冬に元気な多肉植物といえば? もちろん1つは12月に特集した「アエオニウム」ですが、さらに代表的な冬型多肉植物が今回取り上げる「リトープス」やその近縁種「コノフィツム」。寒さに負けず、ドバドバ与える水をぐんぐん吸ってムチプリになっていく姿がかわいくて仕方がない! そんなかわいさだけでもとにかく知っていただこうと「品種」にフォーカスして特集していきます。
リトープス特集なのでもちろん最初は「リトープスとはなにか?」から書き始めていたのですが、思い直してそれは最後に飛ばしました。まずは生態や分類なんて小難しい話は置いといて、見た目ファーストで人気種を紹介していきます。
リトープスと聞いてまず最初に思い浮かべるのが、平たくなった上面に花のような模様を描いているタイプ。代表的な品種は「福来玉」、「寿麗玉」、「巴里玉」、「菊化石」など。
その柄が細かいコたち。
リトープスは平たいコばかりではなく、トップが球面に近く、デコボコが控えめでつるんとツヤツヤ光っているコたちもいます。
窓の周りに「大柄」なドット模様。あえて特定品種でグルーピングしちゃったくらい「大津絵」の特徴はわかりやすくて個性的。李夫人は大津絵ほどではないけど、柄が大きなマルツヤタイプでカテゴリ的に大津絵に似た雰囲気です。
トップにドット柄が入るタイプ。特徴はわかりやすいのですが意外とレアで見かけません。
最後にちょっと他とは違う個性派としてホワイトマットのリトープスを紹介。そもそもリトープスは石英の石ころに擬態しようとしていて、多くの石英の石が白マットな雰囲気なので、逆にホワイトマットなリトープスだらけにならないのが不思議なのかもしれません。
別枠で紹介したい「高級種」。もちろんレアだったり育成管理が難しかったりということもありますが、その「美しさ」にも定評があることが高級たる所以です。
リトープスの特集なのでその特徴をはっきりさせるため、あえて「近い属」との違いをまとめてみます。
全体的にホワイトマットにまとめられているけど、フォルムはリトープスに似たものやコノフィツムに似ていて生態もよく似ています。明確な休眠期がないのが属としての特徴と言われています。
1属1種の個性派で、もりもりと群生株になるのがリトープスやコノフィツムとの違いと言われています(リトープスやコノフィツムも群生するけど何かが違う?)。
見た目にはぜんぜん違うけど生息域もほぼ同じで生態もよく似ているグループ。コノフィツムのほうが圧倒的に多様でコアファンも多い印象。
血迷ったか?!と思われるくらいリトープスに似ていないし血縁も全く異なるグループですが、多くのチレコドンはリトープスと同じ環境に生きています。上に掲載した写真でもツーショットになっていますよね。なので「寄植え」するのに相性が良いんです。他にも一部のユーフォルビアやクラッスラさんたちが同郷です。
リトープス特集ですが「リトープスとは?」をあえて最後に。
リトープスはアフリカ大陸の南西部、南アフリカの西側からナビミアにかけて広く分布しています。もちろんそれぞれのエリアによって気候に違いはあるけど、基本的には、夏は暑く数ヶ月の間ほとんど雨が降らず、冬は比較的寒さは穏やかで秋の初めから少ないながらも雨が降るといった感じ。多肉植物の季節タイプでは冬型と考えられています。
データがなかったので都市部のケープタウンの気候がこちら。南半球なので夏と冬が東京とは逆ですが、降水量は逆転していないので「冬に雨が多い」ことがわかります。このグラフだと「雨は東京の半分くらい?意外と多いんだな」と思っちゃいがちですがそれは沿岸部のケープタウンの話で、内陸の多肉植物の楽園ではほとんど雨が降りません。
#ケープタウンからクナースフラクテまでは東京大阪間くらい距離があるので「内陸」と言ってもめっちゃ内陸なのはご想像いただけますでしょうか。
そのリトープスの代表的なふるさとであるクナースフラクテ地域の様子がこちら。玉のような白く透明感のある石(石英)がコロコロ転がっていて、隙間を同じ石英質の赤い砂が埋めた乾いた大地。そこにまるで石英の石のようにコロコロと植わっているのがリトープスです。
リトープスはこのように、岩砂漠に転がる石ころに擬態しようとしているため、大地の色が変わるとリトープスの色も変わります。これがリトープスがいろんな色や模様のバリエーションが生まれてきた理由の1つ。
リトープスのこの種はこんな特徴があって……という説明を受けたとき(そしてそれを書いている自分も)注意しなければいけないのは、模様は結構個体差が激しいということです。もちろん同じ株を株分けしたものはさほど違いはありませんが「実生」にはバラツキがあります。そして多くのリトープスが「実生」です。けど逆にカラーの個体差はさほどでもなく、基本的に実生であっても同じ品種は似たような色をしています。
これはリトープスの生態を思うと想像できるのですが、大事なのは周りの土壌の色に溶け込む「カモフラージュ」なので、色は生存する上で重要なんでしょうね。逆に模様は多少ばらつきがあったほうがカモフラージュ効果が高いのかもしれません。
というわけで、このPUKUBOOKでもリトープスの解説に模様の話は出てきますが、個体差が激しいからそんな特徴のない個体もあるかもしれないと思って読んでください。
いつもお世話になっている「山城愛仙園」さんのご協力で、この1月にリトープスの品種写真をどどんとたくさん追加することができ、なので今回のリトープス特集は品種紹介を中心にやらせていただきました。ありがとうございます!
というわけでリトープスについては語りたいないことがまだまだあります。育て方や生態はもちろん、コールナンバーやハイブリッドの世界、はたまたコノフィツムとの絡みとか……。
そんなことを「リトープス特集 第2段」以降で取り上げたいと思います。
.