今も昔も植物の世界ではある品種の価格が突然高騰してびっくりするくらいの価格で取引されるようになったと思いきや、早いと数年で急落してほとんど普及価格帯なんてことが、よくあります。ほとんどの品種は植物である限り増やすことができるので、高値で売れるんならとみんなが競って増やす結果、いつか供給が上回って価格が下るなんてことは市場原理と言うより自然の摂理。人類有史以来何度も繰り返されてきたことなのでわかったうえで手を出してくださいね、と僕も繰り返しお伝えしているところです。
ただ、そうは言っても時々聞こえてくるのが 「まじか!?」 「やばい!」 「こんなことになるなんて植物収集なんでやめます!」 という声。つまり手を出したのが先で、結果が後。何万円も出して買ったはずのあの品種がヤフオクで数千円で売られているという事実を目の当たりにしちゃったケースです。
今回はこんなときの対処法というか考え方を書き綴っておきます。結論から言うと、それは「買い増し」です。
「買い増し」は主に株式取引で登場する用語で、すでに保有している銘柄を追加で購入することを指します。
株式取引で買い増しをする理由は大きく2つあって、1つは、その銘柄が今後も成長することが見込まれるからさらに利益を得ようと買い足すこと。このときは価格が上がっていても気にせず買います。
もう1つは価格が下がっている局面。ここで買い増しをする目的は平均取得単価を下げることです。例えば以前に1万円で100株買っていたものが5,000円に下がったときに200株買い増しをすると、合計200万円で300株保有することになるので、平均取得単価は10,000円から6,667円に下がります。単価が下がって保有株数が増えるのでより将来の利益が出やすくなるんですよね。
「10,000円で買ったものが5,000円になった!損したー!」ではなくて「100株しか持ってなかったけど300株に増やすことができた!しかも単価が6,667円に下がった!やった!」と。
これは株式取引での基本的なテクニックと言うか考え方の1つです。
実際に、あえて何とは言いませんが、僕が最初にアレを買ったときは小さな小さなミニ株で15,000円でした。これでもちゃんとした子株だと10万円で取引されていたものなのでかなり落ち着いてきたと思っていました。それが半年後には3株で15,000円に。さらに半年後にはなんと10株で12,000円に。
ここで、最初の1個しか買わなかったAさんと、全部買ってきたBさんの植物棚の違いを見てみましょう。
Aさんはずっと、15,000円で買った1株だけ保有しています。
Bさんは、最初はAさんと同じですが、1回目の買い増しで、(15,000円 ✕ 1株 +5,000円 ✕ 3株)÷ 4株 = 30,000円 ÷ 4 = 7,500円。2回目の買い増しで(15,000円 ✕ 1株 +5,000円 ✕ 3株 +1,200円 ✕ 10株)÷ 14株 = 42,000円 ÷ 14 = 3,000円になりました。3,000円で14株買った 状態になったということですね。
ここで大事な考え方があります。それは、Bさんは、「15,000円の株を1株と(中略)1,200円の株を10株持っている」のではなくて、「3,000円の株を14株持っている」と考えることです。買った時期は区別していいけど、買った値段は区別しない。こう考えると極端な話、15,000円で買った株を10,000円で売っても大丈夫なんですよ。7,000円の利益と考えることができます。市場価格が下がっている今の市場で15,000円以上で売るのはなかなかしんどいですが、3,000円以上だったらなんとかなります。逆に1,200円で買った株も購入価格は3,000円になりますが、1,200円で買ったものを大きくして3,000円で売るのはそんなに難しくないハズ。
「いやいや私は売ったりしないし利益とか考えないから大丈夫」 とおっしゃりたいあなた、もちろんそれもわかります。でもそういう方にも買い増しはオススメします。それは「精神安定」のために。だって15,000円のものがヤフオクで1,200円で売られていたらシンプルにショックじゃないですか。まるで自分の愛する植物の価値まで下がっちゃったみたいに感じません? でも買い増しをしていると手持ちの株の購入価格と市場価値が極端に乖離することがありません。「これは15,000円で買ったものじゃなく、平均3,000円くらいなので、1,200円になってても大して痛くないな」と。これが大事です。
ちなみにこういう目的の買い増しは、同じ品種である必要はありません。Aという品種を高値で買ったとして、市場価格が下がってきたら同様に下がってきたBという品種を買い増す。Aが15,000円でBが1,200円だとすると平均8,100円。このように全体としてはコスパが良くなり、市場価値とも近くなります。もちろん毎回出たての最先端価格で買い集めるコレクション方法もあるので否定はしませんけど(そんな財力がないので真似はできません……)。
いい話ばかりではありません。株式取引の「買い増し」にもリスクはありますが、それよりも植物コレクションの買い増しのリスクは先程のイラストを見れば一目瞭然。それは「置き場所が圧迫される」ということです(笑)。買えば買うほど置き場所を取られるのが植物。誰も無限に広い部屋を持っていませんので、買える数には限りがあって、どこかで「買い増し」も打ち止めにならざるを得ません。
株式取引では、「買い増しても、さらに株価が下がり損失を拡大する」というリスクがあって、もちろん植物にも「さらに価値が下がる」というリスクはあります。けど植物は「生長して価値が上がる」という別のベクトルもあるのであまり大きな問題にはならないかな。下がったらまた買い足せばいい。
問題はやっぱり、スペースの都合で買い増しできなくなること、ですよね。
こう言うと怒られるかもしれませんが、植物を保有・管理することって株式と似てるところがあると思うんですよね。保有しているとそれ(植物そのもの/会社)が成長しようという原動力で大きくなり、ときどき余った分(果実や子株/利益)が得られるし、大きくなったそれ(植物そのもの/株式)を高値で売ることもできる。実際に植物のことも株式のことも「1株2株……」って数えますしね(なにか関係があるのでしょうか?)。
もちろん売るどころか増やすことさえしたことない、鑑賞オンリーのコレクターも多いと言うか大多数だと思いますし、僕もそれがあるから楽しく多肉植物をコレクションしているんですが、メルカリすることで限られたお小遣いでもコレクションを増やしていけるサステナブルな趣味なのは事実。それをマスターしていただきたいのと同時に、行き過ぎた、あるいは躓いたときにうまく回避できるように、こうしたビジネスやトレードの知識が役に立つので頭の片隅に入れておいていただければと思います。
あ、ついでみたいで恐縮ですが、増やすのは圧倒的に「胴切り」がおすすめですよ!