勝手ながらこうして図鑑を編集させていただいているということはもちろん、「この品種はこんな特徴があります」という文章を書くということをひたすら何年もやっていてそこそこの経験になっている感があります。そんな経験がありつつも、実は特にその特徴を捉えるのが難しいのがアエオニウムたち。
「このアエオニウムはこんな色です。葉っぱはこんなカタチです」なんて書いたとしても、それが1週間も経たずに全く違う姿になっている。それもより個性的な姿になってればいいものの、ちょっと前の別の品種と何が違うのかわからない姿になってることもしばしば。
一体何をどう捉えて何を書いたら良いのか?!
そんなアエオニウムの変幻自在ぶりを、そのまんま時系列でまとめて記録として残しておこうというのがこのコラムです。文章なんて書かない。ありのままの事実として写真だけ貼っとけ!というサジ投げページです。
感覚的にではありますが、2023年ごろからアエオニウムの中で最も人気があり注目されている品種がこの「メデューサ A. 'Medusa' 」ではないかと思っています。往年の「サンシモンバイオレット」から「黒法師錦」へと続くメタリックスカーレットな斑入りアエオニウムの変遷で、そのコスパの良さで王の座に就いた実力派。
こうしてみるとその特徴は、ちょっとしたストレスで早めに赤く色づきつつもその明るさは維持、葉幅は広めでしゃもじ型、新葉だけでなく展開したあとのロゼットも中心が緩やかにくぼんだ「お椀型」になる、といったところでしょうか。「基本的に明るい赤のアエオニウム」は間違い無さそうです。
「マルディグラ A. 'Mardi Gras' 」は、メデューサよりも以前から流通していて、グリーンルームさんが国内ライセンス生産されているのでホームセンターでも見かける手に入りやすさが嬉しい新品種。最初は「メデューサよりも細い葉っぱ」と思っていたけど、6月の最終形態だとそのカタチはそっくりでわからなくなってきました……。
色についてはその特徴が捉えやすいのが「ハロウィン錦 A. 'Halloween Variegated' 」。メデューサやマギーがストレスで真っ赤に色づく環境の中においてもほとんど色づかずに明るいグリーンをキープし続けます。更に強いストレスを与えると色づくこともありますが、葉っぱの内側から発するというより表面だけほんのり赤いスプレーを浴びたような雰囲気です。
「アエオニウムの特徴は捉えにくい」ということは、いつも悩むのが新品種です。アエオニウム界でも日々いろんな新品種が誕生して魅力的なカタログを見せていただくことがありますが、その新品種が従来品種と何がどう違うのかわからない。説明できない。そりゃカタログで見比べれば違いはわかりますが、その特徴は一瞬を切り取ったものであり季節や環境でコロコロ変わるのは見ていただいた通り。
この「マギー A. 'Maggie' 」も11月にうちにきた新品種。それから3ヶ月くらい管理していますが、ようやく本領発揮してきたかな?という程度で、いまだにその姿は捉えきれていません。
ちなみにこれをPUKUBOOK SUCCULENTSでお裾分け販売していますが、その説明文では「まだはっきりと個性が見いだせません」とか「長い時間をかけて把握していくもの」と正直に書いています。
というわけで新品種を選ぶときは基本的に、まったく見たことない斑の入り方をしているとか、葉っぱのカタチが明らかに違うといったわかりやすい品種を選びがちなんですが、そういうのは数が限られるし、アエオニウムの世界を広げるにはとりあえず飛び込んでみないとわからない。
2月にお取り寄せしたのはこちらの「ダンシングビューティ A. 'WuTianji' 」です。今のところ、マルディグラやマギーとの違いがわからない……。これはもう少し特徴が掴めてからリリースしようかなと思っています。どうなることやら。
こんな感じで特徴が捉えにくいアエオニウム。ただこの短い経験からでも、どういうところを見たら良いのかわかってきたのでメモ的に書き記しておきます。
ほとんどのアエオニウムの色は品種間の違いよりも同じ品種の季節や環境による違いのほうが大きいので「この品種はこの色」ということはほぼ言えませんが、それでも「こんな色になりやすい」ということは言えそうです。いくつかの品種を同じ環境に置いたときの色の違い。ストレス環境においたときの色の変わりやすさなど。「相対的な違い」ですね。
葉っぱのカタチや拡がりかたも品種間の違いよりも同じ品種の季節や環境による違いのほうが大きいんですが、それでも色と同様に「傾向」があります。例えば新葉が出始めるときにグリーノビアのようにゴブレット型にすぼまっているもの、明鏡のように広がった葉っぱが平面に近くなるものなどは、きっとそういった原種の系統なのかなと思います。同様に、ベロアっぽいもの、葉っぱが細いものなども特徴として浮かび上がってきます。
フリルやカールが出ると特徴としてわかりやすいとは思いますが、若いうちはフリルが出ないこともあるので油断大敵です。
アエオニウムの品種解説を読んでいると、結局のところ「色」に着目しているものが多いので、その色を識別する審美眼を鍛えていく必要はありそうです……。
というわけで冬に美しいアエオニウムの1年ぶりの特集コラムとなりました。
このコラムを書いていて調べ物をしている途中で、アエオニウムの新品種についてむっちゃ詳しく書いてあるサイトを見つけたので、わかる範囲でさらに詳しく情報入れておこうと思います。日本一の、いや世界一の(笑)アエオニウム図鑑を目指していきたいですね!(って前のコラムにも書いたんですが)
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