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PUKUBOOK Succulent picture book

2021.9.3 レッドリストやワシントン条約とはなにか?というハナシとPUKUBOOKでそれを掲載している理由

多肉植物の世界に深く入っていくと時々目にするのが「絶滅の恐れがある種」というコトバ。絶滅の恐れがあるのに、ふつうにお店に売ってるけどいいの? ヤフオクに出てるけどこれって違法? そんな疑問を抱くこともあるかと思いますが、そのためにはぜひ規制している法制度自体のことを知ってほしいと思い、自分用メモも兼ねて書き留めておきます。

レッドリストとは

まずいちばんよく聞くのがこのレッドリスト。「絶滅の恐れがある」というとまずこれが基準になっています。誤解を恐れずに言うと、このリストは、絶滅の恐れがある種をランク分けしただけのもので、このリストに掲載されているからといって規制の対象になるというわけではありません。ただ「この種はやばいよ!」とアラートを発しているだけ

それだけのリストになにか実効性があるの?と思われるかもしれませんが、実効性がないからこそ、掲載種数が多くその更新頻度も高くすることができます。実際に取引規制が行われていなくても「絶滅危惧種かぁ」と意識して自主的に取引を行わないという選択もできるわけです。もちろん実際の取引規制もこのレッドリストを大きな基準として策定されるので、レッドリストでヤバい種の多くはすでに規制対象になっているし、今後対象に加えられる可能性も高くなります。

CR 絶滅寸前

レッドリストにはいくつかのランクがありますが、その中で最も危機に瀕しているのがCRランク。PUKUBOOK掲載種で約170種がカテゴライズされています。

アロエ ピランシー
ツルビニカルプス アロンソイ
アロエ アルビフローラ
アガベ 笹吹雪
アガベ アルボピローサ
アガベ ジプソフィラ

CR 絶滅寸前の種をすべてチェック

EN 絶滅危惧

次の危機ランクがEN。約340種がカテゴライズされています。

EN 絶滅危惧の種をすべてチェック

VU 危急

次の危機ランクがVU。約300種がカテゴライズされています。

VU 危急の種をすべてチェック

EW 野生絶滅

危機を通り越して、すでに野生種は絶滅していて保護施設でしか生きていない種がEWランク。野生絶滅。ゼロではないにしてもここまでくると野生に戻すのも難しく、絶滅は時間の問題なのでしょうか。

アガベ 黒竜舌

EW 野生絶滅の種をすべてチェック

サイテスとは

多肉植物の商取引、特に輸出入をするときに強く意識するのがこのサイテス。ワシントン条約という名前のほうがよく聞きますよね。正式名称を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)」というので、その頭文字をとってCITESと言います。

具体的には、対象の種の国際取引を規制する条約です。もともと「特に商取引によって個体減少に追い込まれた種」の「過度な取引」を規制するための条約。

なので、ほとんどの種で「栽培繁殖した個体」や許可をとって正規の手続きで輸入された個体は規制対象外のため、個人で輸出入しない限りはほぼ意識しなくても良いんですが、やっぱり自分の持っているものが対象かどうかは見ておいたほうが良いと思います。

環境省 ワシントン条約とは

サイテスI類

絶滅が特に危惧されていて、基本的に輸出入などの商業的な国際取引が全面的に禁止されている種です。調査研究目的や、繁殖して増やした個体の場合などで、両国政府が許可を出した場合だけ取引が可能です。中にはホームセンターでも見かけることのある普及種がカテゴライズされていることもあって忘れがちですが、タネであっても輸入するときに税関で差し止めされることもあるので注意が必要です。

エンケファラルトス ホリダス
ユーベルマニア ペクチニフェラ
アストロフィツム 兜
パキポディウム アンボンゲンセ
パキポディウム バロニー
アロエ 女王錦

サイテスI類の種をすべてチェック

サイテスII類

輸出入が制限されている種で、基本的に許可があれば取引可能です。制限がゆるい分「サボテンは全種」など適用範囲が広いです。

パキポディウム 恵比寿笑い
アガベ 笹吹雪
アロエ プリカティリス
オペルクリカリア パキプス
チランジア キセログラフィカ
ユーフォルビア オベサ

サイテスII類の種をすべてチェック

サイテスIII類

世界共通の基準ではなく、特定の国や地域が保護したい種に適用しているカテゴリ。動物が多く、多肉植物の世界では今は対象種はありません。

サイテスIII類の種をすべてチェック

種の保存法

サイテスは国際条約なので、日本国内向けにその運用方法の補足や、独自に国内種を守る仕組みを整えたのがこの「種の保存法」。1992年発行。対象の種は輸出入時に承認が義務付けられていたり、販売目的で陳列や広告が禁止されていたり、単なる「譲渡」でも禁止されるなどより強い制限が課せられます。ただ、多肉植物の世界ではほとんどの種が「繁殖させた個体は適用除外」とされているので、ふだんの国内流通時にはほとんど気にされることはありません。

https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/species/index.html

個体登録制度
エンケファラルトス ホリダス

「ほとんど」と言ったのは例外があるからで、それがこのヒメオニソテツ。正確にはオニソテツ属のすべての種が対象です。この種を育成管理するためには個体ごとに「個体登録」が必要で、譲渡の際にはその所有者を環境省に届け出る必要があります。詳しくは下記環境省のリンクをチェック。対象種の一覧もあります。

種の保存法関係 様式等

PUKUBOOK における情報収集と掲載意義

PUKUBOOKでは、アクティブな原種で5万種以上を掲載しているので、当然どの種が対象なのかを手で調べているわけではなく、それぞれ、レッドリストとサイテスの公式サイトに日々自動的に問い合わせして情報更新を行っています。相手サーバーにご迷惑はかけられないのでゆっくりと時間をかけているので1周するのに1~3ヶ月くらいかかるペースです。またリストの照合がうまくいかないケースがあるので、必ずしも「PUKUBOOKにマークがないからレッドリストやサイテスの対象外」ということにはならないことにはご注意ください。

この情報を掲載している理由は、単に「知ってほしい」というだけです。絶滅が危惧されるといってもそこに至るまでの理由はほんとに様々で、一概に商取引が悪いというわけではありません。まず知って、次にそれを大切にして、最後にちょっとだけ未来や他の国の事情に思いを馳せる。そんな小さなきっかけになればと願ってやみません。

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