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PUKUBOOK Succulent picture book

2023.5.5 助けて!せいてぃも先生!! 右も左も分からないケープバルブを超専門店「エリオクエスト」で教わってきました

PUKUBOOKは「多肉植物図鑑」ですが、厳密に多肉植物しか掲載していないわけではなく園芸的に近いジャンルのものをふんわりと広く掲載しています(ってそれは世の中にある「多肉植物図鑑」や「多肉植物ガイドブック」がそんな感じなのでそれに倣っているだけです)。ただ、やっぱり多肉植物との違いが大きいと管理が行き届かなくてコンテンツも薄くなりがちなのは正直なところ。そんな「ちゃんと手がつけられていないジャンル」の1つが「ケープバルブ」。そもそも、ワタクシ、自宅にケープバルブがほぼありません。

これは申し訳ない! なんとか情報を増やしていかないと。でも全くのド素人のワタクシが今から偉そうにケープバルブのことを語るなんてできません。ここはケープバルブのプロにイチから教えて貰う必要があるはずだ。でもケープバルブのプロなんているの?

いるんです! 高知に!!

今回は、高知のケープバルブのプロ「エリオクエスト」さんの教えをもとに編集した「ケープバルブ特集」です。

エリオクエストとは?

エリオクエストさんのハウス。多肉植物の生産者さんと違って、背の高い、華やかな花がたくさん咲いた「お花畑感」が独特の雰囲気です

エリオクエストさんは高知県でケープバルブや南アフリカ原産の植物を専門的に生産・販売されている生産者さん。自宅の敷地内に自分で建てたハウスの中で、育成している株は万単位。実店舗はなく(ハウスでの販売は行っていません)、公式ショップと楽天のオンライン販売、各地で行われるイベント、提携の専門店でお買い求めいただけます。

スタッフからも「セータローさん」と親しげに呼ばれている社長。みなさんもこの好感度抜群の笑顔、見たことありますよね
一度聞いたら忘れないリョーマさん。もともと園芸関係のお仕事されるくらい植物好きなのに自宅がエリオクエストさんの目と鼻の先だったという「ご縁」のカタマリ

社長の濱田征太郎さん。エリオクエスト Youtubeチャンネルでは「せいてぃも」さん。「もともと植物が好きだったから始めた」というのが7年前。広報活動も積極的で、YouTubeチャンネルも開設されていてちょいちょい観ています。それに実は関西のイベントによくお越しいただいているのを何度も見ていました。

ので、一方的に「初めてお会いした感」がゼロ。そんな初対面のド素人の失礼極まりない謎多き人物の自分に、親切にいろいろ教えていただき本当にありがとうございました。

エリオクエストさんの育成株はココが違う! こだわりポイント

ケープバルブの前にもう少しエリオクエストさんの話を。この後のお写真を見ていただくと感じていただけるかもしれませんが、エリオクエストさんの株の良さはなにか?ポイントをご紹介します。

ルーツのはっきりした品種
品種名だけでなく産地やフィールドナンバー、どういった状態で買付したか?(実生とか)も記載されています

そのラベルを見ていただくと品種名だけでなく、産地やフィールドナンバー、さらに買い付けたときの情報もきちんと記載されています。これはもちろん、そんな詳細情報を提供している信頼できるところから買付しているということ。

エリオクエストさんは特に「密猟」による環境破壊を危惧されていて、そうした影響のない株やタネを仕入れることと、それをトレースできること(トレーサビリティ)に責任持って取り組んでいらっしゃいます

生まれた時からずっと固有の個体番号
すべての株にシリアルナンバー付きのラベルを印刷している秘密道具(嘘です。公式Twitterで公開されています)

驚くべきはそのラベル。すべて違う番号が振ってありますが、これは本当に1つとして同じ番号がない「シリアルナンバー」になっています(最近のラベルには5万台の番号が振ってありますが、創業してから今までで5万株以上も生産・販売されてきたといいうことですね)。

公式のオンラインショップではそのシリアルナンバーごとの掲載、つまり全商品が個体別に登録されているので個体別にオーダーすることができます。

ちょっと想像してほしいのですが、5万種類の商品を管理できますか?(5万点じゃないです、5万種類です) これをやろうと思ったら、ラベルプリンタだけでなく、品種管理ソフトから、撮影&ショップ出品に至るまで、むちゃくちゃ業務を効率化しないと実現できません。これは社長のセータローさん自身が、自らプログラミングして作っている仕組み。実は「最新DXナーセリー」というのもエリオクエストさんのもう1つの姿です。

どんな植物にもマッチして管理もしやすいオリジナル培養土「賢者の土」
賢者の土

エリオクエストさんは多種多様な植物を生産されていますが、用土はすべて共通の1種類。それがオリジナル培養土「賢者の土」です。すべての植物に使っていて元気に生長されているのがその実力の証。ちなみに内緒ですが、肥料としてマグァンプKが入っています(よね)。

ケープバルブとは?

咲き誇るラケナリア ラティメラエ

ケープバルブ(Cape Bulb)とは主に南アフリカのケープフローラル地域と呼ばれるエリアに多く見られる球根植物を中心とした園芸ジャンル。実際にはバルブ(鱗茎)じゃない植物も含まれるので厳密なくくりではありません。が、そのふんわりとしたくくりを定義づけている特徴はだいたいこんなところでしょうか。

- 明確な季節があって、休眠期には地上部はほぼなくなり、生長期にゼロから生まれ変わる
- 多肉植物と違って葉っぱは肉厚じゃない
- 花が華やかでかわいい

つまり、パッと見は多肉植物っぽくなくて、カタチが個性的なものが多くて、キレイな花を咲かせてくれたり休眠期には姿を消したりと季節の変化がダイナミックで楽しい!のがケープバルブの魅力ってことですね。

ちなみにバルブ(bulb)は植物学用語の「鱗茎」とほぼイコールで、玉ねぎを想像してもらうとわかりやすいように、肥大した葉っぱが幾重にも折り重なった構造の地下茎のことを指します。茎が肥大した芋(stem tuber)、根が肥大した芋(tuberous root/root tuber)も園芸界では「球根」と呼ばれていますが、この球根とバルブはイコールではありません。あと水道管のバルブ(Valve)は全然別の単語。電球もバルブ(bulb)というけどこれはカタチが鱗茎に似ていたからっぽいです。

ケープバルブの育て方の注意点 ―― よくある失敗

ケープバルブってどのように管理したらいいのでしょうか? エリオクエストさんにはあえて「よくある失敗」をお聞きして、NGポイントを把握してみようと思います。

夏……強すぎる日差しで「煮える」

これは季節タイプによりません。暑い中の強烈な日差しに耐えられる植物はめったにありませんが、ケープバルブもその例に漏れません。特に根塊が露出しているものは、その根塊に直接日差しがあたると根塊内部の温度が上がりすぎて「溶けて」しまいます。せいてぃも先生曰く「煮える」と。

これを防ぐポイントは2つで、1つはしっかりと遮光をすること。エリオクエストさんでは夏型で50%以上、冬型は90%くらい遮光しているそうです。もう1つは、水やりをすること。水をやることで、気化熱で植物の温度を下げることができます。といっても昼間にドバドバやっては腐る原因につながるので、明け方や、夕方に涼しくなってきてからサッと湿る程度にするくらいがいいそうです。

冬……寒くなりすぎないように

季節タイプによらず、寒すぎるのはNGです。高知は暖かいので、エリオクエストさんではハウスのビニールを二重にする程度で乗り切れるそうですが、寒い地域では屋外越冬は厳しいかもしれません。本来は球根や根塊は土に埋まっているものなので、露出させているならデリケートだと考えたほうが良さそう。

また、冬でも油断していると、直射日光が当たった根塊の温度が想像以上に上がるということも失敗例としてはありがちなんだそう。

エリオクエストさん育成種いろいろ

それではみなさまお待ちかね。品種紹介を一気に行きます。

エリオスペルマム

エリオクエストの名前の由来になっているのがこのエリオスペルマム(ちなみに「エリオ」は綿毛で「スペルマム」は種子のことで、ふわっふわの綿毛のようなタネに由来)。突起のある葉っぱと、その突起が伸びてシシガミ様のようになった(と思っている)個性的な姿も人気の理由です。

エリオスペルマム エリヌム
エリオスペルマム プロリフェルム
エリオスペルマム ケルビコルネ
エリオスペルマム ドレゲイ
レデボウリア・ドリミオプシス

ケープバルブの専門店でなくても比較的よく見かける球根植物。虎柄のいかつい印象の葉っぱのイメージと正反対の、ヒヤシンスの仲間らしいかわいい花がチャームポイント。

レデボウリア ソシアリス
レデボウリア マルギナータ
ドリミオプシス マクラータ
ラケナリア ラティメラエ
ゲチリス・アルブカ

ビザールプランツ特集の表紙になるような、くるくる葉っぱがかわいいコたち。

ゲチリス ベルティシラータ
アルブカ ブルースベイエリ
キルタンサス スピラリス
キルタンサス スミシアエ
ドリミア・ブルビネ

ケープバルブの多くは旧ユリ科(現キジカクシ科、ヒヤシンス科など)なので、ユリのようにシュッとした葉っぱと、高く伸びた花芽の先に華やかな花、というコが多いです。もちろんその中にむちゃくちゃ個性的なコもいたりしますけど。

ブルビネ スポンギオーサ
ブルビネ ブルンスヴィギアエフォリア
ブルビネ メセンブリアンテモイデス
ドリミア ウランテラ
オルニソガルム リトプソイデス
ドリミア アカロフィラ
マッソニア
マッソニア デプレッサ

こちらもビザールプランツとしてフィーチャーされやすい、葉っぱの器に盛られた花という個性的なデザイン。

その他

エリオクエストさんではいわゆるバルブだけでなく、南アフリカのいろんな植物も生産されています。

キホステンマ ユッタエ ブドウ科のコーデックス。葉っぱがギザギザでかっこいい
ハオルチア アテヌアータ 古くから有名なハオルチアだからこそ、品種名や変種名まで学名がしっかり特定できている株が珍しい。品種管理が厳格なエリオクエストさんならでは
ハオルチア ツルギダ スベレクタ
ハオルチア 万象

まとめ

というわけで「ケープバルブ特集 第1回」を掲載させていただきました。もちろんこれが僕にとってのケープバルブの出会い、プロローグですので内容としては品種紹介を中心にさせていただきました。今後は今回の出会いをきっかけにいろんなケープバルブを管理してみて、その魅力や、実際にやってみた大変さなどもお伝えできればと思います。

最後に、今回「突撃取材」させていただいた際、慣れないことでいろいろ不手際やご迷惑もおかけしたかもしれませんが、快く対応してくださったエリオクエストのセイタロウさん、リョーマさんに改めてお礼申し上げます。また第2回以降もいろいろ教えていただけるとありがたいです。

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