光を受けてキラキラと輝く、水晶やガラス細工のようなキレイ可愛さで人気の多肉植物。それが「ハオルチア」。
過去に「1株100万円」なんてニュースで賑わうこともありましたが(今はその手の話題はコーデックス類かな)、ホームセンターや100円ショップで手頃に手に入るコたちもバリエーションが増えて、手軽に楽しむ多肉植物としての地位を確立した感があります。今日はそのハオルチアの種類や育て方のポイントを、これからはじめる人向けにまとめてみます。
ちなみに「ハオルチアというと『軟葉系』と『硬葉系』があってね」というのは定番の解説ではありますが、ここでは主に「軟葉系」を取り上げます。特に断りがなければ「軟葉系」のことだと思ってください。
アロエのようなゼリー状の葉っぱをロゼット状に広げる多肉植物で、多くの種で、葉っぱの一部が「窓」のように開いていて透明の中身が見えているのが最大の特徴。そこから光を取り込んで、キラキラと輝いて見える、植物とは思えない植物。生きた宝石。それがハオルチア。
ほとんどが南アフリカ(一部ナミビア)の草原や岩場にお住まいで、カラダの半分以上を地面に埋め、草陰や岩陰に隠れながら生きているので、他の多肉植物よりも光の少ない環境で管理できるのもポイントです(ただほとんどの種は室内には適しません。あくまでインテリアプランツじゃなくて外で管理するのが基本。詳しくは後述)。
なんといってもキラキラの窓。特にオブツーサやレース系といわれているコたちで顕著です。窓の大きなオブツーサやレース系はそのまま光の少ない環境に強く、室内でも管理できるのも魅力の1つです。
ほとんどのハオルチアは紅葉せず1年を通じて同じカラーリングですが、そのカラーリングを追求したのが斑入りの世界。中には何十万円もするような高級種もありますが、ホームセンターでも手に入る手頃な斑入り種もあります。ハオルチアの斑入り種は個体差の激しいものが多いのもコレクション欲を煽る一因になっているようです。
ハオルチアはよく増えます。もともと1つのロゼットが小さい、ということは、ある程度生長すると子株を吹いて群生します。逆に長いことほったらかしにすると、かわいかったオブツーサもまるでモンスターのようなゴテゴテ山盛りになってしまうので(笑)ときどきバラして植え替えてあげる必要があります。他にも葉挿し、根ざし、実生など、いろんな方法で増やすことができます。
いわゆる「ハオルチアには軟葉系と硬葉系とあってね」と説明されるときの「硬葉系」。正確には葉っぱよりも花芽に特徴があって、一見「軟葉系」に見えるものも含まれます。ただこの属名はあまり認知されておらず「ハオルチオプシス」の名前で販売されているものを見たことがありません(市場ではまとめて「ハオルチア」で通っています)。
「いわゆる硬葉系」の分派。ハオルチオプシスと同様に新しい分類です。どちらかというと大きくなるものが属している感じ。市場ではほぼハオルチアとイコールです。
こちらも「いわゆる硬葉系」。花芽の違いで分類されているようですが素人目にはハオルチオプシスとの違いはわかりません。ハオルチオプシスよりはちゃんと名前が認知されていますが、ハオルチアの名前で流通していることもあります。
パッと見ではぜんぜん違うグループに見えますが、血縁的にはとても近いグループ。共通の祖先が、草陰に適応してハオルチアに、広い原野に適応してアロエになった、といった感じです。千代田錦のように目立たないながら窓のある種もあるし、白い花を咲かせる「アルビフローラ」を見ていると花がハオルチアによく似ていて、やっぱり同じグループなんだなと思わされます。
逆に、違うグループだけど環境が同じなので似た感じになったといえば、フェネストラリア属。透明のボディに半透明の窓がそっくりです。こちらはいわゆる「メセン」の仲間。ハオルチアと同じように、南アフリカの草原や岩場の隙間で生活しています。他にもリトープスやコノフィツムなども似た環境で生きている仲間たちです。
ハオルチアの育て方のポイントを乱暴にざっくり一言でまとめると「焦げるギリギリまで天日干し。腐るギリギリまで水浸し」です(二言になっちゃった)。
もう一度現地の写真を貼っておきます。「地面に埋まって、草陰に隠れている」とは言いますが、結構直射日光が当たっていることに気づきます。 ハオルチアは比較的耐陰性がありますが、それは他の多肉植物と比べてのことで、室内で育てる観葉植物=インテリアプランツではありません。インテリアプランツは鬱蒼としたジャングルの樹の下など、本当に直射日光が一切当たらない環境に適応していてハオルチアの故郷とは日照レベルが違います。
逆に、日照が強すぎるとどうなるかというと、この通り、さすがに焦げます。ただこれ、むちゃくちゃ暑かった2021年の真夏の炎天下にずっと置いていたものです。エケベリアだったら1日で星になるような過酷な環境。そんなところでも死なないのがハオルチアの真のチカラ。
焦げた葉っぱは元に戻りませんが、もう少し手前の段階で、ハオルチアは身を守るために赤茶けた色に変色します。この変色は気づきが早ければもとに戻ります。なのでハオルチアの日照量の目安は「変色する手前」といったところ。
タイプによって必要な日照量も変わってきて、大雑把に分けるとこんなところです。
- オブツーサ、レース系 ... レース越しの光やLEDがあれば室内でもOK
- レツーサ系 ... 室内は厳しい せめて屋外の明るい日陰
- 玉扇、万象、硬葉系 ... 日向~半日陰
ハオルチアのふるさとの南アフリカは降水量の少ないエリアですが湿度が高いようです。寒い冬に雨が降り、暑い夏は湿度のベールで乾燥を防いでいるような気候。なのでこの「多湿」がキーポイントで、プリプリのみずみずしい姿をキープするには湿度を高めに保ってあげる必要があります。
といっても加湿器をガンガン炊きましょうということではなく(そもそも「外で育てましょう」って言いましたし)、我が家ではかなり頻繁に水やりをしています。下手すると数日おき。その目安は「腐るギリギリ」まで。ちゃんと風通しさえ良くしておけば、真夏の炎天下でも腐らず耐えてくれる実力の持ち主です。もちろんそこまで極端な方法はおすすめしませんが、できるだけ風通しを良くしてできるだけ頻繁に水やりするのが、きれいに育てるポイントです。
サランラップをかぶせると良いよ、という方もいらっしゃいます。その場合はくれぐれも、風通しにご注意ください。
ハオルチアはもちろん多肉植物の例にもれず乾燥に強いです。水をぜんぜんやらなくてもかなり長期間生きていられます。ただ、赤茶けてカリッカリになってしまいます。
ただこのカリカリの枯れ果てたような姿こそ、ハオルチアのチカラの証なのかもしれません。この状態になるとカンカンの日差しの中でも、あるいは1年くらい水を上げなくても生き続け、春や秋に水やりを再開するとぷっくり健康的な姿に戻ってくれます。
もし夏の間に水やり加減がわからず腐らせてしまうかも……と不安になる場合は、6月の梅雨の終わりから9月の下旬頃まで一切水やりをせず、風通しがよく、ちょっとだけ日がさす半日陰でしっかりと休眠させてあげてください。
ハオルチアと言えばオブツーサ。ビー玉を寄せ集めたような、先が丸い透明葉っぱの集合体。初見で、これが植物であることを信じられない人もいらっしゃいます。ただ植物学上はっきりと「これがオブツーサだ」と分類されているわけではなく、もともといくつかのタイプ違いがあってさらに品種改良もあっていろんなタイプが流通しています。ハオルシア協会の林先生は、ラテン語名を使うのも良くないと、まとめて「オブト系」としています。
ホームセンターでも見かける、1株300~700円くらいの普及種たち。以前は高級と言われていたコも、生産者さんたちの繁殖の努力によって普及価格帯になり、お手頃価格でもいろんな品種を楽しめるようになりました。
三角の窓を広げるのがレツーサ系。多くのハイブリッドが流通していて美しさを競っています。ここではよく名前を聞く原種をピックアップ。
扇状になる玉扇と太くて丸い万象。完全に独自のジャンルを築いています。
日本ではどちらかというとマイナーな「硬葉系」。日本ハオルシア協会の林雅彦氏監修のバイブル「多肉植物ハオルシア」でも全60ページのカタログのうち4ページしか扱いがないし、園芸的にもなんとなく別ジャンルにされている雰囲気です。ただ海外では、ハオルチアと言えば「硬葉系」。中国でもハオルチア属のことを「十二巻属」と言います。別ジャンルでもいいじゃない。そんな硬派系の代表種です。
すみっコぐらしの原作者でイラストレーターのよこみぞゆりさんが熱狂的な多肉植物ラバーで、恐竜化されたオブツーサがむちゃくちゃかわいいのです。増やし方のイラストもわかりやすくて、もうこれでいいじゃん感。全力でフォローします!
多肉植物、いろんな増え方があって楽しいpic.twitter.com/x8FrFiO3xN
— よこみぞゆり January 31, 2021
冒頭にも書きましたが「1株100万円!」とニュースを賑わしていたのはさすがに過去のことになったかなと感じます。悪くいうと「価格暴落だ」とか「ブームが去った」ということですが、どちらかというと過熱気味だったのがちょっと落ち着いて来たのかなと思います。以前は手に入れにくかったハイブリッドがお手頃価格で手に入るようになってきたので、これからが楽しみどきですよ!と全力でお伝えしたいです。これからもよろしくおねがいします!
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