多肉植物に限らず植物の育て方を調べると、水やりの仕方にはよく「土の表面が乾いたらたっぷりと」と書いてあります。この「たっぷりと」ってどのくらいだと思いますか? 今回はその「たっぷり」を実演交えて解説していきます。先日インスタでアップして好評だったコンテンツです。
こちらが「たっぷり」というときの基本です。育て方でも「鉢底から水が流れるくらい」と書き添えられていることがありますが、それも「ちょろちょろと流れ出る」レベルではなくて、「ドバドバ流れ出る」くらいが理想的です。当然ながら受け皿程度ではそれを受け止めきれませんので、動画のように屋外でやるか、台所シンクに鉢を持っていって蛇口から直接かけるようにするのがベスト(うちでは室内の鉢は基本的にそうしています)。受け皿はざっくり水切りをした後にポタポタ落ちてくる水滴を受け止めるためのものと心得ましょう。
育苗トレイなどの面の大きな鉢を使っている場合は、鉢底から流れ出てくるまでというより、株の周りにうっすら水たまりができるくらいやります。
この「鉢底から水がドバドバでてくる/表面に水たまりができるくらい」やらないとどうなるかというと、シンプルに、根っこの周りまで水が行き届きません。ガーデンホースやじょうろでサーッと水撒きすると水やりした気になりますが、それだと株のない表面が少し濡れるだけで全然足らないんですよね。
あとはよく言われることですが、鉢の中の水と空気を入れ替えるため。鉢そこから水が出て来ない程度の水やりしかしていないと、土の中の水や空気が動かないので老廃物がたまったり雑菌が繁殖したりしてトラブルのもとです。水やりするごとにそれらを洗い流すつもりでドバドバやってください。
もちろんこの「たっぷり」水やりするときにはいくつか注意が必要です。
一番はこの風通し。たっぷりやった水が乾くのを促進するため……ではなくて、そもそも風がないと植物は呼吸ができないから(なので水やり云々の前に風通しの悪いところで植物は生きていけません)。たっぷりやった水を乾かす一番の原動力は、植物自体が吸うことです。実際に大きい株と子株では乾くスピードが段違い。そのためには風を当てて蒸散させ、さらに水を吸うという循環が重要です。
屋外なら壁際過ぎない開けたところ、室内ならサーキュレータを置いて24時間回しましょう。
いくらたっぷりやることが清潔感をキープしたとしても、土がずーっと濡れた状態では多肉植物は健康を害します。たっぷり水やりする間隔は、やっぱり育て方にも書かれているように「土の表面が乾いてから」がいい感じ。ものによってはもっと間隔を開けたり、逆に縮めてもOKなコもいます。
こうしてたっぷり水やりするのはもちろん、植物が育成期間に入っていてよく水を吸うからです。逆に、水を吸わない休眠期の真夏や真冬にたっぷりやるのはトラブルのもとです。同様の理由で、根っこが生えてないカット苗にドバドバやるとすぐジュレます。
ただ、中には完全断水すると弱ったり、少し水気があったほうが発根が促されるといったこともあるので、そういう場合はあえて、表面がしっとりする程度の軽い水やりをすることもあります。
最後に。長い間植え替えをしていない鉢は、用土がガッチガチに固まっていることがあります。こうした用土は吸水性が悪く、ドバドバ水やりをしても用土がほとんど濡れずに全部側面を伝って鉢底から流れるだけということがあります。こういう鉢は水やりのときに、鉢底穴を塞いで水を貯めて用土が水を吸うまで待ったり、側面まで水を貯めず中心部に少しずつ水を置いて吸うのを待ったり、用土を少し耕して吸水力をあげたり……といった工夫が必要ですが、そんなことより植え替えてあげたほうが良いと思います。
「多肉植物は水が要らない」というイメージから、水やりも少しでいいんでしょ?とコップでちょろっと水やりしている方もいらっしゃるかもしれませんが、それは誤解です。多肉植物は思っているよりもずっと水が大好きです。大事なのはその「間隔」と「メリハリ」。やらないときは全然やらなくていいけど、必要なときはドバドバと。特に今の時期は水やりしすぎてもほぼトラブルがないので、ちょっと元気が無いなぁと思ったらドバドバ水やりしてみてください。