温は夏の8月で最高28℃~最低20℃、冬の2月で最高20℃~最低12℃くらい。
って、年間の最低気温12℃? そんな寒さを知らないエリアの多肉植物が日本の冬を越せるの?! と思ってしまいます(実際に耐寒温度は10℃と記載している文献もあります)が、実際にアエオニウムは日本で屋外に置いていても寒さによく耐えてくれます。品種にもよるかと思いますが、大体0℃~-3℃くらいまでいけます。
ただ、バケツに張った水に薄く氷が張った夜は耐えられて、ちょっと厚めの氷が張った夜はカチンコチンに凍結したコもいたので、氷点下予報は避けたほうが良さそうです。
※12℃は「月平均」というのもありますね。実際過去の天気を見ると市街地で5℃まで下がった日もあります。山の上だと氷点下もあるのかも。
おさらいします。季節ごとのサイクルは、冬に元気で、春に花が咲き、夏は落葉して休眠する。では実際に写真で振り返ってみましょう。
このように、冬は鮮やかつややかなグリーンカラーで、初夏から秋にかけて紅葉するという、一般的な多肉植物と真逆の季節サイクルです。
アエオニウムの特集なのでその特徴をはっきりさせるため、あえて「近い属」との違いをまとめてみます。
葉っぱがキュッと筒状にまとまる姿が個性的なコたち。ただ、近年はアエオニウム属に編入されています。
アエオニウムと生態もとても近いのがロスラリアやセンペルビウム。祖先が共通で、かたやヨーロッパ山間部の極寒地帯で、かたや離島で進化した感じ。葉っぱの質感と、葉牡丹のようにロゼットの真ん中からドバっと花を咲かせるのと、その花のカタチがそっくりです。
同じベンケイソウ科の中ではかろうじて近いといえば近いですが、生息エリアも増え方も見た目も違うので一緒に植えるのは控えたほうが良いかなーと思う境界線。ほとんどのエケベリアは木立しないので高さが違ってきちゃうのも理由の一つ。逆に木立ちするパリダやグストは姿もカタチもよく似ているので相性いいけど。
血縁も生態も全く異なるグループですが、「寒さに強い」というのと「ヨーロピアンガーデンで活躍している」というポイントで園芸的にジャンルが近いグループ。一緒にお庭を飾ってあげてください。
血縁的にも生態的にもぜんぜん違うグループなんですが、極端に耐寒性がないアロエ以外は寄せて植えても問題ない程度に生態が似ていて、木立ちしたアエオニウムとボリューム的に負けないので、寄植えや並べて飾るのに相性抜群です。
よく見かける定番種。
定番種の多くは斑入りですが、ここでは近年リリースされたホットな斑入りタイプ(要するにお高めの)を紹介します。
アエオニウムというと30cmを超える大きなものが主流ですが、10cm程度のコンパクトな品種もあります。
アエオニウムは日本での人気はトップクラスというわけには行かず(熱烈な愛好家が多くいらっしゃいます!)、海外で盛んに行われている品種改良と新品種の情報が入ってこないので全然追いついてない感が、今回こうして特集していて明るみになってきました。
追いついてないだと? それをやるのがPUKUBOOKの役割じゃないのか! と認識を改めましたので、2023年は手始めに、日本一のアエオニウム図鑑を完成させていきたい所存でございます。
どうぞよろしくお願いします。
.