「AIの進化がここまで来た!」「ついに60億人だれもがアーティストになれる時代がやってきた!」とこのところ世間で話題沸騰中のアート生成AIサービス。その実力は現時点で本当に目を瞠るほどで、これがまだまだ進化途上の出たてのサービスというんだから末恐ろしいとしか言いようがありません。今回はその先端サービス「Midjourney」に、多肉植物LOVERらしく「多肉植物アート」を描いていただきました。
短い間ですが得られたノウハウも全部惜しみなく出します。多肉植物関係なく、これからAIアートを始めたいという方の参考にしていただければ幸いです。
ここで描いている結果はMidjourneyのテスト版を利用したものが多いため、同じ呪文で同様の結果が得られる保証はありません。そもそも進化スピード著しいAIの世界だし、同じ呪文でもかなり結果が異なる気まぐれ屋さんなので、試行錯誤するヒント程度と思っていただければと思います。
Midjourneyとは
今話題沸騰中の「文章から絵を描いてくれるAI」。基礎的なテクノロジーは2021年1月ごろからスタートしていたけど、2022年7月に誰もが利用できるサービスを開始。1ヶ月も経たないうちに世界中に広まって大ブレイク中の、本当に生まれたばかりの新サービスです。
Midjourney
始めたい方は、こちらのブログを参考にしてみてください。取っ掛かりにクセはありますが、数ステップで開始できるのでやってみればカンタンです。
Midjourneyとは?話題の画像生成AIの使い方・初心者向けのコツも徹底解説!
料金は、無料トライアルで25回まで(試行錯誤するとして5枚程度)、$10/月で200回、$30/月で無制限です。ワタクシは利用期間10日あまりで1000回を超えているので、ガンガン使いたい方は迷わず$30プランがおすすめ。コツを掴んだら来月からは$10かな、といったところ。
ちなみに同様のサービスに2022年8月に公開された Stable Diffusion というものもあり、クオリティも高く、使い方によっては完全に無料(それなりの知識とゲーミングPCが必要)なので、興味ある方はこちらもチェックしてみてください。
Stable Diffusion(wikipedia)
Midjourneyが理解している多肉植物
まずは具体的な品種名だけを指定して自由に描いてもらいます。Midjourneyがその品種をどれだけ理解しているかのテストですね。ここで良い感じの結果になる種名をこのあとの応用編で使っていきます。
属まではバッチリ
Echeveria cante --test --ar 16:10
Echeveria secunda --test --ar 16:10
エケベリアの理解度が抜群ですね。ただ品種までは特定できない感じ。セクンダとカンテがちょうど逆っぽいですが、これはたまたまこんな結果が出てきただけ。
Yucca brevifolia --test --ar 16:10
Agave filifera --test --ar 16:10
ユッカとアガベ。雰囲気はバッチリです。ただアガベはどんな品種でもこの怪しげな細いトゲでチタノタのようなイカついトゲは出てきませんし、ユッカは雰囲気は合ってるけどこんな雪男100%なユッカは存在しません(サボテンとごっちゃになってる感)。
Haworthia obutusa --test --ar 16:10
Tillandsia xerographica --test --ar 16:10
ハオルチアとチランジア。これも属としての雰囲気は良い感じだけど、品種としては間違い。
植物は植物だけど違うもの
Sansevieria trifasciata --test --ar 16:10
惜しい。雰囲気はいいけどこんなサンセベリアは存在しない。
Pachypodium rosulatum ssp. gracilius --test --ar 16:10
Adenium arabicum --test --ar 16:10
完全に違うものと誤解している例。すごく「和」な雰囲気なんだけど、Midjourneyさん的には根塊植物は盆栽と同じ世界観ということでしょうか。
未知の植物
Sedum dasyphyllum --test --ar 16:10
Euphorbia gorgonis --test --ar 16:10
地球上に存在しない未知の生命が爆誕(元の品種の雰囲気を留めているところがいじらしい)。
アートの世界へ
Pachypodium gracilius --test --ar 16:10
前衛アーティストの登場。何を描こうとしたのかまったくわかりません。
ちょっとしたコツ:関連ワードで誘導する
描けそうで描けなかった「虹の玉」やメジャーすぎるから絶対覚えていてくれそうな「トリファスキアータ」は、それを連想させる関連ワードでうまいこと誘導してあげると良い感じになることがあります。コツとしては、その植物自体ではなくその植物が写り込んでいるシーンを教えてあげる感じですね。
Sedum rubrotinctum in a pot gathering with colorful succulents --test --ar 16:10
Sansevieria trifasciata in modern white interior plants --test --ar 16:10
パウル・クレーが描く多肉植物
かわいくポップな抽象画で有名な「パウル・クレー」。サボテンのようなわかりやすいカタチと相性が良くてかわいい作例がたくさんできました。
gathering lithops in style of Paul Klee, white background --q 2 --s 3600 --ar 16:10
cactus in the desert in the style of paul klee --ar 16:10
cactus in the desert in the style of paul klee , white background --ar 16:10
lithops in style of Paul Klee, white background, logo --ar 16:10
a white dressed girl standing with desert plants in blue sky in painting of Paul Klee --ar 225:100
ただ、最新のバージョンだと技法を極めすぎたのか抽象的すぎて何を描いているのかよくわからない結果に……。
echeveria cante in style of Paul Klee --test --ar 16:10
葛飾北斎とアガベ
決して出会うことなかった北斎とアガベ。でも出会っていたら?もしかしたらこんな浮世絵が誕生していたのかも知れません。
agave americana in style of ukiyo-e by Hokusai Katsushika --test --ar 16:10
こうした「無理のある主題」はAIも頭を抱えるのか、良い感じの作例がなかなか生まれません。今回はいろいろ試したけどこの1枚だけでご容赦ください。
リアルフォトレンダリング
現行バージョンのMidjourneyは「絵画」が得意分野ですが、Stable Diffusion は「写真」が得意なのが大きな違い。Midjourneyも新しいバージョンではフォトリアリスティックな結果も出てくるようになりました(と言ってもディテールはまだまだ絵画っぽいです)。
realistic photo of gathering of cute succulents, crepuscular rays, white background, in the bright light, holy, religious, volumetric lighting, very detailed, cinematic, hyperrealism, octane render, blender, unreal engine, indiana jones, tomb raider, playstation5 --ar 16:10 --test --ar 16:10
realistic photo of pachypodium, blue sky, white background, in the bright light, greek garden, volumetric lighting, very detailed, cinematic, hyperrealism, octane render, blender, unreal engine, playstation5 --test --ar 16:10
modern green house, kew gardens, agave and cactus, lots of plants, expensive, octane render, blender, unreal engine, playstation5 --test --ar 16:10
rainbow::1.8 colored::1.5 kitchen with utensils on walls and many succulent plants huge window with botanic outside, blender, unreal engine, playstation5 --test --ar 16:10
agave americana with Ultra realistic cinematic diamond::1.8, blue sky, white background, very detailed, hyperrealism, octane render, blender, unreal engine, playstation5 --test --ar 16:10
gold pendant of echeveria cante with lots of ruby --test --ar 16:10
hyper realistic art nouveau brass echeveria cante ornate detailed jewelry --ar 16:10 --test
アルフォンス・ミュシャ
アールヌーボーの代表的絵師アルフォンス・ミュシャはボタニカルをふんだんに取り入れたイラストレーションが得意で、アガベととても相性が良いですね。本当にこんなミュシャのイラストがありそうです。
agave in style of beautiful art nouveau arched panel by Alphonse Mucha --ar 16:10 --beta
agave in style of beautiful art nouveau arched panel by Alphonse Mucha --ar 16:10 --beta
agave in style of beautiful art nouveau arched panel by Alphonse Mucha --ar 16:10 --test --ar 16:10
goddess with agave in style of beautiful art nouveau arched panel by Alphonse Mucha --ar 16:10 --test
goddess with agave in style of beautiful art nouveau arched panel by Alphonse Mucha --ar 16:10 --test
AIも覚えた KAWAII イラスト
現行バージョンの Midjourney ではなかなかうまく描けないのが、日本のアニメ風イラスト。けど、Stable Diffusion や新しい Midjourney ではついにその画風を覚えて(雰囲気だけは)プロ顔負けのクオリティで描けるようになりました。加えてディテールの再現性も申し分なかったエケベリアと組み合わせるとこんな作品が生み出されます。ちょっと呪文の詠唱が長くてややこしくなりますが、工夫しがいのあるテーマです。
smiling anime girl with Echeveria cante and gathering succulents, brown wavy hair, frilled dress, disney prinsess, shinkai makoto, hayao miyazaki, violet evergarden, kyoto animation --test --ar 16:10
smiling anime girl with Echeveria cante and gathering succulents, brown wavy hair, frilled dress, disney prinsess, shinkai makoto, hayao miyazaki, violet evergarden, kyoto animation --test --ar 16:10
smiling anime girl with Echeveria cante and gathering succulents, ginger hair, apron dress, pixiv girls illustration, disney prinsess, shinkai makoto, hayao miyazaki, violet evergarden, kyoto animation --test --ar 1:2 --ar 16:10 --upbeta
基本的に表情が苦手なMidjourney 。もちろん試行錯誤を繰り返すと良い感じの表情を描いてくれることもありますが、例えばアニメ顔生成AI「waifulabs」で出来た顔を合成するという手もありそうです。ちょっとコピペ精度が荒いけどこんな雰囲気になります。
smiling anime girl with Echeveria cante and gathering succulents, brown wavy hair, frilled dress, disney prinsess, shinkai makoto, hayao miyazaki, violet evergarden, kyoto animation --test --ar 16:10
smiling anime girl with Echeveria cante and gathering succulents, ginger hair, frilled dress, pixiv girls illustration, disney prinsess, shinkai makoto, hayao miyazaki, violet evergarden, kyoto animation --test
その他の注目したい作例と呪文
agave logo, white background
yucca in style of herbarium specimens in 18th century, white space on left, white background --ar 16:10
agave americana, thick lines, text::1 , blueprint , schematic, technical drawing::2 black and gold, black background::4 blue, white::-4 very detailed, intricate, fanasy, steampunk --beta --ar 3:2
Echeveia, succulents, steampunk, robotics plants on the poster, 1950s, diagram, aged parchment, hyper detailed, 8k --ar 16:10 --quality 2
a botanical art style of gathering succulents and cactus and agaves, hand scheched, white background, in bright light, logo, print --ar 16:10
echeveria cante using social media made of binary code --test --ar 16:10
ワード次第ではものすごく何かっぽい作風にすることも可能です……。
a girl with echeveria and cactus in a garden in the style of pixer animation, toy story, frozen, tungled, unreal engine --test --ar 16:10
a girl with echeveria and cactus in style of studio ghibli, satsuki, mei, tonari no totoro, by hayao miyazaki, howl's moving castle, by mamoru hosoda --test --ar 16:10
Midjourneyの使い方のコツ
短い間ですがいろいろ試行錯誤して得たテクニックをシェアします。
画風のワードは盛り込むが主題のワードはほどほどに
まず、画風に関するワードはできるだけたくさん盛り込んだほうがいい結果になります。同じような画風でも違う単語で表せるなら全部入れます。例えばフォトリアルであれば、photo だけでなく、hyper realistic、super detailed、blender、unreal engine、playstation 5、3d rendering など。これは恐らく、AIに画風をたくさん練習させるようなもので、参考になる元絵が多ければ多いほど精度が高くなるのではないかと思います。
画風ワードを端折った例 smiling anime girl with Echeveria cante and gathering succulents, kawaii, brown wavy hair, school unform, pixiv girls illustraion --test --ar 16:10
逆に、主題に関するワードは必要最小限に限ったほうが良さそうです。これは例えば「エケベリアを抱えた、ピンクの巻き毛の、星とリボンをあしらった魔法少女のようなプリンセスドレスを着た、17歳くらいの笑顔の女のコ……」なんて絞り込むとAIが参考にする絵が少なくなりすぎて頭を抱えてしまうからじゃないかと思います。また特定の主題に全体が引っ張られて欲しいワードが無視されがちです。
主題ワードを盛り過ぎた例 smiling anime girl with Echeveria cante and gathering succulents, 17 years old, pink wavy hair, in magical princess dress, stars and ribbons on it, blue sky, in greek garden, with white cat, pixiv girls illustration, disney prinsess, shinkai makoto, hayao miyazaki, violet evergarden, kyoto animation --test --ar 16:10
流れてきた他の人の作例に乗っかる
Midjourney が他のどのアプリやサービスよりも優れているというか面白いと思う点は、複数の人が相席してサービスを使うというところ。他の人がどんな呪文でどんな作品を作っているかがリアルタイムで流れてくるので、良い感じ!と思った作品の呪文をそのまま自分の主題に混ぜ込んでオリジナル作品にすることが出来ます。
a cute maid by krenz cushart, artgerm, akihiko yoshida --test
a smiling gardener with echeveria cante by krenz cushart, artgerm, akihiko yoshida --test --ar 16:10
例えばこれはメイドさんを描こうとしていた別の人の作例ですが、そのメイドさん部分を「エケベリアを持った園芸家」にするとこうなります。
同じ呪文でも繰り返し違う作例を試す
その「エケベリアを持った園芸家」で1回目に出てきた結果が全然思った主題じゃなかったとしても画風の雰囲気が大きく外してないようでしたら必ず何回かゼロから描き直しをお願いします。2枚目3枚目は驚くほどまったく違う絵を描いてくれるのでクリエイティビティが刺激されること請け合いです。
a smiling gardener with echeveria cante by krenz cushart, artgerm, akihiko yoshida --test --ar 16:10
a smiling gardener with echeveria cante by krenz cushart, artgerm, akihiko yoshida --test --ar 16:10
a smiling gardener with echeveria cante by krenz cushart, artgerm, akihiko yoshida --test --ar 16:10
a smiling gardener with echeveria cante by krenz cushart, artgerm, akihiko yoshida --test --ar 16:10
百聞は一見にしかず。まったく同じ呪文でいくつかの作例を作ってみました。これだけ結果に違いが現れます。1枚目の結果がいまいちだったとしても2枚目以降に名作が生まれることもあります。ちょっとでも可能性を感じたらしつこくリトライを繰り返しましょう。
同じ作例でも繰り返しバリエーションを試す
良い感じの作例や構図が見つかったとしても、1枚で納得せずにバリエーションを何枚も描いてもらいましょう。同じ構図なのに、人物の顔やその画風、服装、ポーズが毎回変わります。特にMidjourneyは表情や手のカタチが苦手です(腕が3本あったり指が6本あったりします)が、試行錯誤するとときどき良い感じのものが出てきたりします。
a smiling gardener with echeveria cante by krenz cushart, artgerm, akihiko yoshida --test --ar 16:10
a smiling gardener with echeveria cante by krenz cushart, artgerm, akihiko yoshida --test --ar 16:10
a smiling gardener with echeveria cante by krenz cushart, artgerm, akihiko yoshida --test --ar 16:10
a smiling gardener with echeveria cante by krenz cushart, artgerm, akihiko yoshida --test --ar 16:10
最終的には合成したり調整したりする
どうしても良い感じのものが出てこない場合、というより、顔は1枚目がいいけど、手は2枚目、花は3枚目が……ということが往々にしてあります。そんなときはPhotoshopなどで合成。顔のゆがみも調整してあげるとより理想的な絵に仕上がることがあります。
まとめ
「呪文(プロンプト)」を唱えれば絵を描いてくれるAI。やってみればわかりますが、意外と思った通りの絵を描いてもらうのは難しく、どんな呪文でどんな絵が描けるのか、世界中でその試行錯誤が続いています。その技は職人技にも近く「プロンプター」なる職能すら生まれようとしている現代。
でも逆に、その呪文のコツをシェアし合うことで使う人もものすごい勢いで進化できるというのも注目すべき事実。せっかくネットで公開されているサービスなんだから、その技をシェアしあう文化が醸成されると良いなぁと思います。
使う人間側の進化スピードを高め、AI自体の進化スピードに追いつかないと。AIは人間のそれとはまったく異次元のスピードで進化していきますからね。
数カ月後、数年後の未来が今から楽しみです。