猛烈な暑さが続いています。多くの多肉植物にとっても対策ゼロでは即日で星になる地獄でしかない暑さではありますが、逆にまったく対策ゼロで炎天下にさらしていても顔色ひとつ変えない無敵の多肉植物がいます。それが今回紹介する「カランコエ」。まさに他にライバルがいない独壇場の今、満を持しての登場です。
一般的に「カランコエ」というと花屋さんで見かける、葉っぱがディープグリーンで肉厚な小さな花を無数に咲かせるカラバリ豊かなコたちのことを指しますが、これは ベニベンケイ K. blossfeldiana の改良品種のこと。カランコエは、その種も合わせて125種程度の種を有す属(グループ)を指します。広くはインドや中国(昔は日本の沖縄)にも分布していますが、そのホームグラウンドは南アフリカの多肉植物アイランド、マダガスカルです。
月兎耳のワイルドな姿は こちらのページ の中程でご覧いただけます。
カランコエは1763年にフランスの博物学者ミシェルアダンソンによって命名されました。参照したのはさらに100年ほど先輩のフィリピンで研究した植物学者ゲオルグヨーゼフカメルの論文で、中国でリュウキュウベンケイのことを「伽藍菜」と呼んでいた(広東語で「カーランチョイ」っぽく読む)ことに由来するというのが通説。NHK趣味の園芸には「古代インドの言語での 赤サビ(kalanka-)と照り(chaya)に由来する」という説も取り上げられています。
先述の通り、多肉植物界では最強の暑さ耐性を誇ります。我が家ではわりと雑に直射日光のあたる雨ざらしのところに置きっぱなしですが、ジュレたり傷んだり縮んだりした株をいまだに見たことがありません。
その繁殖力の異常さも特筆すべき点。もちろん子宝草のように「葉っぱから子株を量産する」というルール違反スレスレの離れ業も目を引きますが、例えば月兎耳などは、ちぎれた葉っぱの先っぽから新芽を出すという隠し技を繰り出すことがあります。葉挿しで気軽に増やせるエケベリアであっても葉っぱの根本からしか芽を出しません。この「全身IPS細胞」みたいな繁殖力のカタマリはカランコエならではですね。
カランコエの花は基本的に花びら4枚で、上向きに星のように咲くタイプと、下向きにティンカーベルのように咲くタイプがあります。色は赤系。品種改良が進んでいるベニベンケイだけは、八重咲きや、いろんなカラーバリエーションがあります。
カランコエはもともとBryophyllum属とKitchingia属という別の属だったものを吸収合併した経緯があります。Bryophyllum属はコダカラベンケイのように葉っぱの先に子株を作って無限増殖するコたち。Kitchingia属は完全にカランコエに吸収されていて死語と化している感はありますが、ユニフローラのように匍匐しながら下向きに丸い花を咲かせるタイプのことを指すようです。
カランコエと勢力を二分するモケモケを有するコチレドン。
そのコチレドンととても近いグループ。
チレコドン、アドロミスクスは、カランコエやコチレドンと同じ「カランコエ亜科」といって分類学的にも事実上もとても近い仲間なのですが、見た目があまりに違うのであえて違いを説明する必要も無いような。
ジュレたり干からびたり……なにかとへこたれることの多い夏ですが、そんなめげそうな心を、いつも元気なカランコエが癒やしてくれるはず。一家に一本お気に入りのカランコエを。ただ、元気良すぎてむちゃくちゃ大きくなって増えたりするのでそこは要注意で。