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PUKUBOOK Succulent picture book

2024.5.24 転売したら逮捕?!多肉植物も無縁じゃない「品種登録」と「種苗法」をおさらいする回

先日SNSを見ていたら「この品種は転売したら逮捕されるんで注意!」といったメッセージが流れてきてギョッとしたんですが、あれ? 転売もダメなんでしたっけ? と思って調べ直したので、今回はその「種苗法」についてまとめておきます。実は種苗法は2021年に改正(当時ちょっとした騒ぎになりましたね)されているので、今回はその最新の内容を踏まえています。

種苗法とは?

種苗法は、農作物や園芸植物の「新しい品種」を守るための法律です。「特許」や「著作権」をイメージしてもらうとわかりやすいと思います(実際に英語では「Plant Patent = 植物の特許」と言います)。

植物の新品種を作るのは、何年もかけて交配を繰り返してたくさんの個体を何世代も育てて結果を見て、良いものが出来たとしてそれを増やすのに更に何年もかけ……と、場所も時間も労力もかかるもの。なのにそれを買った人が勝手に増やして販売できたら作った人は最初しか利益を得られずその苦労に見合わないので、新品種をつくるプロがいなくなってしまいます

種苗法は、購入者が勝手にコピーすることを禁止することで、新種の開発者の利益をエられるようにするための法律。その目的は、新品種開発の促進と、農業や園芸の発展というわけです。

転売もダメなの? 登録された品種でできないこと

PUKUBOOK SUCCULENTSでは登録品種以前に棚がいっぱいすぎなので基本的に「増殖」をほとんどしていません……

結論から言うと転売はオッケーです。ダメなのは、登録された品種を「増やして」「売ったり、あげたりする」ことです。改正種苗法では「自家増殖には許可が必要」と書いてあるので誤解されるところですが、個人が自分だけで消費するために増やすことは「趣味や家庭菜園」とみなされて処罰の対象になりません(農林水産省Q&A「質問30」)。また、増やさずに買ったものを大きくしてそのまま売る「転売」も規制されていません(同「質問22」)。

注意が必要なのは、あげてもダメというところ。ご近所さんに配ってもダメです。

あと、21年の法改正で海外持ち出しが規制されたため、増やさずに売ったとしても買った人が海外に持ち出すかもしれないことを知っていた場合もアウト。ただこれはふつう知り得ないからなかなか罪には問われないかな。ヤフオクで落札者が明らかに外国人で登録品種ばかり買い漁っている人だったら、商品を送る前に運営に通報…じゃない相談したほうが良いかもしれません(笑)。

逆に意外とオッケーなこと

稀有な例ですが、登録品種を育てているうちに、枝変わりや変異でもっとすごい品種が誕生した場合、それはもとの登録品種とはベツモノとして育種権者の許可なく育てて広めてオッケーということ。増やすのが得意な方は変異が出るまで増やしてみるというのも手かもしれませんね(笑)

ヤフオクやメルカリで登録品種を見かけたら……

もしヤフオクやメルカリで、正規販売でもなく、正規販売されたものの転売でもない、明らかに「増殖しただろこれ」というものを見かけた場合はどうしたらいいのでしょうか? もちろん法律的に言うとそれを買うこと自体に罪はないので購入してもオッケー。ただそこで売買が成立してしまうと売った人に「種苗法違反」の事実が発生してしまうので、ぐっとこらえて買わないでいてあげたほうがよさそうです(売買が成立しなくても売りに出した時点でダメなのかもしれませんが……)。

品種登録されている多肉植物

ちなみにここで書いている「増やして、売ったりあげたりしたらダメ」という話は、それが登録品種だということを知らなかった場合は罪に問われません(もちろん「知らない」って嘘ついたらダメですよ)。なので知らずに買って増やしちゃっていたというケースは大丈夫なんですが、今後そのようなうっかりをしないためにも、登録されている品種を知ってる限り記載しておきます。そう、このページを開いてしまったあなたは、もう「知りませんでした」では済まされませんからね……。

セダム アトランティス 比較的新しい登録。正式名称「Nonsitnal」で登録されているので検索するときはそれで
アエオニウム サンシモンバイオレット
セダム ミルクージ H&Lプランテーションさん
センペルビブム バニラシフォン カクタス長田さんの登録品種。「Osasempfuji」の正式名称で登録されています
ポーチュラカ マジカルキューティー 鹿児島の田中農園さんの登録品種で「華ミステリア」が正式名称
ハオルチア シルバームチカ ハオルチア協会の林先生が登録した品種。といってもこれは増殖を禁止したいわけじゃなくて名前を正しく記載してほしいという意図で登録したんだそうです

以下は海外の生産者さんがそのまま直接日本でも登録されている感じ。

アロエ ティキ
アロエ ティキ・ジラ
マンガベ バッドヘアデー
マンガベ フレックル
マンガベ ムーングロウ

ちなみに 「品種登録」で検索 しても一覧できます。

品種登録されていない品種は増やして売っても良いんですか?

「登録されている品種の一覧」を見てもらったらわかると思いますが、意外と少ないです。それは多肉植物の世界は1つの品種が売れる数が農作物や花よりも圧倒的に少なくて、さらにその種類が多いので、品種登録するコストや管理するコストが見合わないから。じゃあその登録されていない品種(ほとんどすべての品種)は増やしたり売ったりしてもいいんでしょうか?

こちらも結論ファーストでいうと「全然オッケー」です。誰が作った品種でも、それがむちゃくちゃ苦労して作成した品種でも、あるいは激レアだからと高額で買った品種でも、品種登録されていなければそれを増やして販売することを規制する法律は基本的に(※)ありません。ただ、ここから先は法律の話じゃなくて暗黙の了解やビジネスマナーといった話になりますが、人が苦労して作ったり価値を高めた品種を、なんのリスペクトもなく大量増殖して安く売りさばいていたら、業界やファンの方から白い目を向けられても文句は言えません。育種者さんの中には、品種登録をして品種を守りたいと切に思いながらも品種登録の費用が出せず、泣く泣く見送っている人もいるので。

※たとえば「商標登録」することで その名前を使って販売できない といった規制のある商品もあります。どちらにしても「守ってほしかったら登録せよ」というルールなので、いくら育成者さんが「増やさないで」とか「この名前を使わないで」と呼びかけても、品種登録も商標登録もしていなかったら、それを守る義務はユーザーにはありません……。

もちろん、良いものを「大量に増やす」ことや「手に入りやすい価格にして沢山の人に届ける」というのも、園芸業界の裾野を広げるという役にたっているのも事実。法律ではないのでどっちが良いとか悪いということは言い切れませんが、いろんな事情を知って、自身で判断していっていただければと思うところです。

参考文献・サイト

改正種苗法に関するQ&A(農林水産省)

種苗法はなぜ改正されたのか?(リプラス)

多肉植物の世界に深く入っていくと時々目にするのが「絶滅の恐れがある種」というコトバ。絶滅の恐れがあるのに、ふつうにお...

多肉植物に関わる法律というと、「種苗法」よりも「種の保存法≒ワシントン条約」のほうが重要かもしれません。合わせてチェックしていただければと思います。

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