アロエといえば、ヨーグルト? 美容液? あれって多肉植物だったんですか? そんな声をよく聞きますが、それはアロエワールドのほんの一端。今回はそんな、近年のアガベ人気とともに「イカツかっこいい植物」として人気爆発の気配を見せているアロエをピックアップしてみます!
今ではちょっと考えられないかもしれませんが、僕が子供の頃に火傷を負ったりすると傷口に切り開いたアロエを貼ったりしました。アロエは「医者いらず」という異名を持つように太古の昔から傷薬や胃腸薬として重宝されていて、80年代に「一家に一本キダチアロエ」ブームが到来。今でも多くの玄関先に置かれているのはその名残り。90年代にはナタデココの後釜を狙ったアロエ入りヨーグルトが発売されて大ヒット&ロングセラー。そんな美と健康なイメージが先行するアロエなので、そもそもアロエが多肉植物だと認識していない人も多くいるくらい。ていうか、ヨーグルトに入っているアロエは「果物」だと思っている友人もいました(葉っぱですよー)
アロエは、主に南アフリカから、広くはアラビア半島に分布するキジカクシ科※の多年生植物。以前はユリ科とされていたようにユリにもよく似たグループです(猫飼いさんは猫が齧らないように注意してください)。肉厚の葉っぱをロゼット状に広げながらほぼ毎年花を咲かせるところは共通ですが、サイズは手のひらサイズの小型種から最大20mの巨木になる大型種まで、生息域も太陽がガンガン当たるカラカラの砂漠から夏でも涼しい高原まで広く、多様な種が存在します。
園芸ジャンル的にも生物学的な分類的にも、近年人気のアガベに近い種で、アメリカ大陸にお住まいなのがアガベ、アフリカとアジアがアロエと住み分けられている感じです。
※文献によってはススキノキ科とされています。
植物の名前はラテン語から来ていますが、アロエってどういう意味?と思ってラテン語の辞書をめくるとなんと「アロエ/植物の名前」と載っています。アフリカからアラビアに分布しているアロエは、ラテン語が現役だった頃からラテン語圏の人類とお付き合いがあったということ。その「アロエ」の由来は、アラビア語で「苦味/苦い汁」といった意味のある alloeh (ロエ)から来ているという説が有力。その音から中国では「蘆薈」と書き、日本には「ロカイ」と伝わってきているため、今もアロエの中に「ロカイ」という名前が残っています(アロエベラの和名を「真ロカイ」と言ったり)。
ちなみに英語では Aloe と書いて「アロー」と読みます。
古くから薬草的なお付き合いをしてきたイメージもあって、化粧品やサプリメントにも用いられて様々な効果がうたわれていますが、本当のところはどうなのか?を知りたい場合は厚生労働省がまとめてくれている情報が最も信頼できて読みやすいソースかと思います。ざっくり要約すると、
- ニキビに効果あり
- 火傷の回復が早まる/痛みを軽減する
- ヘルペスなどの皮膚病に効くかもしれない
- 潰瘍性大腸炎に効くかもしれない
- 妊娠中や授乳中は控えたほうが良いかもしれない
つまり、皮膚薬として軟膏的な使い方にはそこそこの効果があるけど、飲み薬やサプリメントとしては微妙といった感じです。
アロエといえば常緑多年草だし暑くても寒くてもいつみても明るいグリーン……というのは、普及率の高いキダチアロエや不夜城の話。アロエの中には赤やオレンジや黒といった多彩なカラバリの品種が多くあるし、寒い時期にガッツリ紅葉してお色直しするコもいます。探せば出会えるディープワールド。それは他の多肉たちと変わりません。
花がほぼ咲かないアロエと違って、アロエはほぼ毎年花を咲かせてくれるし、その期間が結構長いのが特徴です。秋から冬の寒い時期に作品種もあって、寂しい季節に彩りを添えてくれます。
一部の生長の遅いレア種を除いて、むちゃくちゃよく増えます。気づいたら大群生ができていたなんてことも。茎の根元からポコポコと群生するタイプ、根っこ(地下茎)を伸ばしたその先にぽつんと子株が出てくるタイプがあります。
日本中に普及しているキダチアロエを見ていただければわかると思いますが、ほとんどのアロエが軒先に鉢植えにされたまま、何年も放置されているのに、元気にもりもり成長を続けています。我が家でも、絶対に雨が入らない軒先や、逆に雨と直射日光のよく当たるテラスなどに放置し続けているのに、枯れたことが1回もありません。無敵すぎる。
中には、寒さに弱いケリーグリフィン系や、暑さに弱いラエータやポリフィラといった注意すべきコもいますが、アロエの多くは放置でオッケーな丈夫なコがばかり。初心者の方にも安心しておすすめできます。
アロエに近い属や似た種をならべて、逆にアロエの特徴を明らかにしようという恒例のコーナー。
互生で短くゴツゴツした葉っぱの「臥牛」を見てるとぜんぜん違う雰囲気だけど、血縁的にはかなり近いグループ。実際にアロエとガステリアの属間交配種「ガステラロエ」も作られていて、ツヤツヤの魅力的なロゼットを広げる新種が誕生しています。花が下向き提灯のような独特の形をしているのがアロエとの大きな違いです。
アロエの中で互生の葉っぱを薄く大きく広げながら木立状になる通称「ファンアロエ」が独立宣言したグループで、その分類の新しさと数の少なさ(現在2種)から認知もイマイチなので、アロエとして流通していることが多いコです。
園芸的にも血縁的にも近いグループで、アフリカ大陸のアロエに対して、アメリカ大陸で進化したのがアガベといった感じ。そもそもアメリカ大陸に渡った西洋人が最初アガベを「アメリカアロエ」と名付けました。
ビジュアル的にあまり似ていないのアロエと比較されることがありませんが、毎年花を咲かせるところなど、生態的にはアガベよりはアロエに似ているのではないかと思います。
園芸ジャンル的には離れるけど、実はアロエに最も近いのがハオルチア。同じアフリカ大陸南部にお住まいで、共通祖先も近いと思われます。「ハオルチアによく似たアロエ」というコもいます。より小さく、草葉の陰に隠れて暑さと感想を凌ぐ作戦に出たのがハオルチア。基本的には生存戦略が違うので同じ鉢に植えて育つわけではありません。
姿形はまったく違うけど、生息域が近いので相性がいいのがユーフォルビア。もちろん一言でユーフォルビアといってもアロエよりも多様性豊かなので一概に一緒とは言えませんが、アロエと一緒にドライガーデンを演出しようと思ったら、かならず相性のいいコが見つかります。
おしゃれな部屋のインテリアプランツとして個性を発揮してくれそうな「ツリーアロエ」。もちろんアロエは日当たりの良いところを好むので、室内に置くときは一番陽の当たる明るいところを選んであげてください。
アロエのハイブリッドと言うと必ず出会うのが、巨匠ケリーグリフィンさんの名前。ドランブラック A. 'Doran Black' に由来する破線柄のデコボコのあるカラフルなアロエが多い印象です。
アガベに注目が集まる昨今、アロエにも同様に熱い視線が注がれています。むしろそれがアロエだと深く認識されないまま広がっている感もありますが(それはそれで全然オッケーなんですが)あえて「アロエってすごいんだぞ!」「ヨーグルトじゃないんだぞ!」と強く主張しておきたいお年頃でございます。
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