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PUKUBOOK Succulent picture book

2023.8.18 今から取り寄せて秋に蒔こう!タネから育てる多肉植物「エケベリアの実生」に挑戦

実生ライフ楽しんでいますか?!

と「なにをとつぜん」な書き出しでスタートした訳は、2年前にアガベの実生についてコラムを書かせていただいていたから。おかげさまでPUKUBOOKコラムの中ではわりとご利用頻度の高い記事となっていることもあって、今回は それにあやかろうと エケベリアにスポットを当ててその復習と、そんな記事も実生も知らないという方に改めて知って頂く機会とさせていただければと思っています。

2021年現在、最も人気のある多肉植物のひとつである「アガベ」。レアな人気種は子苗でも万単位で取引されているのは傍目で見...

はじめての実生

タネから育てる方法を園芸界では「実生(みしょう)」と言います。英語だと一番近い用語は seedling ※。苗を買いに行ってもたまにラベルに「実生」と書いてあったりしますが「タネから育ててますよ。葉挿しやカキコじゃないよ」という意味です。

※ seedling は厳密に言うと「種から発芽した若い苗」のこと。日本語の「実生」も本来そういう意味です。germination(植物生態学用語で「発芽」)か seeding(園芸用語で「種まき」)という単語でググったほうがヒットすることもあります。

多肉植物を買い求めているとよく見かける「実生」と書いてあるラベル。わざわざ書いてあるということは、きっと「高級」とか...

エケベリアを実生する魅力

エケベリアはアガベよりもずっと手軽に入手することができます。わざわざ実生するメリットや魅力はどこにあるのでしょうか?

超大量に増やせる

タネは多いと100個単位で売っています。ワンシーズンでゼロから100苗以上ゲットできるということ。この生産量は葉挿しではなかなか真似できません。

レア種・高級種を(大量に)ゲットできる

国内ではほぼ流通していない新種やレア種、それにカンテといった流通量の少ない高級種でも、同じくらいの手間でゲットすることができます。それが目的なら大量にゲットできる必要はありませんが、どうせならできるだけたくさん育ててメルカリでおすそ分けしちゃいましょう。

個体差を楽しむ

品種によっては、実生は葉挿しと違って個体差が出ることがあります。1つ1つ違うその個性を楽しむことができます。

エケベリア アガボイデスの実生苗たち。品種にもよりますが実生は個体差が出てきます
自分だけのオリジナル品種をつくれる

さらなる上級者テクニックとしてエケベリアのタネを自分でつくることができます。それも違う品種をかけ合わせる「交配」をするとそれはもう自分だけのオリジナル品種。誰も見たこともないステキなコにも出会えるかもしれません。

エケベリア実生の基本

アガベ特集のときに「特にカンタンでおすすめ」と書いていましたが、ということはエケベリアはもう少しだけ難しくなります。難しいと言うかちゃんとケアが必要で、僕みたいなズボラさんは失敗するリスクが高いということ。

エケベリアの種(その横の花殻で幅6~7mmくらい)

その一番の要因はこのタネ。むっちゃ小さいです。ぱっと見だと粉にしか見えないし、吹いたら飛んでいきますし、撒いてもどこに撒いたかわからなくなります

この袋の中のホコリみたいなのがタネ。ゴミじゃないから絶対捨てちゃダメですよ!
生まれたての芽。この大きさ伝わりますか?手前のラインが定規の目盛りなので、ふたばが出てきて1mm程度の大きさ。葉先に付いてる点がタネなので0.1mm程度でしょうか。ちなみに芽の下は根鉢じゃなくて赤玉1粒。

なのでポイントは、①用土は特に細かいものを用意する ②撒いたあとは上から水をかけない(腰水) ③十分大きくなるまで水を切らさない ④薬品はできるだけ使わないといったところです。

発芽に適した温度はアガベと同様に 20℃~25℃ なので、 3月~4月か、9月~10月くらいがベストシーズンです。(なぜ8月にこの記事を書いたのかというと、海外からタネをお取り寄せするのに1ヶ月くらいかかるからです。今から注文するとちょうどベストシーズン!)

エケベリア実生の手順

アガベと違って先に水に浸したりしません(見失うから)。密閉ガラス瓶メソッドも、タネがどこにいくかわからないのと密閉に適した育成期間がアガベの半分くらいなのであまりオススメできません。今回は腰水プラポットメソッド一択で進めていきます。

置き場所

小さな苗はとても繊細なので過酷な環境は絶対NG。直射日光の当たらない明るい日陰で風通しのいいところがちょうどよく、もちろん屋内でもOKです。鉢上げできるサイズになってきたら十分な日差しが必要で、一人前の大きさになったら直射日光を……と段階的に環境を厳しくしていく感じです。

めんどくさいな―という人にオススメなのが屋内のLED環境です。本格的なLED機器を導入しなくても、ベビーリーフ用のLED機器で数鉢分だけの環境を作って、はみ出るようになったら外に移動というオペレーションでも良さそうです。

用土

用土は、撒いたタネが発芽困難な奥の方まで入って行っちゃわないようにできるだけ目の細かい用土を選ぶことさえ気をつけていれば、基本的に何でもOKです。とはいえオススメは2パターンで、①鉢底石、培養土、赤玉か鹿沼の細粒の三層構造 ②種まき葉挿し専用土

滅菌

用土を用意したら大きなトレイに並べて上から十分に大量の熱湯をかけて冷めるまでラップを被せて蒸らしておきます。タネも薬品で滅菌しておくといいという書物も見かけますが、薬品は苗を痛めるリスクも高い※ ので個人的には不要だと思います。

トレイに土を入れたプラトレイを用意
熱湯をたっぷりかけてラップして蒸らします

※マジで、薬品を撒いたら次の日に芽が全部溶けてたといったこともあります。

冷めたらタネまきOKです。水は交換してもそのままでもOK。

タネまき

タネは吹いたら飛んでいくので開封は特に慎重に。大抵は紙に包まれているので、それをそーっと開いたら、対角線で半分に折って、とんとんしながら少しずつできるだけ均等になるように用土の上に撒いていきます。どこに撒いたかは絶望的にわかりません。芽が出てきたらその結果がわかります。

腰水管理(日当たりと風通し)

タネが発芽するまでは、水面が用土の高さの8割くらいまでひたひたに水を入れてそれをキープします。十分に発芽したら半分から2割くらいまで減らしていきますが、基本的には苗が十分な大きさになるまでは腰水をキープして水を切らさないようにします。

このふわふわときれいなのがカビ。根っこではありません。キレイですが発見次第取り除きましょう。(写真はアガベです)
発芽直後。よーく見ないと芽が出てきているかどうか確認できません。カビかな?と思うようなサイズ感。

蒸れやカビのリスクがありますので、風通しのいいところに置くのはもちろん、扇風機やサーキュレータを充てておくと安心です。もしカビが発生したらその部分だけ丁寧に取り除きます。殺菌剤などの薬品はカビだけでなく苗をやっつけてしまうリスクがあるのでおすすめできません。

日が当たる必要はないので、生活できる明るさの部屋であればOK。

鉢上げ
2月上旬 (播種3ヶ月)。本葉が出揃って一人前の大きさに。植え替えにも耐えられるサイズです。
ルブロマルギナータ。この鉢は↓の鉢でバラしたのは6月。

本葉が出て1~2cmくらいの大きさになったら別の鉢に植え替えしてもOKです。もちろんもっと大きくなってからでもかまいません。大きくなるほど植え替え時の失敗のリスクが軽減されますが、大きな苗の近くにちょっと遅れて発芽したコは大きくなれないので、大きいコにはできるだけ早く巣立ちしていただいたほうが育ちがよくなります。

鉢上げできるようなサイズになったら腰水を切り上げてもOKですが、腰水を続けたほうが育ちはいいです。

立派な苗に
5月下旬 (播種5ヶ月)。サブリギダとルブロマルギナータ。いっちょ前の大きさになってその種らしい「顔」もわかるようになってきました。ルブロは鉢上げをしていないので小さいのが密密になっています。
8月中旬(播種8ヶ月)。同じサブリギダ。となりの大人カンテにも負けない力強さが出てきました。

早いと半年程度でいっちょ前の大きさになってくれます。市販されているサイズになるには1年~2年といったところでしょうか。

よくある失敗

サンプル数が1(我が家だけ)なので本当によくあるかどうかはわかりませんが、実際に経験したありがちな失敗をお伝えしておきます。

タネを見失う

本当にやります(笑)。種をまこうとしてそーっと鉢に近づけていったらなにかの拍子で紙が跳ねて吹き飛んだといったこともあります。くしゃみしたとかじゃないのにですよ。でも諦めないで。しばらくすると近くの鉢から芽が出てきたりします。問題は大きくなるまでどの品種かわからなくなることですね。

カビと滅菌剤

もちろんカビは要注意ですが、経験上、エケベリアの実生でカビに悩まされたことはありません(アガベと違ってタネが小さいので元々カビ菌が付着しているリスクが小さいのかなーと思っています)。どちらかと言うと怖いのはカビ対策の薬品で、カビ対策のつもりでまいた薬品でせっかく出てきた芽を全部とかしたことがあります。

小さい苗を枯らす

生まれたての芽は、当たり前ですがどんな植物よりも繊細です。1日の水切れ、数時間の直射日光で枯れたり焦げたりするリスクがあります。十分な大きさになる数ヶ月の間は毎日様子を見てケアしてあげてください。特に数日家を開けるなんてときが要注意です(つまり僕がだいたいそういうタイミングで枯らすということです)。

おすすめのタネショップ

定番の、あるいはよく利用するタネショップを紹介します。

seed stock
安心安全の国内の多肉植物のタネ専門店。国内なので短納期。シーズンに入ってから注文しても間に合います。発芽報告や実生方法を紹介するLABORATORYも要チェック。

Kohres ケーレス
みんな知っているドイツの多肉植物のタネ専門店。種類が多く、地域変種まで厳密に学名で分類管理されていて信頼も厚いショップ。国内で流通している実生苗の多くはここのタネを利用しているんじゃないかと思います。ロットが大きいのと、ペイパルでの支払い方法がわかりにくいのが難点……。

まとめ

実は個人的に増えすぎる実生を敬遠していたという事情があって(なにが「楽しんでますか?」だと)今回の特集でも実生している品種がごく限られていますが、最近その環境を大きく変えたこともあって来シーズンはもっと積極的に実生していこうかなと思っています。

ここで紹介した手法はタネが小さい系のセダムやダドレアなどにもほぼそのまま応用できますし、まだまだ国内で見たことのない品種もありますので、レアタネをゲットして挑戦していきたいと思います。

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