ずんぐりむっくりのフォルムに小さなトゲ。「それほんとに強いと思ってる?」なんて思わずツンツンしたくなっちゃういじらしさとかわいらしさで人気急上昇中のコーデックス「パキポディウム」。今はホームセンターでも見かけるようになって一家に一本の定番植物になりそうなコイツラをあらためて紹介させていただきます。
およそ「木」とは思えないメタボなフォルムから、にょきにょき伸ばすパイプのような枝。その先に鮮やかなグリーンの葉っぱをビシッと生やす、そのコントラストがかわいらしく人気のグリーンが「パキポディウム」。
そのほとんどがアフリカ南西部に浮かぶ島国「マダガスカル」の固有種(一部が南アフリカにも分布)で、少し前まではとても珍しく貴重な植物でしたが、昨今のパキポ人気と 実生が比較的カンタンなこともありって流通量が増え、園芸店やホームセンターで手に入りやすい価格で見かけるようになってきました。
この記事で育て方は省略しますが1つだけ注意を。パキポディウムのグループ「キョウチクトウ科」の植物は、樹液に強い毒性があります。パキポディウムも同様に毒性があるという報告があって注意喚起しているところもあるので、剪定や接ぎ木をするときや、子供やペットが誤食しないように注意してください。ただパキポディウムの育て方を調べていてもあまり書かれていないし、実際に被害を被ったことはないので言うほど強い毒ではないのかもしれませんが、注意するに越したことはなさそうです。
そんなパキポディウムたちですが、ひとことで「パキポディウム」といっても多種多様な品種があり、お目当てのフォルムに育つのか?は事前にチェックしておいたほうが良さそうです。ここではそれぞれの「違い」に着目して、代表的な品種紹介をしていきます。
パキポディウムといえばずんぐりボディに細パイプでしょ?とイメージしますが、意外とそんなフォルムをしたパキポディウムは少なくて、そのほとんどがこの「グラキリス」です。品種なんてそんなに覚えられない!というかたも、とりあえずこの「グラキリス」という名前だけは覚えて帰ってください!
グラキリスよりは幹が細く引き締まっていて枝も太くて筋骨隆々。最近よく見かけるパキポディウムで「グラキリス」以外の品種はだいたいこんなマッチョなフォルムをしています。ロスラーツムの基本種「ロスラーツム」はボトルツリーと言われているように、ワインボトルのようなフォルムが特徴です。
パキポディウムの花はほとんどが黄色で一部に白い花が咲くものもありますが、赤い花が咲くレア種がこの2種です。バロニーはシュッと高く伸ばす枝、力強い太いツメと先の尖った葉っぱ、ウィンゾリーはバロニーの変種で背が低く葉先が丸いのが特徴。どちらも絶滅危惧種で流通量も控えめです。タネの流通もあって実生株が出始めているので気長に待ちましょう。
極太の枝を真横に少しだけ伸ばすので遠目には根塊だけに見えるユニークなパキポディウムがこのブレビカウレ。もはや「葉っぱが生える岩」。日本の高温多湿に弱く根っこが痛みやすいので接ぎ木されている株もよく見かけます。
他のパキポディウムとちょっとシルエットの違う、まるまるとしたコーデックスと細い枝のコントラストが強いタイプ。実は生態も異なっていて、太っているのは幹ではなく根っこ。現地ではこのコーデックスは地面に埋まっていて細い枝だけ地表に出ています。ディオスコレアやアデニアなんかに近い生態ということですね。
最近のパキポディウムブームの前、つまり植物園に昔から展示されているようなパキポディウムたちは、もっとずっと細身で背が高い、トゲに覆われた高木といった印象のものが主流でした(だから人気でなかったんだよ!というツッコミはご法度)。ナマクアナムは南アフリカに住むパキポディウムで、くりくりとカールしたブルーグレイの葉っぱが一番のチャームポイント。幹はびっしり棘に覆われて、ほとんど枝を伸ばさず一本立ちになるので、遠目に見ると柱サボテンそっくりです。ラメリーやゲアイーはのっぽの一本立ちでヤシの木にそっくり。「マダガスカルパームツリー」とも呼ばれています。
最後にちょっと耳の痛い話を。パキポディウムのふるさとのマダガスカルは、バオバブやワオキツネザルといった固有種が多くて自然豊かな島というイメージがありますが、WWFの2021年1月のレポート「森林破壊の最前線」で24のエリアの1つとされるほど森林破壊が深刻です。
もちろんレポートにもあるようにその主な原因は焼畑農業、薪炭(生活燃料)、森林火災、畜産、林業で、多肉植物それ自体が全体に与えているインパクトは極僅かなんだと思います(「Bplants 夏型」などマダガスカル事情を解説した記事はありますが多肉事情はふんわりしているんですよね……)。
この問題に対して我々に何ができるのか!?なんて大きなことを言うつもりはありません。ただ、多肉植物を好きで管理している身としては、そうした彼らのふるさとの事情についても意識しておきたいところです。いずれ深堀りしたいなぁとは思います。
国内実生栽培が進み、ホームセンターでも見かけるようになってきた「パキポディウム」たち。でもひとことで「パキポ」といってもいろんなコがいるんだよ!と品種識別をメインに集中特集してみました。観葉植物ではないので日当たりの良い環境はマストではありますが、決して育て方も難しいコではありませんし、万一ダメでもぜひリトライを。安価で手に入りやすい小さいこから気軽に手にとってそのかわいらしさを愛でていただければと思います。
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